尾田の焦燥






「尾田先生――顔が青いですよ。大丈夫ですか?」
岸本が訊いたが、尾田は答えられなかった。体を戦慄が走り抜け、すぐに震えに変わった。
「どうしたんですか?」
岸本が尾田の背に手を置いて、訊いた。
尾田は歯を鳴らしながら答えた。「怖い」
尾田は、首を左にねじ曲げ、岸本の顔を見た。岸本が心配そうに尾田を見つめ返した。
「怖いんだ。めちゃくちゃに怖い。俺、人を殺してしまった」
漫画でもやったことないのに。



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