世紀末という名の乱世
『今、われら兄弟の夢を不滅とする!!』
これが自らの、この関羽雲長の今際の言葉であったはずだ。
孫仲謀に断ち切られたはずの首をなでる。
「夢……か……。」
あの戦いが、自らの死が夢でなければ今の私はなんなのだろうか。
ここがあの世で地獄ならば、この戦ですらない殺し合いにも納得がいく。
だがこの冷たい銀色の首輪の感触が、力強く鼓動する心の臓が、私が未だ生きながらえていることを教えてくれる。
スカリエッティと名乗る男の言葉を思い出す。
『君たちには最後の一組になるまで殺し合いをしてもらう。 』
『無理やり首輪を外そうとした場合、24時間死者がでなかった場合首輪を爆破させてもらう。』
この首輪には怪しげな術がかけられているのか、男の定めた規則に反すれば爆破されるということは理解した。
だが組とは?
手頃な岩に腰掛け、傍らにあった包みの封を解く。
見慣れぬ包みで開け方にしばし苦戦したが、どうやら金属製のつまみを引けば開く仕掛けになっているらしい。
まず包みから出てきたのは…青龍が刻まれた偃月刀。
だがこれは私が愛用していた青龍偃月刀ではない。装飾等に若干の差異がある。
しかしこの重さ、刃の煌き、間違いなく業物だ。
使い慣れた武具が支給されたのは光明だろう。あとは軍馬でもあれば文句はない。
包みの中をあさり、次に名簿を見つけ目を通すと見慣れぬ名前が続く。
高坂京介(コウハンケイカイ)?というおかしな名前の者に…ルルーシュ・ランペルージ?異国の者であろうか?
さらに読み進めると我が義兄と義弟の名もあった。
私が組を組むならば同じく荊州に滞在していた関平、王甫を予想していたのだがこう来るか。
漢中にいるはずの長兄らをさらい、さらに幻影などの人外の術を使う…あのスカリエッティという男、仙人か方士の類としか思えぬ。
よくよく読めば我ら義兄弟の名だけなぜか二度に渡り記入されている。
私の名を騙る偽物か?それともただ偶然同じ名の者が参加していたというのか?
字が付いているか否かの違いはあるが…。
だが次に目に入った者の名でそのような疑問は吹き飛んだ。
「孫仲謀……!!」
曹操と結託し盟約を破り、私が守護する荊州を踏み荒らした孫呉の主!
荊州は劉備玄徳が劉表一族より託された領土であり、孫呉に主権が移ったことは一度もない。
『 関羽軍は孫呉との盟約を侵し、国境の食料庫を強奪した。よって荊州南郡の貸与を無効とし、呉の領土に戻す 』
だが盟を破ったのは4年前の呂蒙の侵攻が先である。
盟とは、人と人が己の本体をあきらかにし、天神に誓って結ぶもの。関羽はそう信じていた。
だが孫権は、その盟(ちか)いを詭弁で汚し戦いの具とした上、姑息にも背後を忍び侵した。
孫仲謀に、義なく、実なく、心(しん)なし。およそ民の上に立つものにあらず。−関羽はそう断じていた。
▼ ▼ ▼
「おい、おまえ! おれの名をいってみろ!!」
「ヒィ……!やっ、助けっ……!」
「おれの名前を言えっていってんだよ!!」
胸に七つの傷を持つ男、ジャギが少女に幾度目かの平手を振るう。
度重なる暴行により顔を腫れ上がした少女が吹き飛び、土の上にゴロゴロと転がっていく。
立つことのできない足を引きずり、両手で必死に這って暴漢から逃げようとする少女。
ジャギは面倒そうに首を回すと、這いずって逃げようとする少女の栗色の髪をつかみ引き上げる。
「おまえおれの胸の傷を見ても誰かわからねぇのか?」
「ご、ごめんなさい!ごめんなさい!知りません!知らないんです!」
少女はただただ涙を流しジャギに許しを乞う。
自分が殺生与奪を握る、自身だけが絶対強者の世界。
ああ、これで少しはスッとするぜ!おれを散々コケにしてくれた一番下の未熟者、ケンシロウ!
おれや兄者らをさしおいて伝承者に選ばれた、おれより劣るケンシロウ!
そしてこの顔の傷の痛み……!!
おれは許さねえ! 認めねえ!復讐してやる 必ず奴に復讐してやる!
「ならよく覚えておくんだな〜〜!おれの名は『ケンシロウ』!!北斗神拳伝承者『ケンシロウ』だ〜〜!フフフ……ハーーーハハハハッ!!ヒャーーーヒャッヒャヒャヒャ!!」
手にしたボウガンの銃把でもう一度殴りつけ、少女が何度か跳ねながら無様に吹き飛んでいくのを確認すると荒野に悪しき笑いが響く。
この殺し合いのゲームも、文明が崩壊した世紀末の世界も変わらない。
弱者は虐げられ強者は笑う。力こそが正義の世界だ!!
