お前の価値こそがONE PIECE
【HEY! 提督ぅー! 今日も良い天気ネ!】
最早大分昔のような幻想。
果たして本当にあったのだろうか。
当然と思い込んでいた日常が、今は歯痒い程に遠い。
【んもう、Lunchはまだまだネー……それとも、私をEat!?】
彼女は前任地で各艦隊と反りが合わず、独りぼっちだった。
指示系統が働かず、個人としての火力に申し分はなくとも、戦果は上がらない。
連携が取れず、某国かぶれの口調も他艦隊からすれば巫山戯ているとしか思われなかった。
ある日、彼女が任務から帰還すると自室は見るに堪えない景色になっていた。
窓が割られ床一面に硝子の破片が飛び散り、家具の殆どが原型を留めていない。
終いには天上を見上げれば、赤い塗料で死を表現するような文章が長々と描かれていた。
そして彼女は鎮守府異動となる。
自ら志願したが誰にも止められず、他艦隊は嗤っていた。
瞳に邪気を納め、消えろと鋭い視線を一人に注ぐ。
敗戦国となった日本の現状を顧みれば、某国の色を残す彼女――金剛は妬みの対象である。
彼女自身もそれを理解していたため、敢えて口に出さず、陰湿な仕打ちに耐え続けた。
だが、ある時を堺に涙を流した。
センチになる夜でもない。真っ昼間から、胸からこみ上げる感情を抑えきれなかった。
当時は他鎮守府と演習を行っている最中だ。
他所の艦隊が気にする中、便宜上は味方である艦隊は我関せずと歩み寄ろうともしない。
流石に見かね、文句の一つでも言おうととある駆逐艦が動いた時、金剛は彼女を止めた。
潮風にやられただけデース! だから、気にしないで。
その一言に駆逐艦は嫌な確信に陥った。
彼女は無理をしているのではないか。それも原因は身内で起きている。
折角の艦娘として同じ時代に生を受けた者同士、あってはならないことだ。
『まだ泣いているじゃないか。そんなに辛いなら、俺のところへ来ないか?』
それは近くて遠い記憶。
軍用の白い手袋で目尻に溜まった涙を拭いてくれたあの人。
虚偽のない笑顔で手を差し伸ばしてくれたあの人。
私の大切な――提督。
私の命に代えても、貴方を守る。
☆
「……ん」
地図の表記ではキャンプ場。
木造のバンガロー内部の出来事だ。
そこで彼女は意識を取り戻す。
どうやら夢を見ていたようだ。
忘れたい過去と忘れたくない出会い。
曖昧に共存するあの頃の記憶を、無意識に思い描いていたようだ。
提督。
私の大好きな提督。
彼女――金剛は大切な男に思いを馳せる。
現実に挫けてしまい、どうしようもない状況を救ってくれた大切な人。
そんな彼が囚われている。
殺し合いを告げる謎の声を耳にした時。
ふと視界に飛び込んだあの人の姿を見間違えることはない。
あれは紛れもなく提督だった。
許せない。許さない。
私の大切な人を貶める奴は絶対に許さない。
聖杯という願望器に加え人質。外道極まりない行為だ。
そんな奴を許してたまるか。Burning、燃やし尽くせ。
さぁ、提督を救いに行こう。
まずは気持ち悪い感覚――脳内に植え付けられたような記憶を処理する。
スマートフォンと呼ばれる長方形型の物体を手に取ろうとした時だった。
「……!?」
腕が動かない。
正確には背面で縛られている。
謎のスマートフォンと呼ばれる物体に対する知識にも驚いたが、なんだこの状況は。
どうして自分が縛られているのか。
「……はッ!? Naked Body!?」
意識を取り戻した直後で感覚が鈍る。
視線を下に逸らせば生々しい肌色が目に映る。
