知りたいこと、知らないこと
「どういうことなんだよ…」
ノーヴェは分からなかった。
管理局の更正プログラムを受けているはずの自分がこんなところにいる理由も。
投獄中のドクターに突如殺し合いをさせられる理由も。
それが彼女を悩ませていた。
「クア姉にウェンディ、スバル・ナカジマにギンガ・ナカジマ。あいつらまで…」
無論彼女は何も聞いていない。この殺し合いについても。
いままで作戦中であっても殺しは避けるよう言われてきたのだから。
それに加え、彼女達自身、皆大事にされていた。だからこそショックだった。
「…!!誰だ!?」
背後に人の気配を感じ、振り返った。
「えっと…どうも」
和服を着た女の子がいた。
▲
「ラオウに…トキ、ジャギだと?!」
名簿を開いたケンシロウは驚いた。
そこには死んだはずの二人の兄がいたのだから。
ジャギ。確かにこの手で葬った。
トキ。確かにこの手で弔った。
間違いなどない。
「どういうことだ…」
いや、考えるのは後だ。
あのジェイル・スカリエッティという男、奴は倒さなければならない。
ゲームと称し多くの人間に殺し合いを強要する男。ケンシロウにとってそれは悪党以外の何者でもなかった。
もしこの場にジャギがいるならもう一度地獄に送ればいい。
トキならば殺し合いに乗ることはあるまい。
ラオウとはいずれ戦う定め。会えば戦うだけだ。
北斗神拳伝承者として一人でも多くの人を救い、ジェイル・スカリエッティを倒す。
目的は決まっている。
『……誰だ!!』
突如声が聞こえた。
声色から察するに女だろう。
殺し合いに乗っているかは分からないが、接触すべきか。
そう思い、声のした方向に進んでいった。
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「では二人は殺し合いに乗っていないんだな?」
「うん。とりあえず私は火憐ちゃんとお兄ちゃんを見つけなきゃ
それにしてもあの白衣の男許せないな」
ノーヴェと少女、月火を発見したのは二人の遭遇からすぐであった。
二人の間には警戒と不安の空気があり、ケンシロウが現れてからはさらにその空気は濃くなった。
しかしケンシロウが殺しに乗っていないことが分かるとどうにか打ち解けることができた。月火に対しては。
ノーヴェは警戒しているのか緊張しているのか口数は少なかった。
殺し合いに乗っていないことと知り合いのことぐらいしか喋っていない。
「でもみんな兄弟とか姉妹で組を作ってるみたいだね」
「俺とジャギの間には血の繋がりはないが」
「関羽と劉備と張飛って名前の人がいるんだしおかしくはないんじゃない?なんで三国時代の人の名前にしたのかは分かんないけど」
「ノーヴェは何か知らないか?」
「…知らない」
現在は情報交換中である。
ケンシロウと月火の会話は進んでいくもノーヴェは全く喋らない。
そんな時、ふと月火が声を掛けた。
「ねぇ、ノーヴェさん…だっけ?」
「なんだよ?」
「もしかしてあの白衣の人と関係あったりする?」
「?!!」
ノーヴェからは返答の代わりに大きく体を反応させた。
「なぜそう思う?」
「最初のあの場所であの男を手伝ってた女の人、ウーノって呼ばれてたよね
あとクアットロ、ウェンディ、ノーヴェっていう名前。全部、確か…イタリア語の数字だった気がするの
だから気になって聞いてみたんだけど…」
反応を見れば答えるまでもなく何か知っているだろうことがわかる。
あそこまで反応しては隠し通せないだろう。
観念したかのようにノーヴェは話す。
「…ジェイル・スカリエッティはあたしの父親だ」
ノーヴェは全てを話した。
元の世界では彼の指示で様々な犯罪をやってきたこと。
ある実験を管理局に阻止され、逮捕されたこと。
スカリエッティとクアットロは投獄され、自分とウェンディは更正プログラムを受けることになったこと。
無論この殺し合いについては何も答えられなかったが。
「それで、お前はどうするつもりだ?」
「ドクターになんでこんな事をしたのかを聞きたい。
いままで人殺しの命令なんてしなかったドクターがこんなことをさせる理由を。
殺し合いなんてあたしは嫌だ。
信じられないならこの場で殺してくれてもいい」
ノーヴェは怖かった。
もしかしたらドクターの知り合いというだけで殺し合いに乗ってると思われるのが。
関係者ということで恨みをかうかもしれないということが。
だからばれたときは最悪、死を覚悟していた。
話が終わると、ケンシロウから自分に手が伸びてきて―
ポン
頭の上におかれた。
「え…?」
「よく話してくれた」
「信じてくれるのか?」
「お前の目は人を殺す者の目ではない」
「娘を巻き込むなんて酷い親だね…。私達がちゃんとこらしめてあげるから安心して」
「…ありがとう」
▲
「ルルーシュにシュナイゼルお兄様、コゥお姉様、ナナリーまで…」
ユーフェミア・リ・ブリタニアは名簿を確かめていた。
自分は行政特区日本を設立するためにルルーシュと会って協力を約束した。
その後になぜか記憶の空白があり、そして気が付いたらこんなところへいた。
おそらくその空白の中で連れてこられたのだろう。