ジャギは気付かなかった。足元に転がる少女の姿に、その所業に打ち震える身の丈八尺を超える大男に。
少女という弱者を痛ぶり、一時的とはいえここが殺し合いの場であるということを失念し、自身を狩る側と確信していたジャギには無理からぬことなのだが。
「――いかな、いかな乱世であれ、」
「あ゛あ゛ぁ〜〜〜ん?」
少女を護るように立ちはだかり、
至福のときに水をさす邪魔者を睨みつけるジャギに、
関羽は咆哮した。
「この邪(よこしま)な所業を罷(まか)り通すこと、関雲長が許さぬッ!!」
怒り。
ただひとつその感情だけが関羽を支配していた。
盟を汚した孫権に、兄弟や自身を弄ぶスカリエッティに。
そして今、女子供という弱者を嬲る卑劣漢への義憤が爆発した。
「……てめぇに許す許さねぇと言われる筋合いなんかねぇんだがな〜〜。うるせぇんだよ髭野郎!!」
ジャギがボウガンを構えすぐさま発射する。
この距離ならやつの薙刀よりおれのボウガンの方が早い!
「へっ……?」
だがジャギがボウガンの引き金を引いたとき、すでに銃身から先がスッパリ消え失せていた。
それに気づきすぐさま使い物にならなくなったボウガンを捨て構えをとる。
ただのデクの棒だと思っていたが、この髭野郎に対する認識を改める必要がある。
この男は達人だ。それも世紀末以前の、平和な世界で達人と呼ばれた人間たちとはレベルが違う。
だが北斗神拳を習得し、南斗聖拳でさえ使える俺の敵ではない。
必殺の攻撃を見舞うべく、拳法の間合いへと踏み込もうとするが
「っ!!」
斬られる!
半歩でも踏み込めば即座にやつの劍戟が飛ぶ!
お互い構え対峙し、膠着状態の中ジャギは考える。
どうする?ここで殺すか?
……だが待てよ?ケンシロウの名と悪行はあの餓鬼に覚えこませた。
もし髭野郎がケンシロウとぶつかれば、どちらが勝つかは知らぬが確実に生き残ったほうはダメージを受けるはずだ。
思い出せ、俺の本来の目的はケンシロウの野郎に復讐することだ!
ここでこんな髭野郎相手に無駄な体力を消耗することもあるまい。
「クク……今回は見逃してやる髭野郎。俺の名は『ケンシロウ』!覚えておけ!!」
そう言い残し、ジャギは驚異的な跳躍を見せその場から去っていった。
胸に七つの傷を持つ男、ケンシロウ……奴の名は覚えておく必要があるだろう。
流れるような構えにあの跳躍力。卑劣漢ではあるが一端の武芸者であることが伺いしれる。
「退いたか……奴もいずれ必ずや青龍偃月刀の錆にせねばなるまい。」
矛を収め、背後でぐったりと倒れ伏す少女に目を向ける。
天下万民のため、弱き民草を守るため我らは立ち上がった。
弱者が虐げられる世を平定するために。
それはここでも変わらない。
「狼藉を働く者を、不義の輩を討つため、俺は立ち上がろう。ここが地獄であろうとそれが閻魔の所業であろうと、決して俺が許さぬ。」
少女を抱え、義侠の積乱雲は天に盟(ちか)う。
前将軍関羽雲長ではなく、美髯団の頭目であった侠の人、関羽雲長として。
【C-4/一日目/日中】
【関羽雲長@蒼天航路】
[状態]:健康
[服装]:軍装(樊城戦での服装を参照)
[装備]:青龍偃月刀@真・恋姫†無双
[道具]:支給品一式、不明支給品1〜2(未確認)
[方針・思考]
基本:弱者を虐げる不義の輩を抹殺する。スカリエッティも殺す。
1:この娘を治療する。
2:劉備玄徳、張飛益徳との合流。
3:孫家に連なることごとくを滅ぼす。
[備考]
※ 参戦時期は死亡後です。
※ 名簿を確認しました。孫策、孫権、孫尚香が別人であるということに気づいていません。
※ ケンシロウ(ジャギ)を危険人物と認識しました。
【ナナリー・ヴィ・ブリタニア@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]:気絶。暴行を受けてはいるが軽傷。
[服装]:皇族服
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、不明支給品1〜3(未確認)
[方針・思考]
基本:???
[備考]
※ 参戦時期は次の書き手にお任せします。
※ ケンシロウ(ジャギ)を危険人物と認識しました。
【C-4/一日目/日中】
【ジャギ@北斗の拳】
[状態]:健康
[服装]:トゲ付きパッドのジャケット
[装備]:ジャギのヘルメット
[道具]:支給品一式、不明支給品1〜2(本人確認済み)
[方針・思考]
基本:どんな手段を使ってでも優勝し、俺が真の北斗神拳伝承者となってやる!
1:邪魔者は容赦無く殺す。利用出来るものは利用する。
2:ケンシロウの名を騙り悪評を振り撒き、必ずやケンシロウに積年の恨みを晴らす。
※ 髭野郎(関羽)を強敵と認識しました。
※ C-4に壊れたマミヤのボウガンが落ちました。
※ ボウガンの矢(19本)を持っています。
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