BUNBUN HELLO
「一体…どうなっているんだ…?」
その異様に混沌とした状況に男アーチは困惑した。
確か自分は自身のマスターである少女蘭の自宅であり拠点であった豚坂邸に侵入して来たサーヴァント・バーザーガーと対峙し、そして敗れて蘭に看取られながら息途絶えた筈だ。
しかし現実は全く違う結果を生み出したらしい。
気付けば全身の自由を奪われ、突如現れた禍々しいオーラを放つ長髪の男から突飛過ぎる殺し合いの説明を受けていた。
そして再び意識を失い、目を覚ますと今いる滑り台らしき遊具の下で横たわっていたのである。
ふとアーチはあの長髪の男の言葉を思い出す。
あの男は確かに『この殺し合いの詳細情報の記載されたルールブックとそれの入っているディバック』の存在を口にしていた。
滑り台の階段には確かにディバックが置いてあった。
アーチはすぐさまそのディバックに手を伸ばす。
◆
アーチの手の甲を鋭利な矢が突き刺したのは、まさにその時の事であった。
「ぐあぁぁぁ!!」
想像を絶する激痛にアーチは苦悶の声を上げる。
そんなアーチを後目に彼の元へ歩み寄る一つの男の影があった。
「ブンブンハローユーチューブ」
その男は不気味な微笑を浮かべつつ、アーチを狙撃したであろうクロスボウガンに新たな矢をセットする。
「ヒヒヒ!!これで再生回数アップは確実だぜェ!!」
その男HIKAKINは首から下げているディバックからスマートフォンを取り出し、クロスボウガンを悶え苦しむアーチに向ける。
この男にとって『殺人』という行為とは、ただの『再生回数を上げる為だけの演出』に過ぎないのだ。
何の忌避感も覚えないHIKAKINはクロスボウガンの弩を引いた。
◆
しかし現実とは実に無常なものであった。
HIKAKINがクロスボウガンの弩に手をかけるとほぼ同タイミングで、その女司波深雪はとあるボタンのスイッチを押した。
彼女のディバック内で見つかった『それ』は、説明書によると『陰部爆破装置』というモノであり、その装置のスコープが全体像を視認し、そして完全に識別した対象の陰部を破裂させるという謂わば金玉クラッシャーに相当する代物であった。
アーチこそ悶え苦しんだせいで滑り台の影に隠れてしまい識別出来なかったものの、悠々と彼に接近しながらスマートフォンを弄るHIKAKINの識別など容易い事だったのだ。
陰部を抑えながら凄まじい形相で悶絶するHIKAKIN。
どうやら彼の放った矢はアーチの居る方向とは正反対の方向へと飛んで行ったらしい。
深雪はそっと彼のクロスボウガンを手に取り、彼に向けて弩を引いた。
今度こそ矢は外れる事なくHIKAKINの脳天を貫いていた。
そして彼の痙攣が止まるまで、そう時間はかからなかった。
【HIKAKIN@Youtuber 死亡】
【残り29人】
【豊砂公園/滑り台前/一日目/深夜】
【司波深雪@魔法科高校の劣等生】
[状態]全身にHIKAKINの血飛沫
[所持]基本支給品一式×2(深雪・HIKAKIN)、クロスボウガンとその矢(HIKAKINの支給品)、スマートフォン(HIKAKINの支給品)、陰部爆破装置(深雪の支給品)、不明支給品0〜1
[思考]お兄様と結ばれるべく、バトルロワイアルに優勝する
※殺人に対する忌避感がありません
【アーチ@Faith/StayKaith】
[状態]利き腕の手の甲に矢が突き刺さっている
[所持]基本支給品一式、ランダム支給品0〜2
[思考]とりあえず現状を把握したい
※滑り台の前で悶え苦しんでいます。
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