Sterilizatioooooooooon!!!






張飛益徳はG−8にて襲撃を受け、逃げ回っていた。



「――いったいなんだってんだあああああああああああああああああああああああああああああ!!!」


――なぜこうなってしまったのか、少し時間を遡ろう。






(俺は確か行軍行動してる最中、暇で暇でおもわず馬上で居眠りしちまったんだ。
それで目が覚めたらスカなんとかいうやつに『殺し合いをしろ』って言われて――。
気づいたらここにいた。)

確かよく分からない場所に見慣れない大勢の人間が集められていたはずだ。
大人から子供、男女問わず。見るからに強そうな奴から明らかに非戦闘員と思われる者までいた気がする。
そして今いるのは


「なんだ夢かよッ!ちッ、昨日の酒が抜けてねぇんだな。……寝るか。」

ありもしない、非現実的な夢。
己の定めた道理に従う次兄や、突飛な言動をする長兄とは違い、無学ながら比較的常識人である張飛はそう断定した。

(ったくふざけ腐った夢見せやがって……なぁにが「殺し合いをしてもらいたい」だよ。
この益徳様に指図できんのは兄貴達だけだってんだ。あのモヤシ野郎偉そうに!)

道端に寝転がり、惰眠を貪る。
さんさんと輝く陽がなんとも暖かく気持ちいい。

(あぁ〜?そういや兵共はどこいったんだ?それに俺ぁ馬に乗ってたはずなんだがなぁ……)

ユサユサ

(もしかしてこれもまた夢か?夢の中で夢見るってのは昔あったがよぅ…)

「ねぇねぇ、起きてよおじさん」

(うるせぇ…なんかうるせぇ…せっかくいい気分で寝れそうだってのに…)

「起きてってば、おじさん」
「だあああああっ!!うるせぇえええ!!!ちっとは寝せやがれッ!!!」

起き上がった張飛の目の前にいたのは黒い服を着た銀髪の、白い肌をした少年だった。
見慣れない人種である。孔明の女に肌が白いのはいた気はするが。

「ねぇねぇ、僕と遊んでよおじさん。僕が鬼だからね、すぐに壊れちゃ嫌だよ?」

何を言っているんだこの餓鬼は――
怒声のひとつでも張り上げて適当に追っ払ってやるかと考えていると、少年が筒を構える。

「じゃ、よーいドンだからね♪」

筒が勢い良く火を吹いた。





時は戻り、張飛は逃げまわる。
あの餓鬼はなんなんだ?なぜ襲ってくる?
まさかあの「殺し合え」ってのは夢じゃなかったのか?

「あはははははははははははははははははははははははははははははははははははっ!!!」

奇声を上げながら、火を吹く筒を持った餓鬼が追ってくる。
最初の火砲はすんでのところでかわしたがケツを火傷した。この痛みは完璧に夢ではない。

「追いかけて来んじゃねええええええええええええこの餓鬼ァああああ!!」

笑いながら追う少年の脚は思った以上に早い。
戦場で慣らし、常に駆け回っていた張飛をピッタリと追走してくる。

「追いかけっこなんだから当然だよ。アハハ、待ってよおじさーん!」
「ついてくんじゃねええええええええええええええええええええええええええええ!!」

唯一の救いはあの火を吹く筒の射程が短いことだ。火炎の射程自体は1mもない。
だがあの炎熱と横薙ぎに焼き払うような動きは恐怖だ。
たまらず張飛はブロック塀の影に飛びこむ。

「かくれんぼがいいのおじさん?いいよ、僕かくれんぼ得意なんだぁ」

張飛の隠れた塀に火炎放射器による攻撃が浴びせかけられる。
反撃しようにも張飛には武器がない。刀も槍も、彼を無敵たらしめる蛇矛もない。

「いい加減出てきてよおじさーん。かくれんぼより追いかけっこがいいなぁ僕」
なんでもいいから武器が欲しい。槍だの刀だの贅沢は言わない。

「――ナメんじゃねぇ…」
長物だ。太く長く重い長物の武器があればそれでいい。
無双の武を振るう張飛の剛腕が血管を浮き上がらせ、植えてあった街路樹、その一本を素手で根本から引きづり出す。

「益徳様を――ナメんじゃねえええええええええええええええええええええええ!!!」

幹を軋ませ街路樹を引き抜いた勢いそのままに、武装と化した樹木を振り抜く。
植えてあった木を引きぬくなんて、そんな馬鹿力の持ち主を見るのは少年も初めてだ。
なんて遊びがいのある人なんだろう――。だがこの大振りな軌道簡単に見切れる。
回避し、樹木ごと火炎放射器で焼き払おうと