美しい腰回りにロープが回されており、どうやら椅子に縛り付けられているようだ。
そして自分の衣服はブラとソックスだけ。其れ以外は裸である。
半ば錯乱状態で首を回せば、窓の奥は暗くどうやら夜のようだ。
夜と認識した段階で肌寒くなったのか、悪寒が走る。
どうして自分は裸なのか。厳密に言えば裸ではない。
しかし裸と変わらない。誰かに脱がされたのだろう。誰にだ。
殺し合い。
そう、これは殺し合い。
金剛の顔色が急激に白くなる。
自分をひん剥いた男が近くにいる。頭が嫌な方向に働いてしまった。
これから自分がどうなるのか。
悍ましい未来を勝手に予想し、悪夢を振り払うように頭を大袈裟に揺らす。
「おう、もう目が醒めちまったか。モーニングコールにはちと早すぎるが……気分はどうだい」
悪人めいた面。
立派な髭。
立派なガタイ。
手入れはされていないだろう長く、潤いのない白い髪。
如何にも海賊だと言わんばかりの帽子に服装。
そしてなによりも、下衆な瞳。
丁度対面に座る形でスマートフォンを弄る男に抱いた第一印象である。
言ってしまえば良いものは一つ足りとてない。
最初の言葉に謝罪もなければ、状況の解説もない。
つまり。
「私をこんな姿にしたのは貴方ネ、このPervert!」
「へぇ、中々いい目をしてるじゃねえかぁ……へへ、唆らせてくれる」
この男が自分を裸にした張本人であろう。
最大限の怒りと憎しみを詰め込み睨むが、男は笑う。
操作していたスマートフォンを尻のポケットにしまうと、彼女の元へ歩きだす。
バンガローは古いようでギシギシと、心を焦らせるような音が室内を満たした。
やがて男は金剛の目の前に到達すると、彼女の耳元へ顔を寄せ
「悪くないぜお前。体も極上だし、なんつっても俺の好みだ」
囁く。
男の吐息が耳にかかり、金剛の体の内外問わず、全てが一瞬にして張り詰めた。
本能が「ヤバい」と何回も繰り返し、誰が見ても分かるように鳥肌。
血色の悪い表情が更に悪化し、気色悪いを通り越した目の前の男に震えるしか無い。
逃げようと体を動かすも、腕や腰が椅子に固定されている。
がたんがたんと子供のようなその場でジタバタするだけであった。
「無駄な肉も少ねえ。それでいて全くない訳じゃない。胸も充分な大きさだ。顔と同じで、そこも可愛らしい色をしているなぁ……」
全身を舐め回すように見る男。
そことはどこなのか。無駄なことを考えた途端に、神経が研ぎ澄まされる。
最初から分かっていたことだが、考えないようにしていた。
この男が自分をどうするつもりなのか。そのことを。
その途端、気付けば口が開かれていた。
「ち、近寄るなこの変態……変態!」
生きるために。
自らの意思を表明するように叫ぶ。
これに対し男は深いため息をついた。
一呼吸空け、即座に彼女のみぞおちへ拳を叩き込んだ。
「あぐっ、ぼぇぅあ……ぁ?」
「誰に向かって口利いてんだよ、あぁ?」
金剛の口から胃液が飛び散った。
痛みよりも先に自分が殴られた不可解さが体を支配する。
「俺はテメェの主なんだよ。それを変態……? 舐めたこと言ってんじゃねえぞ、雌犬がぁ!!」
更にもう一発。
肌と肌が無慈悲に重なり合う鈍い音が低く響いた。
金剛は俯き、更に胃液を吐き出した。
足元に掛かる生暖かい液体に嫌悪感を示すが、痛みが全ての思考を放棄させる。
「傷が出来たら商品としての価値も下がんだよ、無駄な労力になるじゃねえか!」
男は金剛の髪を荒く掴み上げ、彼女の顔を無理やり上げる。
焦点の合わない瞳は濡れており、頬を伝って涙が落ちる。
