オープニング
――真っ暗な世界に、どこからともなく荘厳な声が響く。
「ようこそ、プレイヤー諸君」
体の感覚はない。目を閉じることも耳をふさぐこともできない。
暗闇の中をふわふわと浮かんでいるだけのように感じる。
「突然ですまないが、これから諸君らには絶海の孤島で殺し合いをしてもらう」
ふざけるな――という声も出ない。
「拒否権はない。七十二時間以内に最後の一人にならなければ、全員が死ぬだけだ」
「無論、勝者には相応の見返りを与えよう。万能の願望器――『聖杯』だ」
「望む者を蘇生させて帰還するもよし。己のみが帰還して聖杯の力を振るうもよし。後のことには干渉しないと約束しよう」
――急に、暗闇の中を落ちていく感覚がした。
「目を醒ませば、諸君らの手には機械が一つ握られていることだろう。仔細はそこに記録されている。それを頼りにせいぜい生き延びるがいい」
次第に落下速度が上がっていき、それに比例して意識が薄れていく。
その最中、何人かのプレイヤーは幻視を見た。捕らえられた人々の姿だ。
それは騎空士の少年少女だったかもしれない。人類最後のマスターだったかもしれない。艦隊の指揮者や付喪神を率いる者だったかもしれない。プロデューサーやマネージャーだったかもしれない。魔法少女と共にある存在だったかもしれない。
あるいは、全く個人的な関係を築いた人物だったかもしれない。何も見えずに終わったのかもしれない。
「――何かが視えた者がいるようだな。それは真実の光景だ。彼らは我が手のうちにある。生き残った者が望むのならば解放してやろう」
そして、意識が暗転した。
【バトル・ロワイアル開始 残り50人】
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