最強刑事コンビ誕生!
「蒸着!!」
その掛け声が響くと共に、一条寺烈の身体は銀色の戦士へと姿を変える。
それは、マクーを始めとする宇宙犯罪組織と戦った、宇宙刑事の勇姿。
「……ふぅ」
問題なく、蒸着は行われた。見た所、スーツに異常は見受けられない。
ただ、レーザーブレードだけが紛失していた。
「武器は奪われているんだったな」
ここでギャバンが気付いたことは、一つ。
「蒸着システムは生きている、ってことだな……」
――宇宙刑事ギャバンのコンバットスーツ蒸着タイムは、僅か0.05秒に過ぎない。
ではその蒸着プロセスをもう一度見てみよう。
「蒸着!!」
『了解。コンバットスーツ、転送シマス』
超次元高速機ドルギランのコンピューターを介して、コンバットスーツが粒子化し、烈の身体に照射される。
照射されたスーツは再構成され、烈の身体に装着される――
そう。
コンバットスーツの蒸着は、ドルギランのコンピュータを通じて行われる。
ドルギランなくして、蒸着することはありえないのである。
「つまり、この空間のどっかに……ドルギランもあるってわけだ」
ギャバンは確信する。
コンバットスーツからドルギランへのコンタクトは、現状では出来ない。
何らかの方法でジャミングされているのか。
「さて、と……そうとなれば」
蒸着を解除し、再び人間の姿に戻る烈。
他にも、主催者にどんな細工がスーツに施されているかわかったもんじゃない。
殺し合いに乗るつもりもないし、あまり無闇に変身するのは控えるつもりだった。
「ドルギランを探すか!」
ドルギラン、そしてそれに搭載された数々の超兵器があれば、この空間からの脱出も可能だ。
もちろん、こんな手の込んだ真似をする主催連中のことだ。
すぐに接触できるような場所にドルギランを置いておくとも思えない。
あるとすれば、普通にしていればまず辿り着けない、こことは別の空間……
(……どうしたもんかな。次元の壁を裂くことのできるような奴がいればいいんだが……
さすがにそんな奴いないだろうなぁ)
などと考えながら、烈は支給されたザックを取り出し、中を確認した……
フーマとの激しい戦いも終わり……
フーマにより被害を受けた各惑星の混乱を終息させるべく、ギャバンはドルギランで宇宙を駆け回っていた。
彼がこのゲームに召喚されたのはそんな時である。
突然、ドルギランのセンサーが異常を感知したかと思うと、異空間に巻き込まれ……
ギャバンはドルギランごと、その世界から消失した。
さらにその後襲った衝撃でギャバンはドルギランから放り出され……
あのゲームの説明が行われた場所に辿り着いた、というわけである。
「くそっ……」
あの時の苦い光景が思い出される。
赤い戦士の頭がはじけ飛ぶ瞬間。
支給された名簿の中の赤座伴番……おそらく爆破された青年の名前が、早速赤く×印を付けられていた。
今さら言っても仕方がないが、もし、自分があの時真っ先に飛び出していれば?
多分、そうしたところで何もできず、殺されたのは自分になるだけだっただろう。
烈の首にも、忌まわしき首輪が装着されているのだから。
だがそうだとわかっていても、無念さと己の無力さを痛感する。
そんな想いを胸に、烈は主催者打倒を心に誓った。
「まずは仲間を探さないとな……!」
名簿の中の、伊賀電の名に目が行く。
宇宙刑事シャリバン……
自分の部下にして後任で地球の守りにつき、今はイガ星配属となっている、若さに燃える宇宙刑事。
ただの上司・部下の関係ではない。互いにその実力を認め合う絆を持つ。
その息のあった連携でマドーを打ち倒したのは、彼にとってはちょうど一年前のことだろうか……
相棒としても最高の素質を持つ。彼と合流できれば心強い。
だがそれとは別に、名簿の中にはハンターキラーの名があった。
銀河連邦警察を裏切りその魂をマクーに売り渡した、元宇宙刑事。
どういう経緯か暗黒銀河を彷徨い、連邦警察が助け出した時には既に虫の息……その後、すぐに息を引き取った。
死んだはずのあの男が、何故ここに?
まさか、このゲームにはレイダーのような死霊界の手もかかっているのでは……?
