無題
もうどれくらい歩いただろうか。
自分の背丈ほどある藪を書き分けた私の眼前に広がっていたもの。
それは海。
水平線がしらみがかった、幻想的な夜明け際の海だった。
「…って、完全に道間違えてるじゃん!!」
先を急ぐ張遼の後をついていたトモカネだったが、
あれだけ迷い無く道を進む張遼が、まさか此処まで豪快に道を間違えるとは思っていなかった。
「思いっきり海じゃん! 島の真ん中どころか端っこじゃん!」
つっこむトモカネ。
「むう、これはなんと大きな河だ…」
「海知らないのかよ! つか海の概念知らずに地図みてたの!?」
この2人は、完全に意思疎通不能な状態に陥っていた。
しかし、それも当然のことではある。
かたや2千年前の武将、かたや何の代わり映えも無い芸大制である。
言語が通じるだけで奇跡なのだ。価値観や常識観念が通じる訳がない。
張遼はトモカネを唯の童と見ていたし、トモカネも張遼をガラの悪い田舎者程度に考えていた。
「しかし、まあ良い。数日も歩けばいずこかの邑に付くだろう。そこで馬を得れば良い」
「いやいや、孤島だっていってるじゃん。
てか海の概念すら知らないの!? どんだけ田舎者なの!?!?
ってか馬ぐらいで事がどーにか成るワケないじゃ――」
「おい」
一騎当千の眼力がトモカネを射抜く。
「戦も知らん童が、口が過ぎるぞ」
「いや、え? つか、…… ごめん、なさい」
少し間違えれば、完全に殺される空気だった。
張遼は戦国武将。元より人権意識や生命倫理がかけ離れている。
彼にとって、眼前一人の命の価値など、吹けば飛ぶ塵芥と比べても大差ない。
そんな漢と共にいる危険性を、トモカネはゆっくりと、極めて遅ればせながら認識していくのだった。
【張遼文遠@蒼天航路】
【装備】日本刀@現実
【持物】基本支給品、不明支給品0〜1
【思考・行動】
邑を見つけ、馬を手に入れる
【友兼@GA_芸術科アートデザインクラス】
【装備】無し
【持物】基本支給品、不明支給品0〜2
【思考・行動】
1、張遼から離れたい
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