素晴らしい
愛する魔理沙……もといUDK姉貴を殺そうとした遠野を確実に始末しようとサバイバルナイフを振り上げるALC。
瀕死の遠野にそれを防ぐ手立てはない。
(先……輩……)
死を覚悟した遠野は自分に一服もってレイプしたクッソ汚い、しかし最愛の野獣先輩のことを脳裏に浮かべた。
「さて……最後にもういっか〜い」
「アーン!(高音)」
ドスドスドスッ!!
――
ALCの背後から、柔らかいものに何か突き立てられたような、そんな鈍い音がした。
「がふっ☆」
「……え」
驚愕しながら振り向くと……
額から3本矢が貫通したUDK姉貴の姿が!!
【UDK姉貴@クッキー☆ 死亡】
【残り26人】
――
「クックック……」
呆然とするALCの視線の先には、薄暗がりに佇む怪しげな仮面の男が……
彼の名は素晴らしいチェスター。
過去のウーラシールに引きずり込まれた不死人の片割れであり、このロワではマーダーとして活動している男である。
素晴らしいチェスターは素晴らしい武器であるスナイパークロス(笑)でUDK姉貴の脳天を無慈悲に撃ち抜いたのだ。
七週カンストだと体力をほぼ持っていかれかねないヘッドショット。UDK姉貴は死んだ。慈悲はない。
「あ」
「あああ」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
尋常じゃない様子で絶叫するALC。笑いながら人を殺せる畜生となってまで助けようとしたUDK姉貴が自分の側であっけなく殺されてしまったのだ。正気を失っても仕方ない。
遠野に降り下ろす筈だったサバイバルナイフを血が滲むほど握りしめ、様々な感情がごちゃ混ぜになった表情でチェスターに突撃する。
「なんだ、貴様?逆恨みか?よくない、よくないなあ!そういうのはよくないぞぉ」
どこか楽しげに、しかし馬鹿にしたような台詞にALCはさらに激情する。
「そうら……そうら、そうら」
するとチェスターはディバックから素早く何かを取り出すと、修羅のごときALCに投げつけた。
ザクッ、ブッシュウウウウウウッ!!
「ひぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
素晴らしいチェスター御用達の薔薇は、数多の棘で接触したALCの柔肌をズタズタに引き裂いた。
それとともに、高い出血効果により血が吹き出る。
血まみれのサバイバルナイフをさらに自分の血でコーティングしてしまった。
ポトリ、とつい力が抜けてサバイバルナイフを落としてしまうALC。
瞬間、チェスターによる足払いで体制を崩された。
「ぐげっ!?」
顔面を強かにぶつけ、耐えられず上げた悲鳴をあげるALCを見下ろすチェスター。
「どうした?死にそうか?所詮アホなどそんなものか!ウェーハッハッハッハッハッ!!」
倒れるALCの頭を踏みつけ、押さえつけながら嘲笑うチェスター。その合間に手早くスナイパークロスに次の矢を装填する。
普通なら彼の扱うスナイパークロスはかなり装填に手間がかかる代物なのだが、それをほぼ一瞬で済ませられる所がチェスターの恐ろしいところだ。
「殺゛す゛……殺゛し゛て゛や゛る゛!!ふ゛っ殺゛し゛て゛や゛る゛!!」
血と涙と鼻水でぐちゃぐちゃな姿で、なお抵抗しようとするALC。
「フン……貴様ごときが素晴らしいチェスターに敵うものか」
素早く無慈悲にスナイパークロスをALCの脳天に突きつけ、スナイパークロスの弩を引いた。
ドスドスドスッ!!
ALCは死んだ。
【ALC@クッキー☆ 死亡】
【残り25人】
チェスターはALCの死体を確認すると、先ほどばら蒔いた薔薇とALC、UDK姉貴の持っていたディバックを回収した。
チェスターは仮面の奥から、ALCとUDK姉貴の残骸を一瞥する。
当然、その場に死体は残ったままだ。不死人のように、消滅したりはしない。
不死人となった手前、同類は幾度となく闇霊となって殺してきたが、普通の人間を殺したのは、さしものチェスターにとってもかなり久しいことだった。
「クックックッ……」
もっとも、それで何かを感じたりする訳でもないが。
「じゃあな」
素晴らしいチェスターは一度も振り返らずに、その場を後にした。
【ファミリーモール二階/サーティワン付近/1日目/深夜】
【素晴らしいチェスター@ソウルシリーズ】
[状態]健康
[所持]スナイパークロス(チェスターの支給品)、木の矢×20(チェスターの支給品)、チェスターの薔薇×3(チェスターの支給品)、基本支給品一式×4、石(ALCの支給品)、サバイバルナイフ(ALCの支給品)、ランダム支給品0〜2+遠野の支給品0〜2+UDK姉貴の支給品0〜1
[思考]
優勝はどうでもいいが適度に参加者を殺して楽しみつつ脱出を狙う
……さて、素晴らしい男がファミリーモールを去った後に残るのは、仲良くヘッド☆ショットを決められた遺体がふたつと――
「……う、ぐ」
――まだ息のある遠野であった。
ほぼ瀕死で虫の息であった彼が生き残ったのも何とも奇妙な事であった。
【遠野@真夏の夜の淫夢シリーズ】
[状態]後頭部を重症、胸に深い刺し傷
[所持]
[思考]先輩のために戦う
※致命傷です
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