神か悪魔か!? 地獄にあらわれた最強の男
「全くどういうことなのよこれ」
廃墟となっている街並みの中でつぶやく者があった。
その声の主こそ江東を治める王、孫策である。もっとも彼、いや、彼女は多くの人の知っている孫策とは違うのだが。
「あの白い服の男、妖術使いか何かかしら?」
いままで何度か暗殺されかけた事はあった。
ゆえにその関係と考えることもできたが関羽達やまったく関係なさそうな人間まで連れてここまでのことをやるとは考え難かった。
「蓮華と小蓮までいるのね…。孫一族全員連れてくるなんて…これはまずいわね。
でもなんで関羽達は二つずつ名前があるのかしら?」
劉備に偽者がいたという話は聞いたが関羽達の偽者は聞いたことはなかった。
考えても答えは出ない。こんなときこの場にいない親友が愛おしくなる。
だがやることは決まっている。妹達と共に江東の地へ戻るのだ。
その時、誰かが近くにいるのを感じた。
状況が状況なので慎重にならざるをえない彼女は隠れて辺りをうかがった。
するとあまり離れてもいない場所に大きな男がいた。
それは遠くからでもはっきり分かりそうなほどの体躯と存在感であった。
そして彼女はこれまでの戦場に立ってきた武将としての経験から直感的に悟った。
その男は強い、と。
おそらく部下である思春や明命(甘寧、周泰)といった武将よりも、いや、いままで見てきたどのような武将よりも強いかもしれない。
それと同時に彼女の武人としての血があの男を試してみたくなってしまう。
いままで何度も親友である冥琳に言われてきたことだ。「もっと王としての自覚を持て」と。
この場で死ぬわけにはいかない。妹二人を連れて帰らねばならないのだから。
だからその気持ちを抑え、ここから立ち去ろうとしたときである。
「隠れているのは分かっている。出てきたらどうだ」
(やばっ、気づかれた?!)
この場から離れようとした矢先、そう声をかけられた。
こうなると出て行かないとどうなるか分からない。襲われるかもしれないが背を向けるよりはマシだろう。
「ふん、女か」
出て行ったところそう言って大男は興味を無くしたように歩いていく。
孫策はその反応から分かった。
馬鹿にされているのだ。それも自分が女というだけで。
その地位にいる以上いままで様々な侮辱や軽蔑を受けることはあったが女というだけで馬鹿にされたことなどなかった。
呉を治める王であることを知らないのを差し引いても許せるものではなかった。
「待ちなさい!私は江東の小覇王、孫伯符!!孫一族の誇りを馬鹿にされて黙っているわけにはいかないわ!!
私と戦いなさい!!」
支給された袋に入っていた剣を向けてそう叫んだ。ここで退いてはそれこそ誇りに傷をつけると考えたからだ。
男は歩みを止め、振り返って言った。
「女、お前は北斗七星の脇で輝く蒼星を見たことはあるか?」
「…見たら何だっていうの?」
彼女は死兆星を見ていない。
しかし突然の質問の意図が分からず適当な受け答えをしたことで、男の気を引くことになったことを彼女は知らない。
「よかろう。覇王を名乗る女よ。このラオウが貴様がその名にふさわしい強者か確かめてやろう!」
そう言ってこちらへ歩いてくる男、ラオウに孫策は死の気配を感じずにはいられなかった。
◆
剣を振るったが避けられ、その拳が胸に迫ってきた。
間一髪で直撃は避けるもかすっただけで体に衝撃が来た。
「ぐっ、なんて力なのよ?!」
飛び上がり頭に剣を叩きつけようとすると左腕の籠手に阻まれ、右の拳が胸に叩きこまれる。
血を吐き体は吹き飛ぶ。骨をやられたかもしれない。
拳を振り上げた後ラオウが怪訝そうな表情をしたことに気付く余裕すらなかった。