――あ、だめだ。石礫が来る。それもたくさん。

「あはっ!すごいやおじさん」
張飛は樹木を振り抜いた際、それまで隠れていたブロック塀をついでに破壊しその破片を浴びせかけた。
炎熱で火鉢のようになったガレキをショットガンの如く撒き散らすそれは完全にはかわしきれない。
左腕で致命傷は防いだけど、火炎放射器を構え直せないや。

「おじさん、次は僕のば――」

痺れの残る左手で火炎放射器を持とうとしたら、今度は樹木がそのまま転がってきた。

「だめだなぁ、せっかくの武器を放り投げちゃうなんて」

ごろごろ転がってくる樹木を踏み台替わりにして高くジャンプする。
うん、骨は折れてない。身体はいつも通り動く。

「ねぇねぇ、次はどんな風に遊んでくれるの?ねぇ、おじさん?」

少年が張飛のいるべき方向を見ると誰もいない。
また隠れてしまったのだろうか。

「あれ、どこ行ったのおじさーん?お願いだから出てきてよー。」

反対を見ても、右と左を見ても、もうおじさんの姿はなかった。

「どこかに隠れちゃったのかな。あはっ、そうかかくれんぼの続きだね。
 じゃあ出てくるまで、またこれで遊ぼうよ」

再び火炎放射器が炎を吹き、舞うように災厄を振りまいていく。
天使と形容される美貌を持った少年が、狂喜とともに。





(あの餓鬼はいったい何だってんだ!?あんなチビッこい癖に、笑って俺を殺しにかかりやがった!
「殺し合い」ってのは夢でもなんでもねぇ現実じゃこりゃ〜〜!!)

張飛益徳は逃げ出していた。恥も外聞もなく、“燕人”と呼ばれた誇りをもかなぐり捨てて。

(ちくしょうっ、わけが分からねぇ!なんで!?この俺が!?しかもあんな餓鬼にぃぃいいい!!
なっさけねええええええええええええええ!!この益徳様ともあろうものがぁぁあああああ!!)

自分の知らない武器、嬉々として殺しに乗る子供、悪夢としか思えない状況。
戦場で数多の兵共を屠り、万人敵とまで恐れられた大豪傑が確かに恐怖した。

(ともかく武器だ。ここが殺し合いの場だっつうなら戦場と同じ。馬と蛇矛がいる。
あんな餓鬼相手に逃げちまったが…素手じゃどうしようもねぇ。)

張飛は走りつづける。未知の恐怖達に背を向けて。
これは逃走ではない、戦場で生き残るための手段に過ぎない。
何も持たず、そう自分に言い聞かせて。


 【E-3/一日目/日中】
 【張飛益徳@蒼天航路】
 [状態]:ケツを火傷、未知の敵にやや恐怖。
 [服装]:軍服(ただしケツの部分丸出し)
 [装備]:なし
 [道具]:なし
 [方針・思考]
基本:向かってくる敵には容赦しない。侠者としての挟持は貫く。
  1:わけが分からねぇ…
  2:とにかく武器が欲しい。できれば蛇矛と軍馬を。
  3:あれ、そういやここどこだ?
 [備考]
  ※ ルールをよく把握していません。名簿も地図も見ていません。
  ※ 参戦時期は関羽の死亡直前です。





「あぁ、追いかけっこだったねそういえば」
炭化した樹木、燃え盛る大地、、張飛を見失ったことに気づいた少年は今更のことのように呟く。

「追いかけっこには負けちゃったけど、楽しかったなぁ。他にもあんな人がたくさんいるのかな?」
でもこの武器は微妙かな。いつもの斧ならもっと遊べたのに…。
次はいい得物を引けるといいな。僕の斧がないってことは、姉様も多分BARを持ってない。
なら姉様の分の武器もあったほうがいいよね。

「――殺そう、みぃんな殺そう。それでたくさん遊ぶんだ」
今度は本当に、本当に楽しい遊び場になりそうだよ。
「そうだよね、姉様……」



 【E-3/一日目/日中】
 【ヘンゼル@ブラック・ラグーン】
 [状態]:左腕部負傷、行動には支障なし
 [服装]:普段着
 [装備]:火炎放射器(残数70%)@北斗の拳
 [道具]:支給品一式、不明支給品0〜2(確認済み)、張飛の支給品1〜3(未確認)
 [方針・思考]
基本:楽しいね、姉様。
  1:また遊ぼうね、おじさん。
  2:色んな人と「遊ぶ」
  3:いつもの斧が欲しい。姉様の分の武器も確保したい。
 [備考]
  ※ 放置された張飛のデイバッグを回収しました。
  ※ しばらくすれば鎮火しますが、E-3の一部で火災が発生しています。


【火炎放射器@北斗の拳】
「汚物は消毒だー!」の名セリフを残した、あのモヒカンが使用していた火炎放射器。
射程は短いが入り組んだ場所(塹壕内、トーチカ内など)の攻撃には威力を発揮する。



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