ソラメクユメ






小さい頃はずっと病気がちであまり家に帰れなかった。
退院して久しぶりに会った悠はすごくカッコいい男の子になってて。
あの夏の日にキスされてからずっと、胸の鼓動は治まらないままで。

そしてこの前、やっと――


(そういえば、引っ越してきた時はハルの後ろに乗せてもらってたっけ。)


気持ちのいい風に当たりながら自転車を漕いで移動する一人の少女、
春日野穹はこの島に来る前のことを思い出す。
今、彼は何をしてるんだろう。
ハルが殺し合いなんかできるとは思えない。
まさかとは思うが私の為にと、無謀なことを考えているのだろうか。
……それならちょっと嬉しいけど、でも。

(ハル……どこに居るの?私を置いてどっか行っちゃったら嫌だよ。)

今そばに居ない彼を思うと胸が締め付けられる。
鼓動が止まらない。
これは安否を気遣ってのことか、それとも。

キュッと、自転車のブレーキをかけ立ち止まる。
いつの間にか住宅街の近くに着いていたのか、気がつくと目の前に古びた小屋があった。

「はぁ……はぁ……。」

さっきから妙に息苦しい。日ごろの運動不足が祟ったのか、それとも。
あの日の夜のことを、思い出しているから。

(ハル―――――。)

自転車を停め、ふらふらとした足取りで小屋の中へ入っていった。


――――もう、限界。

――――ずっとずっと、我慢してた。

――――ハルを想うと、胸がキュッとなって。

――――いいよ、ハルの好きにして。

――――変じゃないよ、私たち特別なんだし。

――――お互いに大好きなんだから、いいんだよ。






「……ぁ……はぁ……。」

適当に脱ぎ散らかした衣類が床に散らばる。
壁にもたれかかって下着の中に手を入れる。

「あ……ふぁぁ……ハルぅぅ……!」

体の火照りが治まらない。指で乳首を弄る。
汗が全身から噴き出し、銀色に輝く髪が日光に照らされ妖しく煌めいた。

「う……は……あぁぁぁっっ……!!」

ビクンと痙攣し、ダランと腕を下げ脱力した。

「ハル……大好き……。」

どうしてこんなに好きなんだろう。
殺し合いの最中だというのに、我慢できないくらい。
肩で息をし、流し眼で窓際に視線を向ける。

「……ところでさ。」




「さっきからなにしてるの?」

「――――え?」

座った姿勢のまま、死角になっている角度から片手でピンを抜き、
気だるげに手榴弾を放り投げて両手で耳をふさぎ、

「――――!?しまっ――――。」

激しい爆発音が鳴り響き、ガラスの破片と血飛沫が窓側に飛び散った。







「うわぁ……。」

服を着なおした穹は何故か上手いことピンポイントで命中したらしい手榴弾で殺した男の惨状を
目の当たりにして少し気分が悪くなる。
口髭のついた下顎から上は無残に原型も留めず脳漿を撒き散らしており、
吹き飛ばされたこいつがどんな顔だったのか、一体どんな奴だったのか、もう判ることはない。
だが、視線を下ろすと違和感に気づく。
ズボンがまるで自分から下ろしたかのように不自然にずり落ちており、
更に下着もずり落ちてその下にある物から血液以外の体液が――

「うざっ!」

衝動のまま踵で踏みつけ、残っていた下顎と下腹部のモノを同時にぐしゃりと砕き潰した。

「ウザいウザいウザいウザいウザいウザいウザいウザいウザいウザいウザいウザいウザいウザい
 ウザいウザいウザいウザいウザいウザいウザいウザいウザいウザいウザいウザいウザいウザい
 ウザいウザいウザいウザいウザいウザいウザいウザいウザいウザいウザいウザいウザいウザい
 ウザいウザいウザいウザいウザいウザいウザいウザいウザいウザいウザいウザいウザいウザい
 ウザいウザいウザいウザいウザいウザいウザいウザいウザいウザいウザいウザいウザいウザい
 ウザいウザいウザいウザいウザいウザいウザいウザいウザいウザいウザいウザいウザいウザい
 ウザいウザいウザいウザいウザいウザいウザいウザいウザいウザいウザいウザいウザい!!!