突然の出来事に頭が追い付いていないようだが、男はなんとも思わずに唾を吐きつけた。
べちゃりと気味の悪い音に襲われた金剛。刹那の時をも待たずに、鼻を刺激する悪臭に涙が止まらない。
男は慣れていた。意識の追い付かない女を。数ある商品の中でも自分の立場を理解しない奴隷はたくさんいた。
「ったく。いいか、テメェの所有者は俺だ。恨むならこのバンガローで寝ていたテメェの愚かさを恨め。
俺はただ、無防備に寝ていた女をひん剥いて、縛り上げただけだ。分かったか、俺は悪くねえ。悪いのはテメェだ」
どんな理屈なのか。
今にも大声で叫びたい金剛であったが、言葉が出ない。
それは殴られた衝撃によってか。錯乱しているからか。泣いているからなのか。
分からない。分かることはただ一つ、自分が男の玩具にされることだ。
「黙ってちゃあ、折角の女が台無しだ。口数の少ない女にも魅力はあるが、テメェは最初のうち、ナマイキにしてた方が唆る」
男はポケットからサバイバルナイフを取り出すと、刃を晒した。
あぁ、自分は殺されるのか。
煌めく刃に金剛は思考を放棄し、死を悟った。
本来の彼女ならば到底こんな思考に辿り着かない。
殺し合いという異常な舞台。突然裸にされた現実。レイプ魔と変わらない海賊。
最悪に最悪を重ね最悪を乗算した状況が彼女を狂わせる。
「こいつはぁ、備え付けてあったもんだが空気を読めるいい奴だ。
さて……どんな色をしているか俺に見せてみなあァ!」
「……ぁ、い、ぁ……いや、ああ、ああああああああああああ」
鋭利な音が響くと、金剛のブラが切り裂かれ美しい乳房が露わとなった。
豊満な其れは幾多もの男の視線を奪っただろう。
誰もが触れたいと思っただろう。
誰もが倫理に隠された彼女の秘密を見たいと思っただろう。
咲く花は美しい桜色、海賊の男は下品に舌を晒しながら叫ぶ。
「とんでもねぇ! 軍の女は締まりけのないビッチか、使い物にならねえモンしかいねえと思ったが……テメェ、極上モンじゃねえか」
唾を撒き散らしながら男は金剛の胸の先に立つ桜色を舐め上げた。
ねっとりと自分を押し付けるように、桜色が穢れた煌めきに覆われた。
「それに乳臭くもねえ! こいつぁ、まさかの初モンだぁ!!」
歓喜に震え、天上を見上げる海賊の男。
もはや涙も流れない金剛の瞳は不自然に盛り上がった男の局部を目撃してしまう。
ああ、もうどうにでもなれ。
あんなモノが自分の中に入るとは到底思えないが、なんとかなってしまうのだろう。
ずしりと体を支配されるように重く響くのだろう。
下品なソレで中を掻き回され、排出されてしまうのだろう。
「提督提督って寝言を漏らしてたからとっくに中古だと思ったが、今時に新品の初物でそれに顔も体も悪くねえときた。こんな状況じゃなかったら最高の商品だっただろうに」
「提督……ていとくぅ、ああ、ごめんな、さい。ていと、」
「壊れるのはまだ早え」
提督の名前を聞いた瞬間、金剛の脳裏は彼に埋め尽くされた。
彼はこんな自分を見たらどう思うのか。哀れな姿を、羞恥極まりない姿を。
その途端、枯れていた涙が溢れ返り、言葉も止まらない。
いや、それは言葉ではない。ただ、提督に対する謝罪が不完全な形で口から漏れる。
「提督……けっ、いいか? テメェのご主人はそいつじゃなくて、俺なんだよ。分かるか?」
「い、や。ごめんなさい。ていとくぅ、許して。私は、馬鹿な私でごめんなさい、だか、ら、もう一度、名、前を呼んで、ネ……」
「分かるかって聞いてんだよ」
海賊の男は壊れたゼンマイ仕掛けの玩具となった金剛の口に彼女の靴を捩じ込んだ。
