無知シュ
幕張新都心イオンモールの未来屋書店。
そこに一心不乱に陳列されていた本を読み漁る参加者がいた。
「……」
ぺら、ぺら、一定のペースで捲られるページの風を切る音が、静かな書店に響き渡る。
何やら異様な雰囲気である。
熱心、というよりギラギラとした感じで手元の本を熟読している。
ぼさぼさワカメヘアー、目の下にクマ、白衣を着用という絵に描いた様なマッドな少女。名は不破氷菓
「……これは、これほどとは」
驚愕と、何やら感心したかのような感情のこもった呟き。
無表情でありながら頬を赤く染め、まるで恋する乙女のように見えなくもない。
ーーめくったページが、盛大にPーーしてる男女の写真ではなかったのなら
今よりも少し未来、16年前に制定された 《公序良俗健全育成法》 (通称「育成法」)により全ての卑猥な性知識を制限されてしまった日本が彼女の住む世界である。
そのため不破氷菓の世代はほぼ性知識のない世代であり、「赤ちゃんは男女が真面目に心から愛し合っていれば、何もしなくても自然と生まれてくる」というキャベツ畑な理屈が常識とされる。
しかし、幼い頃から性に並々ならぬ興味を持っていた彼女は、現在も生物(ハエちゃんと野良犬のペス)の飼育を通じて熱心に性知識を吸収しようとするほどの意気込みである。
そして、この未来屋書店にはGOの意図によってか、公序良俗健全育成法の制定前と同様にポルノ雑誌ーーようはエロ本が置かれていたのだ(ご丁寧に無修正)
結果)殺し合いそっちのけでエロ本読み漁ってます。これなんてエロゲー
「あぁ……すごい、こんな太いものが」
そのセリフはヤバイ。
しかしそんなことよりももっと不味いことがある。
彼女、白衣の下に『何も着ていない』。ようはスッポンポンである。
GOに拉致される前、訳あって制服がずぶ濡れになっていた彼女は、服をすべて(下着含む)脱いでいた。
その事も忘れてしまうほど、知識欲を刺激されているのだ。(そもそも性知識が殆どないので羞恥心が極端に薄いこともあるのだが……)
【未来屋書店/1日目/深夜】
【不破氷菓@下ネタという概念が存在しない退屈な世界】
[状態]全裸に白衣、エロ本よんで興奮
[所持]基本支給品一式、不明支給品0〜3、大量のエロ本
[思考]
なにこれすごい(エロ本に集中)
(なんだあのガキ……)
まるで無防備な彼女の背中を、気配を消して観察する胡散臭さ全快のハゲ。
ハイエナのパッチ。ここでは鉄板のパッチと呼ばれる盗人であり追い剥ぎである。
いつも通りロードランの地下墓地でカモを待ち構えていた筈が、唐突に巻き込まれたのが殺しあい。まるでたちの悪い冗談だ。
彼の愛用している大鷲の盾とウィングドスピアもGOに没収されているのでとてもやりにくい。
ディバックにもロクなもんが無かったし、さっそくカモを見つけたと思ったんだがよ……
パッチは不死人である。
もっとも、不死といえども完全ではないが、致命傷を受ければ消滅し、またロードラン各地に存在する焚火で復活することができる。
ようするに死ねばロードランに帰還できるかも知れないが、そればっかりはこの場では不味いかもしれないとパッチの鋭い勘が伝えていた。
そもそも不死人でも死にすぎてしまうと、知性のない亡者となってしまうのであまり死にたくはない。
だから出来るだけ危ない橋は渡りたくないし、不意打ちや騙し討ちが自分の本分だとパッチは理解していた。
つまるところ、決めかねていたのだ。
目の前の女は果たして本当にカモなのかと。
不死人にとって外見だけが強弱をきめるものとは限らないのだ。
そもそも本当に弱いやつがこんな隙を見せるもんなのか?怪しい……
【鉄板のパッチ@ソウルシリーズ】
[状態]こっそりしている
[所持]基本支給品一式、ランダム支給品0〜3
[思考]
このガキ……何か仕込んでやがるな?
安全に生き残る。
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