   覗いていいのはハルだけなんだから、私としていいのはハルだけなんだから!!」

ハル以外の男はただのケダモノに過ぎない。人と思っちゃいけない。
これからも足で道路を踏みしめるように躊躇なく削除することにしよう。
そう心に誓った穹は男のディバックを奪い取り、留めていた自転車に跨った。


【墨村正守@結界師 死亡】
【残り53人】




【D-2/住宅街の端側/日中】

 【春日野穹@ヨスガノソラ】
 [状態]:健康 気分高騰
 [服装]:私服
 [装備]:ファナたん号@俺の妹がこんなに可愛いわけがない
 [道具]:手榴弾(3/5)@めだかボックス、エリザベス@けいおん!
     不明支給品×2〜5
 [方針・思考]
  基本:ハルを生き残らせるために皆殺す
  1:ハル―――――
  2:ハルを探す
  3:入手した支給品を確認
 [備考]
  ※ 参戦時期は穹編で悠と体を重ねてからです
  ※ 手榴弾@めだかボックスは残り3つです
  ※ 人形などの人外の参加者が何名かいると思っています
  ※ D-1の砂浜にハイパーレインボーパンの詰め合わせ&謎ジャム@CLANNADが放置されています
  ※ 金糸雀のデイパックやローザミスティカがどうなったかは次の書き手に任せま



▽ ▼ ▽ ▼ ▽ ▼


久しぶりに会った妹は、僕の知っている妹じゃなかった。
見たことのない儚げな女の子になっていて、すごくドキドキして、
色んなことがあって、その度に意識して。

でも妹だから、それ以上はいけないと思って。



とある病院の一室。
ベッドの周囲には男物と女物の衣類が無造作に脱ぎ散らかされている。

「……はぁ……はぁ……桃花さん……!」

「あん……駄目ですよぉ……胸ばっかいじっちゃ……!」

「いいじゃないですか……すごく……綺麗ですよ……。」

「やぁ……舐めちゃダメェ……!」

「はぁ……はぁ……。」


――――いいよ、私のことめちゃめちゃにしても。

――――ハルがしたいなら、それでも。

(……穹……!)

こうして初めて会った人と体を重ねている間も記憶がフラッシュバックする。
僕は何をしてるんだろう?
妹を、穹を守ってあげなきゃいけないのに。

「あぁ……すごい……です……。」

僕は逃げていた。

殺し合いの現実からも。穹のことからも。






「……ごめんなさい……。」

数分後。とりあえず下着だけ履いた春日野悠はベッドに座り込んで頭を抱えていた。
背後にはなんか最初は中国の武将みたいな名前を名乗っていた桃色のロングヘアの少女が
そっぽを向いてちょこんと座っている。さっきから口を聞いてくれない。

ああ、なんでこんなことになってしまったんだろう。
穹になんて説明すれば。
というか見ず知らずの人に自分は何をしているんだろう。

桃色の少女、劉備さんがゆっくりと少し涙ぐんだ顔をこちらに向ける。
ジト目をしながら小声でつぶやいた。

「……初めてだったんですよ?」

「……うぅっ。」

会場で目が覚めた瞬間、恐怖で錯乱してたのか顔が涙でグショグショになってたこの人に
いきなり襲われたのが始まりだった。自分は殺し合いに乗ってないと説明しようにも話にならないので、
なんとか押さえつけてとりあえず落ち着かせるために唇を奪って床に押し倒してそのまま――。



「だいたいソラちゃんて誰なんですかぁー?
 あんなことしてる最中に他の女の人の名前を呼ぶなんて失礼じゃないですかー!」

「あ、いや、無意識で…ホント、ごめん!」

「……はぁ。」

劉備さんはため息をついた後、優しく微笑んだ。

「大丈夫ですよ。ちょっとびっくりしただけで、その……良かったですし。」

顔を赤らめて俯いた。
そういやこの人、抵抗してたのは最初だけで後はすんなり受け入れてたな……。

「おかげで、ちょっと安心しました。ありがとう、悠さん。」

あー、まあ、これで良かったのかな?

ほっと胸を撫で下ろすと、急に引っ張り込まれて顔を胸に埋められた。
奈緒ちゃんとタメを張れる見事なふくらみに窒息しそうになりながら、
劉備さんの声を聞いていた。

「でも、ちゃーんと責任はとって下さいねー?
 一緒に愛紗ちゃんと鈴々ちゃんを探しますよー。悠さん。」



【F-4/病院の一室/日中】

【春日野悠@ヨスガノソラ】
[状態]:健康 自己嫌悪
 [服装]:私服
 [装備]:なし
 [道具]:不明支給品1〜3
 [方針・思考]
  基本:穹を生き残らせたい、劉備の警護?
  1:劉備と行動する
  2:穹が気になる
 [備考]
 ※ 参戦時期は穹編で悠と体を重ねてからです

【劉備@真・恋姫†無双】
[状態]:健康 気分高騰
 [服装]:私服
 [装備]:なし
 [道具]:不明支給品1〜3
 [方針・思考]
  基本:姉妹そろってのゲームからの脱出
  1:愛紗と鈴々に合流する
  2:……悠さん



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