コゥお姉様は強いし、ルルーシュやシュナイゼルお兄様ならどうにか生き延びると思う。
でもナナリーは一人で生き延びることは難しいだろう。
そんな時、女の子が二人建物の中に入っていくのが見えた。
ここは殺し合いと言っていた。無用心な行動だろう。
それでも会ってみなければ分からないこともある。
ユーフェミアはその二人を追って走りだした。
▲
「ねえ、ノーヴェさんのお父さんがこんなことやる理由ってわかる?」
「いや、全然。そもそも捕まってるはずのドクターがここにいる理由もわかんねぇ
脱獄したなんてニュース聞いた覚えもないしな…」
「どんな父親だったの?」
「えっと…、何考えてるかはよく分かんないことが多かったなぁ
でもあたし達のことは大事にしてくれてたんだよな…」
現在二人は国際展示場の入り口にいた。
ケンシロウは突如してきた爆音のもとに走っていった。
危険人物がいる場所に月火を連れて行くことへの抵抗から、ある程度戦闘能力のあるノーヴェと共に待つことになったのである。
ノーヴェは自分のことを全て話してからは気が楽になり、色々と会話も進めることができた。
『生命反応感知。誰かが近付いてきます』
「ケンシロウだと早すぎるな…。スバルやウェンディ達とは違うか?」
『どちらでもないですね』
手に持っているのはデイバックを漁っている時に見つけたマッハキャリバーであった。
かつて戦った相手であり、ナンバーズ達とは違う意味での自分の姉妹である存在、スバル・ナカジマのデバイスだ。
「あの…すみま、キャッ!!」
突如ピンクの髪の少女が現れたと思ったらこけた。
見るからに走るには不向きであろうドレスを着ていたので仕方ないことだが。
「大丈夫ですか?」
「痛た…、あ、すみません、車椅子に乗った少女を見かけませんでしたか?!」
「いや、見てないけど。まず落ち着け。あんた、名前は?」
「え?あれ、知りませんか?ユーフェミア・リ・ブリタニアというんですけど…」
「そうか。あたしはノーヴェ」
「私は阿良々木月火。よろしくね。」
「ノーヴェさんに阿良々木月火さんですね。えっと、それでもしよろしければ探すのを手伝っていただけないでしょうか?
ナナリーという名前です」
「いいよ。ケンシロウと合流したら探すのを手伝ってあげる」
「本当ですか!?ありがとうございます!」
ユーフェミアは二人がブリタニアの皇族である自分を知らないことを疑問に思うも、協力者ができたことに安心したことで流していた。
「まあ、こっち来なよ。色々教えてほしいこともあるしさ」
「はい。…ところで、一つよろしいですか?」
「何だ?」
「その、阿良々木月火さんはもしかして日本人ですか?」
「え?うん。そうだけどそれがどうか―――」
▲
「…川か」
ケンシロウは爆発音のした場所へ向かっている途中、ふとそう呟く。
そこには川があった。すでにあの荒野の地では滅多に見る事のできない物。また、所々に生えている植物も見なくなって久しい。
ノーヴェからいわゆる別世界という存在の話を聞いていたためにそこの理解は早かった。
「…む?!」
突如銃声が聞こえた。
二人が待っているはずの国際展示場の近くから。
「まさか…?!」
二人が襲撃された。あるいは近くで誰かが襲われた、あるいは戦っている。
ノーヴェは戦えるといっていたが、それでも安心はできなかった。
自分や兄達の強さを知っていたから。
それに月火には戦うことはできない。襲われたらひとたまりもないだろう。
しかし戻りたい気持ちもあるが、爆発音の方も気がかりだ。
どちらへ向かうべきか。
ケンシロウが出した答えは―――
【E-2/水辺の近く/日中】
【ケンシロウ@北斗の拳】
[状態]: 健康
[服装]:普段着
[装備]:特になし
[道具]:支給品一式、不明支給品1〜3
[方針・思考]
基本:一人でも多くの人を救い、主催者を倒す
1:二人のもとへ戻るか、爆発音の方に向かうか…
2:殺し合いに乗った参加者は倒す
3:ジャギ、ラオウは倒す トキとはできれば合流したい
4:ノーヴェ、月火と合流後は二人の身内を探す
[備考]
※ノーヴェから主催者についてのある程度の情報を得ました。
※月火、ノーヴェの身内の情報を得ました
※参戦時期はトキ死亡後です
※どちらに向かったかは次の書き手にお任せします。
▲
何が起きたのか理解できなかった。
いきなり傘を取り出したと思ったら大きな音が響いた。
それが銃声と気付いた時には月火は倒れていた。腹に多くの穴をあけ、そこから血を流して。
「ごめんなさい、日本人は殺さないといけないの」
月火を撃った張本人、ユーフェミアは言っていたが、ノーヴェの耳には入っていなかった。
その後ユーフェミアが去り、はっと我に返ったノーヴェは慌てて月火に駆け寄る。
「お、おい!月火!!しっかりしろ!!」
月火に声をかけるノーヴェだったが、月火の意識はなかった。
その体に刻まれた多くの銃創、そして辺りに流れる血。生存は絶望的だろう。
「…おい、あいつがどっちにいったか分かるか?」
『東に向けて出て行ったようです。追うのですか?』
「あいつを放っといたらまた誰か殺されるだろう!