嫌な予感が走った。だが、それを今考えても仕方がない。一応、ハンターキラーについては警戒する。
名簿を読み終え、ザックの中をさらに漁る。地図や食料などの他に、何か変なものが出てきた。
「……何だこりゃ?ブーメランか何かか?」
烈の支給品。それは、M78星雲の戦士・ウルトラセブンの持つ宇宙ブーメラン……
アイスラッガー。
……なんでこれがここにあるのかはわからない。
このゲームに参加しているウルトラセブン本人の反応が気になる。
頭のアイスラッガーがなくなっていることに気付いたら、慌てふためくことだろう。
……
まあ、それはまた別の話。
「使いこなせば強力な武器になりそうだな……ま、人に使うつもりもないけどね」
烈にとってはその程度の認識。このアイスラッガーが何で持ち主がどうだとか、烈にはわかる由もない。
支給品はこれだけのようだった。
「よし……ここにいつまでもいても仕方ない。行くとするか!」
行動方針は決まっている。このふざけたゲームを潰す。そしてあの主催者どものもとに辿り着いて、倒す。
だが、今の自分はあまりに無力だ。一人ではやることも限られている。
まずはシャリバンを探す。そして、信頼できる仲間を見つける。
脱出法も模索しなければ。その一環として、ドルギランの捜索。シャリバンが来ているなら、グランドバースもある可能性が高い。
いや、それより先に首輪をどうにかすべきか。これがある限り迂闊な行動は取れない。主催者を出し抜くことも難しい。
いずれにせよ、やることは山積みだ。
「それじゃ、まずはどこに向かうか―――――――!!」
地図を広げようとした矢先、不意に気配を感じた。
すぐさま近くの木の陰に身を隠す。
(参加者か……ゲームに乗ってなきゃいいんだけどな)
気配の主の姿が見える。
長身の男……そして、犬の顔をしていた。
(あれは……どっかの宇宙人か?)
普通の人間なら人外の存在に慌てる所だろうが、宇宙を駆け回る宇宙刑事には犬型宇宙人の存在など不自然でもなんでもない。
だが……
(あいつ……確か、あの時……)
赤座伴番が殺された時、バンと……彼の名を叫んでいた人物の一人が、この男だった。
あの殺された男の知り合いなのか。だとしたら……
烈がそうこう考えているうちに、男の足が止まった。そして……
「そこにいるのはわかっている。隠れていないで出て来い!」
(あちゃ、気付かれてたか。かなりの手練れらしいな……)
他に人の気配のないことを確認すると、烈は男の前に姿を現した。
(この動き……訓練されたものだ。それを考慮してもこの男……只者ではないな)
烈の軽快な動きに感嘆と警戒をしつつ、男は名乗った。
「心配するな。俺はスペシャルポリス……SPD地球署署長ドギー・クルーガーだ」
「スペシャルポリス?聞いたことがないな……警察なのか?」
「ああ……刑事だ。このゲームに乗るつもりはない」
「……俺は一条寺烈。銀河連邦警察の宇宙刑事、ギャバンだ」
「ん?お前もデカ……同業者か?」
多少の話の食い違いに違和感を覚えながらも、二人は互いに敵意がないことを確認した。
簡単に自己紹介をした後、二人はゲームを潰す目的は同じであるとわかり、手を組むこととなった。
そして、まず今後の行動指針について話し合う。
「じゃ、この礼紋茉莉花と白鳥スワンって人が仲間なんだな」
「ああ、スワンは科学者だ。首輪解析の知識もある、頼れるパートナー……
そして、礼紋茉莉花……ジャスミンは、俺の優秀な部下だ。……そして、バンもな」
ドギーの表情に、哀しい影が落ちる。
「ドギー……」
「……気にするな。奴もデカレンジャーの一員だ、こうなる覚悟もあった……
俺達は……奴の死が犬死にではないことを証明するだけだ」
「ああ……そうだな」
ドギーの目に灯る、確かな正義の光に、烈は彼が、覆い尽くそうとする心の闇を払いのけたことを確認する。
この男なら……背中を預けられるかもしれない。
「行こうギャバン。まずはジャスミンとスワン、そして君の部下のシャリバンを探すんだ」
「よし……!」
「待っていろ、大首領……そしてヤプールにアブレラ!
必ず貴様らのもとに辿り着いてやるぞ!」
二人は立ち上がり、このゲームへの徹底抗戦を決意する。
それは、かつてないほど残酷で、厳しい戦いとなるだろう。
頑張れ、デカマスター!
戦え、宇宙刑事ギャバン!
【一条寺烈@宇宙刑事ギャバン】
状態:健康
道具:荷物一式、アイスラッガー
基本行動指針:ゲームを潰し、主催者を倒す
第一行動指針:シャリバン・ジャスミン・スワン、及び共に戦う仲間を探す
第二行動指針:ドルギラン・グランドバースの捜索
備考:主催者の細工等を警戒し、蒸着はあくまで最後の手段
【現在位置:F-07】
【ドギー・クルーガー@特捜戦隊デカレンジャー】
状態:健康
道具:荷物一式(支給品不明)、マスターライセンス
基本行動指針:ゲームを潰し、アブレラ再デリート及び主催者逮捕
第一行動指針:シャリバン・ジャスミン・スワン、及び共に戦う仲間を探す
【現在位置:F-07】
【備考】
・ドルギラン、グランドバース……そしてデカベースが会場とは別のどこかの空間に存在していると思われます
【現在時刻:1日目 12:15】
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