「はぁ、はぁ…、…せいっ!!」
痛みを抑え立ち上がって突き出した剣はあっさり掴まれ、体ごと放り投げられた。
「っ!!」
廃墟の壁に叩き付けられ、もはや立ち上がることもできなかった。
満身創痍になった孫策に向かってラオウが言う。
「ふん、女にしてはなかなかの腕前だ。
もしこのような場でなければ配下にくわえてやることも考えたものを」
「私はこれでも王なのよ…。あんたの下になんか…付かないわ」
「ほう、抜かしおるわ。ならばこの一撃の下に葬ってやろう」
ゆっくりとラオウが近づいてくる。おそらく止めを刺す気だろう。
(やっぱり冥琳の言うとおりにしたほうが良かったかな…、ごめんね、蓮華、小蓮)
痛みと衝撃からそのまま意識を手放した。
ラオウは止めを刺すために女に近付き、拳を振り上げ―――
「まあ待て」
振り下ろそうとしたところで突如何者かに腕を掴まれた。
「ム?!」
ラオウは声がかけられるまでその男の気配を全く感じなかった。
スーツを着こなし帽子を被るという荒廃した世紀末の世界には珍しい服装の男はラオウに言った。
「気絶している女性にここまでやることはないと思うぞ
見たところあんたもそれなりの武人とみえるが」
「貴様もこの俺を知らぬか。この女は俺に自ら挑んできたのだぞ」
「では代わりに私が相手をしよう。不服か?」
会話している間も、ラオウは男を測っていた。
無造作に立っているだけにも関わらず隙が全くと言ってよいほどなかった。
そしてその佇まいや眼光。
すぐに分かった。この男は強いと。いままで戦った様々な拳士とは違う強さがあると。
「一つ問おう。お前は北斗七星の脇に輝く蒼星を見たことがあるか?」
「いや、見たことはないが?」
「そうか。ではお前と俺はまだ戦う定めではないようだ」
そういって立ち去ろうとするラオウを男は引き止めた。
「待て、あんたからはどうも危険なものを感じる。
放置するにもリスクが高いな。私としてはせめてその拳を封じさせてもらいたい」
本来なら戦う気はなかったがそれでも男は向かってくるという。
この場で死ぬべきでもない男であろうが。
つまり、それはこのラオウと戦い、生き残るということか。ラオウは興味が湧いた。
「ふ、ふははははは!!よかろう!!
俺はラオウ、いずれ天を掴む男よ。貴様はなんという?」
「高槻巌。通りすがりののサラリーマンさ」
名乗りを終えるとラオウは目にも止まらぬほどの拳を繰り出してきた。
巌はその拳を紙一重で避ける。いや、最低限の動きで確実に避けていた。
拳の連打ののちアッパーを放つが、その時には巌はラオウの視界にはいなかった。
巌はラオウも気付かぬうちに背後を取りそのまま決めようとしたが、突如迫ったラオウの蹴りに吹き飛ばされた。
腕を組み、ガードの体制に入ることでダメージは抑えたが衝撃は巌の腕を痺れさせた。
「なるほど、背後を取られた際に無意識に放たれる蹴りか」
「貴様、柔の拳の使い手か?」
「そんな大層なものではないよ。忍術を少々使えるくらいのものだ」
「ならばこれが避けられるか?!北斗剛掌波!!」
次の瞬間、ラオウの手から衝撃波が迸った。
ラオウの圧縮した闘気を放つ北斗剛掌波。
それをかわそうとして巌は気づいた。この位置でかわせば孫策に当たることに。
おそらくこれを狙っていたのだろう。
「くっ!!」
剛掌波が炸裂し、土埃が上がる。だがラオウはそんな中でも気配からどのような結果となったかはできた。
「……逃げたか」
土埃が収まると巌も孫策もその場から消えていた。
ラオウは手加減をしたつもりはなかったが、なぜか剛掌波がいつもほどの破壊力をもたなかった。
おそらくあれで死ぬことはないだろう。