もしかしたらウェンディやクア姉、スバル達かもしれねぇ。お前はそれでもいいのか?!」
『分かりました。ですが月火はどうするのですか?』
「ッ…、この傷じゃもう…。月火、すまねぇ!!」
ノーヴェはマッハキャリバーを起動し、飛び出した。
【E-3/国際展示場の近く/日中】
【ノーヴェ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
[状態]:健康
[服装]:ナンバーズの戦闘服
[装備]:マッハキャリバー@魔法少女リリカルなのはStrikerS
[道具]:支給品一式、不明支給品0〜2
[方針・思考]
基本:ドクターに真意を問いたい 殺し合いには乗りたくない
1:ユーフェミアを追う。見つけたらどうするかは追いついて考える
2:ケンシロウと合流する
3:ウェンディとクアットロを探す
[備考]
※本編終了後の参戦です
※月火、ケンシロウの身内の情報を得ました
※リボルバーナックルの有無は次の書き手にお任せします
※阿良々木月火は死んだと思っています
▲
「あら?どうしてここに?」
ユーフェミアは気がつくと国際展示場から離れた場所にいた。
「さっきまでえっと…、ノーヴェさんと月火さんとお話していたはずだったのに…
それに、どうしてこれを…」
その手に持っていたのは一本の傘、に見える一丁のショットガンである。
自身に扱えるものでもなく、この外見では威嚇にもならないと判断し、しまっていたはずの物だ。
なぜこれを持っているのか、そしてこの手の痺れは何なのか。
記憶の空白、それは連れてこられたときの物と似ていた。
「…、で、でも今はナナリーを、みんなを探すのが先。しっかりするのよユフィ」
混乱する彼女は、しかしそれでも歩きだした。
姉や兄、妹を探すために。
己にかかったギアスも、それによって起こした行動にも気付かぬまま。
【E-3/日中】
【ユーフェミア・リ・ブリタニア @コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]:疲労(小)、銃の反動からの腕の痺れ
[服装]:皇族服
[装備]:ロベルタの傘@ブラック・ラグーン
[道具]:支給品一式、不明支給品0〜2
[方針・思考]
基本:兄達やナナリー、コーネリア達みんなでもとの場所へ帰る
1:ナナリー、ルルーシュ、シュナイゼル、コーネリアを探す(ナナリー優先)
2:帰るための仲間を集める
3:殺し合いには乗らない
4:この記憶の空白は一体…
ギアス発動時
基本:日本人を殺す
[備考]
※22話、ルルーシュにギアスをかけられた直後の参戦です
※『日本人を殺せ』というギアスがかかっています
日本人を発見した場合、本来の意思とは無関係に発動します
▲
そして国際展示場に残された阿良々木月火の死骸。いや、彼女はまだ死骸ではなかった。
腹部を撃ち抜かれ、辺りに内臓をぶちまけた状態であったが、それでも生きていた。
もしノーヴェがもう少しこの場にとどまっていれば気づいただろう。徐々に再生していくその傷に。
本人も知らないことだが、阿良々木月火は人間ではない。
兄のように怪異に取り付かれた存在ではなく、怪異そのもの。
しでの鳥、早い話が不死鳥。
それでもこの殺し合いの場において死なない人間はいないだろう。
実際、瞬時に回復するはずの致命傷もこうしてゆっくりと再生している。
果たして彼女は目覚めたときこの事実をどう受け入れるのか、それは彼女次第である。
【E-3/国際展示場入り口/日中】
【阿良々木月火@物語シリーズ】
[状態]:気絶中、腹部に多数の銃創(再生中)
[服装]:着物(銃弾による穴多数、血まみれ)
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、不明支給品1〜3
[方針・思考]
基本:主催者を倒す
1:気絶中
[備考]
※ノーヴェから主催者についてのある程度の情報を得ました。
※ノーヴェ、ケンシロウの身内の情報を得ました
※しでの鳥の制限について
このロワ内では、脳、心臓の損傷、首輪の破壊による傷は再生できない(=死ぬ)とする
また、致命傷の回復速度も抑えられている
【ロベルタの傘@ブラック・ラグーン】
ロベルタが使用していた、ショットガンの仕込まれた傘。
傘の部分は防弾製となっている。
【マッハキャリバー@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
スバル・ナカジマのインテリジェントデバイス。
待機モードは青いクリスタルのネックレスであり、展開するとローラースケートの形になる。
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