蜂合わせる前に撃墜






「…一体なにがどうなってるんだ」

胸に赤いRという文字が印されている特徴的な服装に身を包んだ青年―コジロウはそう呟く。
いつも通りの反省会を終え、眠りについて目を覚ましてみたらこんなことに巻き込まれていた。
正直、声がどうの、殺し合いがどうのなど、よくわからないことだらけだ。
首輪が爆発というのも物騒な話だ。他人のポケモンを強奪する彼らではあるが、さすがに人を殺してまで強奪などはしない。
そもそもいつも一緒に行動を共にしているムサシ、ニャースは何処だ?
自分だけがこのような事態に巻き込まれてしまったのだろうか。

「あいつらがいたら心強いんだけどな」

だが彼らがこのような事態に巻き込まれていないに越したことはない。
自分だってロケット団の団員だ。彼らなしでもなんとかしなくては。…何をなんとかしなくちゃいけないのかはよくわからないが。
とりあえず彼は状況確認をしてみることにした。

「俺のモンスターボールがねえ!」

数分後、自然公園で絶叫する彼がいた。

(なんでだ!?まさか盗られたのか?)

普段盗みを働く彼が逆に盗まれただなんて、笑い話にもならない。
とりあえず辺りを見渡してみたが、デイバックを除いて、石くらいしか転がってなかった。

(デイバックの中はどうだ!)
と思って、確認してみたものの中に入っていたのはモンスターボールではなかった。
(がっくし…とはいえ、ポケモンに頼れない現状はこの支給品とやらが頼りか…)

そうしてコジロウはそれらの検分に入ることにした。

●●●

「ぶーーん、なんだか妙なことに巻き込まれたんだぶーん」
緑色の蜂はそう呟いた。
蜂が言葉を話す点も驚愕するところではあるが、さらに驚くことにその蜂は人と同程度の大きさでもあった。
というより彼は蜂ではない。トランスフォーマーという別の宇宙からやってきた生命体なのだ。
きちんとその首にも首輪がついていることも、彼がこの殺し合いに巻き込まれたということを証明している。

「ぶうん?ナビ子ちゃんとも通信できないし、本格的にお手上げだぶん」
蜂―ワスピーター―はそう言いながら、飛行を続けていた。
空を飛べば帰る場所も見つかるのではないかと、考えていたのだが、どうやらここは自分がいた場所とは本格的に違うようである。
何より建物がそこいらに連なっているあたり、明らかに惑星エネルゴアよりも文明が進んでいる。
もっとも惑星エネルゴア=400万年前の地球なのだから、文明の進みようは当然なのだが。


「ぶん?なんだか疲れてきたぶん?一旦降りて一休みしよーっと」

ここに来てから彼は疲れを覚え始めた。
本来なら飛ぶのをやめようと思うまで飛び続けることができるのだが、ここでは一定時間以上空を飛び続けることができないように制限がかけられているようだ。
彼はそのことを知らないが、さすがに疲れを覚え始めたので、一旦地上に降りることにした。

瞬間、彼は撃ち落とされた。

●●●

話はコジロウが支給品を検分してた時に戻る。
彼の支給品には自分の手持ちのポケモンはいなかった。
だがそれでもなお目を引く支給品があった。はじめは火の石かと思ったがどうも違うらしい。
エイジャの赤石と呼ばれるそれは、わずかな光でもレーザーにして放射するらしい。
正直眉唾ではあったが、実際にそうなら丸腰の自分には十分すぎる兵器だろう。

彼はそれを検証してみることにした。
幸いなことに手元に光源はあった。一緒にライトも支給されていたのだ。
地上に向けて照射して、誰かがいたら大変なので、赤石を木に設置した後、懐中電灯の光を上空に照射してみた。


結果は驚くべきものであった。なんと本当にレーザーを照射したのである。
ポケモンが手元に戻るまでの武器にしては十分すぎるほどだ。
それにこれは傍目に見ても赤い石にしか見えない。とても武器だとは思わないだろう。

そんなことを考えていた時、病院の方向から轟音が響いてきた。

「…なんかやばそうだな」

あの轟音の正体がなんなのかはわからないが、あの場に近づくことはとてつもなく危険だろうとはわかる。
いかにこの赤石が武器として使えるのだとしても、危険地帯に望んで近づくことはない。
コジロウはこの場を離れることにした。

結局彼は気づくことはなかった。上空で何者かにレーザーが直撃した事実に。

【1日目/深夜/C-6 自然公園】
【コジロウ@ポケットモンスター】
【状態】健康
【所持品】基本支給品一式、エイジャの赤石、懐中電灯、ランダム支給品0〜1
【思考】
基本:この殺し合いから脱出する。
 1:病院から離れる。
 2:自分の手持ちポケモンを取り戻す。
【備考】
※参戦時期はBW以前の参戦です。

●●●

「うわあああ!やられたああ」

そう言ってワスピーターは湖付近へと墜落した。
湖自体に墜落しなかったのは、泳げない彼にとっては幸運と言えるだろう。
レーザーが掠めただけだったのもまた幸運だった。
だが地面にダイレクトに激突した衝撃があまりにも大きかったのか、羽がとれていた。

「いたいいたい!ぶーん、なんで毎回こんな酷い目にあわなくちゃいけないんだぶーん!
 ワスピーター変身!」

そうして彼はロボットモードに変形した。
彼が変形したのは羽を身体に付け直すためである。
羽を身体に装着させると、ぎこちないが動くようになった。

普通そんなことで治るはずがないのだが、彼は首以外のパーツが粉みじんにされても、自力で元通りになれるくらい破壊されることに耐性があった。

「ぶーん、なんだか身体が壊されることに慣れかけている自分が怖いぶん」

ついでに首元に触れてみる。
そこにはあの視聴者の宣言通り、首輪がついていた。

「ぶーん、変身すれば取れるかと思ったけど、そういうわけではないみたい?」

なんだか虫から人型に変形した際に、首輪も変形したようだ。
これは外すのにかなり難儀しそうである。

「でもぼくちゃん頭使うの上手くないから、そこらへん頭がいいやつに任されるぶん」

そう呟いて彼は湖から離れていった。
さっきの墜落音で誰かしらに気づかれた可能性がある。
自分の弱さを自覚している彼は、誰かが来る前に退散することにした。


三分後。


変形制限にひっかかったため、首輪から高圧電流が流される中、必死でビーストモードに変形するのはワスピーターの姿があった。

【1日目/深夜/A-7 湖付近】
【ワスピーター@超ロボット生命体トランスフォーマー ビーストウォーズメタルス】
【状態】羽に傷、身体全体に落下痕
【所持品】基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
【思考】
基本:とりあえずこの場から基地に帰る
 1:ぶーん、まだびりびりするぶん。
 2:とりあえず湖から離れるぶーん。
【備考】
※原始人たちの王になる前からの参戦です。
※三分以上ロボットモードに変形していると、首輪から高圧電流が流されます。
※それ以外の制限に関しては後続に任せます。



前話   目次   次話