うすたvs冨樫
うすたは息を飲んでいた。
光が飛んでいくのを見つけ、ここに駆けつけたのが10分前。
キッチンの設備があるこの部屋には5人の漫画家が、転がっていた。
他の者の気配がないか気をくばりながら、うすたはベランダに出て、下をのぞき込んだ・・・違う、澤井ではない。
武井だとわかった。これで6人が打ちきられ、残りは8人になった。多くとも、だ。
澤井はまだ生きているのだろうか?
いや生きているだろう。うすたの勘が告げていた。
きっと辿り着けるだろう。それもまた確信に近かった。
行かなければならない・・・ここを早く出よう。
長い廊下の奥・・・玄関口に誰かが立っていた。
うすたは目を見開くより早くキッチンに飛び込んだ。同時にうすたのすぐ後ろの床に着弾した。
後ろ手にドアをしめ、部屋を見回す。窓は打ち付けられ、ベランダは飛び降りるには高すぎる。逃げ場はない。
だが”襲撃者”にも余裕はないはずだ。早くケリをつけなければ、駆けつけてきた別の誰かに背後から襲われかねないのだから・・・
その通りだった。ドアが弾け飛び、冨樫が姿を現した。
部屋の中に入るなり、冨樫は銃口となった指先を死角となったドア脇に向けた。念弾が壁と床に穴を穿ったが・・・そこには誰もいなかった。
いや、そこには・・・
「忍法!みがわりの術だ!」
キン消しが落ちていた。機を逃さずうすたは放課後キャンパスを繰り出した。冨樫が見せた一瞬の隙にワキ毛は処理してあった。
無表情の冨樫の目が一瞬大きく開かれた。
「サ☆スーン☆クオリティーッ!!! 」
一瞬の間をおいて冨樫の体が壁に叩きつけられる。手応えはあった。
勝ったのだ・・・・あの冨樫義博に。
あるいは藤崎竜よりも、そして尾田栄一郎よりもおそらくは高い人気を誇り、
聞きかじる限りでは、いくら原稿を落しても打ちきられない、と言われたあの冨樫に・・・
「勝った・・・『WJキャラでバトロワってどーよ?』スレ、終りょ・・」
途端、うすたの右脇腹に激しい痛みが起きた。うすたははうっ、と息を吐き・・・そして目を剥いた。冨樫の念弾が脇腹を抉っていた。
「ひ、卑怯だぞコンチクショー!」
まずい・・・これはとても。うすたの股間から無数の蝶が飛びだし、冨樫の視界を遮った。
うすたは背後から聞ける銃声を無視して灯台から飛び出した。白い砂浜に血の跡を残し、うすたは藪に消えた。
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