女の秘孔を突いたときといい何か違和感がある。
結局まだその時ではなかったということか。
しかしあの男も情を捨てられぬ者だったのだろう。
あれでは俺に勝つことはできん。
そんなことを考えつつ歩きだそうとして気付いた。
脇腹に刺さっている一本のナイフに。
「ヌ、まさかあの一瞬のうちに…?…ククク」
ナイフを抜きつつラオウは笑う。自分に刃を突き立てた者の存在に。
情に流された男といったのは訂正しよう。
おそらくあの男はこのラオウの行く道において大きな障害となるだろう。弟であるトキやケンシロウのように。
だからこそ、倒しがいがあるというもの。
おそらく聞こえていないだろう相手に向かって叫ぶ。
「フハハハハハ!!高槻巌、また会ったときこそ決着をつけようぞ!!」
◆
「ここまでくれば大丈夫か」
高槻巌は孫策を抱えつつ逃走した。今いる場所は廃墟群の外である。
彼女を衝撃波から守ることを選んだ彼はその背衝撃波をモロに食らってしまった。
結果背広は背中からボロボロになり、その背中からは血が滲み出ていた。
最後に投げたナイフがせめてもの抵抗だったがあれで死ぬほどの男ではないだろう。
ではそこまでしてなぜ彼は彼女を救ったのか?
高槻巌には彼女はこの殺し合いを打破する力になりうる存在と思えた。
彼女の誇り高き精神と自分より強い相手にも逃げずに立ち向かう心が。
彼女一人では小さな物かもしれない。
しかし、そんな小さな力でも集まれば大きな力となるだろう。己の宿命に立ち向かった息子やその友人達のように。
だからこそ死なせるわけにはいかない。
「しかしこのような美女がかの孫策とは…。まあこのことは彼女が目を覚まして聞くとしよう」
やることは決まっている。
目先のこととしてまず彼女の治療を。
そしてこの狂ったゲームを打破するための力を集める。
そして――
「崖…」
この場にいる、力に溺れた自身の弟との決着を。
【Gー6/廃墟群/一日目/日中】
【ラオウ@北斗の拳】
[状態]: 疲労(中)、脇腹に刺し傷
[装備]:特になし
[道具]:支給品一式、不明支給品1〜3 、ナイフ@??
[方針・思考]
基本:世紀末覇者として覇道を進む
1:高槻巌のような強者と戦う
2:ケンシロウ、トキ、高槻巌とはいずれ決着をつける
3:弱者は相手にしないが向かってくるなら容赦はしない
4:白衣の男はいずれ殺す
[備考]
※トキとの決戦以前からの参戦です
※制限に気付いてませんが、違和感は感じています
【Gー6/一日目/日中】
【孫策(雪蓮)@真・恋姫†無双】
[状態]: 気絶中、肋骨骨折、全身打撲、疲労(大)
[装備]:ゼロの剣@コードギアス 反逆のルルーシュ
[道具]:支給品一式、不明支給品0〜2(確認済み)
[方針・思考]
基本:妹達との帰還 殺し合いには乗らない
1: 気絶中
2: 蓮華、小蓮を探す
[備考]
※参戦時期は劉備のことを知ってる時期です
【高槻巌@ARMS】
[状態]: 疲労(中)、両腕に痺れ、背中に裂傷
[服装]:背広(背中がボロボロ)、帽子
[装備]:特になし
[道具]:支給品一式、不明支給品0〜2(確認済み)
[方針・思考]
基本:この殺し合いの打破
1:孫策の治療、目を覚ましたら話を聞く
2:ゲームに抗う者を助ける 戦えない者は保護する
3:危険人物の無力化、場合によっては殺害
4:弟、崖とケリをつける
【ゼロの剣@コードギアス 反逆のルルーシュ】
ゼロ(スザク)がルルーシュを殺した時に使用した剣。装飾以外は普通の両刃剣である。
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