咳き込む彼女を無視し、その場に屈むとあろうことか彼女の右足、中指の爪を強引に剥がした。
「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
絶叫。
体を震わせ、痛みを紛らすように暴れる金剛。
しかし厳重に縛られた椅子から解放されることはない。
咄嗟に視線を落とせば赤く染まる指。視覚に訴えったのか、痛みが跳ね上がる。
海賊の男は暴れる彼女の耳元で叫んだ。
「いいか、次に舐めたことを言ったらまた爪を剥がす。俺だってこんなことはしたくねえ。
テメェの商品価値を下げても得はねぇんだよ……いいか、俺を怒らせんじゃねえ」
そして
「テメェが商品になるかどうか、俺が確かめてもいいんだぜ?」
海賊の男の顔が金剛の局部へ近付いた。
彼が発言する度に温い風が彼女の体に刺激を与える。
極度の状態に追い込まれているためか、嫌にも体が反応するようだ。
毛先まで神経が通っているかのような感覚に、金剛は耐え切れなかった。
ごめんなさい提督。ごめんなさい提督。
ただただその言葉を繰り返すだけ。
ごめんなさい提督。ごめんなさい提督。
一心不乱にその言葉を繰り返すだけ。
ごめんなさい提督。ごめんなさい。
こんな私を許して下さい。見捨てないでください。
ごめんなさい提督。ごめんなさい提督。
永遠に続く謝罪に海賊の男は路上の蟻を見下すかの如く興味のない瞳をしていた。
「これはダメだ。少し時間を置いてからにするか。なに、こんな状況だ。
死ぬ前に一発ヤラないと気が済まないカスだっているだろう。この女は上物だ、交渉材料としては破格過ぎる」
奴隷を求める人間はどの時代、どの世界にもいる。
それはこの殺し合いも同じだろう。
他者を殺し、自分の願いを叶える下衆が蠢く生地獄。
性奴隷のカードを一枚持つだけで、手札の価値は何倍にも跳ね上がる。
「交渉材料にならなくても問題はねえ。俺が使っちまうからな……ハハハハハハハハハハハハハハハハ! ……おっと、声を上げちゃいけねえ」
馬鹿をおびき寄せるにはまだ早い。
まずはこの名前も知らない女が理性を取り戻す時を待つ。
穴に突っ込む以外にも使い道はたくさんある。情報の交換すら行っていないのだ。
こんな極上の女を黙っておいそれと手放すものか。
夜は長い。退屈な時間を潰すために、彼女を支配するのも悪くない。
歴史に名を刻む男、コロンブス。
彼の手に握られるのは、奴隷の石を用いて手に入れた銃が握られていた。
【1日目/朝/C-6 キャンプ場のバンガロー内部】
【金剛@艦隊これくしょん】
【状態】精神的疲労(大)、精神的苦痛(大)、劣等感、現実逃避、提督に対する愛情(少)、提督に対する――(大)
右足中指爪無し、裸(ソックス以外)、椅子に縛られている。
【所持品】
【ストレージ】
【思考】
1:ごめんなさい提督。
【備考】
※彼女の足元に衣服が散乱しています。
【レジスタンスのライダー@Fate/Grand Order】
【状態】高揚感、性的興奮(小)
【所持品】サバイバルナイフ@現地調達、拳銃(詳細不明)
【ストレージ】交換石17個、一日分の水(残量100%)×2
【思考】
基本方針:とことん楽しむ。マスター? 運がねえ奴から死んでいくのさ。諦めな。
1:女(金剛)を餌に殺し合いを立ち振る舞う。
2:襲ってくる奴は殺す。利用する奴も殺す。女は使い捨てる。
【備考】
※金剛のスマホを奪いました。
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