JOKERS
正規のプレイヤー達が会場に転送されたとき、島のどこかで三人の男女が動き始めた。
彼らは何も分からぬままに集められた正規プレイヤーとは違う。
この殺し合いを円滑に進めるために用意された存在である。
プレイヤーを率先して殺害することで「他人を殺さなければ殺されてしまう」という事実を知らしめることが、彼らに与えられた役割だ。
「一応、確認しておくよ」
三人の中で最も若く小柄な少女が、他の二人に向き直る。
右目を大きな眼帯で隠し、袖の長い衣装を纏った黒の魔法少女――呉キリカ。
「正規プレイヤーが途中で全滅すれば、聖杯の所有権は私達『ジョーカー』に与えられるわけだけど、その権利は私が独占できる……という契約でいいんだね?」
「構わねぇぜ。オレ様は過程を楽しみてぇんだ。ここに集められた強者共との戦いをな」
そう答えたのは有角の巨漢――エルステ帝国軍中将、ガンダルヴァ。
力を認めた敵にのみ抜く大刀を携えたまま、キリカを興味なさそうに見やる。
「私も同じよ。殺す過程、殺した直後にこそ意味があるの」
最後の一人、美貌の女殺人鬼が薄く笑う。
吸血鬼カーミラ。シェリダン・レ・ファニュが綴った小説に現れる女吸血鬼。
正確には、その名を仮面のように被った『血の伯爵夫人』エリザベート・バートリー。
だが、呉キリカはそれを知らない。知ろうとも思わない。
彼女が全てを捧げる美国織莉子に関わらない情報には、何の関心も抱けなかったからだ。
「それならいいんだ。聖杯は私が持って帰る。きっと織莉子の役に立つはずだ」
キリカは踵を返して二人に背を向け、その場を立ち去っていった。
その後姿が全く見えなくなったところで、カーミラは愉快そうに口を開いた。
「聖杯には興味がない――本当かしら」
「お互いにな。どうせロクなこと考えてねぇんだろ?」
「あら、失礼ね。私が今考えているのは、彼女の生き血もなかなか質が良さそうねってことだけよ」
「ふん……」
ガンダルヴァは不快そうに口元を歪めた。
『ジョーカー』として集められた彼らは、互いに協力し合うつもりなど毛頭持ち合わせてはいなかった。
そもそも、そのようなことは最初から期待などされていない。
殺して、殺して、殺して――限界を迎えて殺される。
いわば使い捨ての殺戮装置。殺し合いを円滑に進めるための潤滑油。
主催者側でありながら特権を与えられず、他の参加者と同じ条件で戦わされる理由もそこにある。
しかしながら、彼らはそれで終わるつもりなどない。
自らが聖杯を得るために、他の『ジョーカー』すら利用して殺し尽くす。
使い道がある限りは後回しにしてやろう――『ジョーカー』同士の相互認識はその程度のものだった。
「オレ様も行くぞ。見どころのある奴は早めに見繕わねぇとな」
「ええ。せいぜい暴れなさいな」
バトル・ロワイアル開始の合図とほぼ同時に、三人の殺戮者が解き放たれた。
【1日目/朝/エリア不明】
【ガンダルヴァ@GRANBLUE FANTASY】
【状態】無傷
【所持品】一日分の水(残量100%)
【ストレージ】交換石10個
【思考】
1:強者を中心に狙う
【備考】
※現在位置不明。次話の書き手が好きなところに登場させられます
【カーミラ@Fate/Grand Order】
【状態】無傷
【所持品】一日分の水(残量100%)
【ストレージ】交換石10個
【思考】
1:美少女を中心に狙う
【備考】
※現在位置不明。次話の書き手が好きなところに登場させられます
【呉キリカ@マギアレコード】
【状態】無傷、変身中
【所持品】一日分の水(残量100%)
【ストレージ】交換石5個
【思考】
0:聖杯を織莉子のために持って帰る
1:無差別に狙う
【備考】
※魔法少女としての固有武装の「爪」を使用可能です
※現在位置不明。次話の書き手が好きなところに登場させられます
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