人造人間、地獄より来る。
「殺し合いか・・・」
都会から遠く離れた離島に一人佇む彼はそう呟いた。
彼の名前はセル。科学者ドクター・ゲロによって生み出された人造人間だ。
彼自身は自ら開いた「セルゲーム」において、孫悟飯によって倒されたはずだった。
しかし、次に目を開けた時そこに広がっていたのは見知らぬ空間だった。
辺りを見渡すと、自分と同じくこの場に何らかの形で召喚されたのであろう人間達がいた。
そして響き渡る声。
「君達は自分の声が、まさか自分だけのものだなんて思っているんじゃないだろうね?
いや、確かに君達の常識ならそうなんだろう。でも違う。本当は君と同じ声なんていくらでもいるんだから」
――自分の声が自分だけのもの?何を言っているかさっぱり分からない。
「そんなたくさんいる声の中から選ばれたんだから、君達はきっとその声に相応しいと思われるような人間なんだろうね。
いや、失礼。もしかしたら人間でないのもいるかもしれないね」
――人間でないものもいる。ここは何となく分かった。元の世界での人造人間達のようなものも中にはいると言う事だ。
問題なのは、何故自分達をこの空間に呼び寄せたかだ。何かしらの理由はあるだろうと考えたが、セルの思考は次の一言でプツリと切られた。
「君達にはこれから、殺し合いをしてもらおうと思う」
――殺し合い。それはセルからすれば望んでいた答えの一つであった。自分は孫悟空を初めに、多くの武道家達の遺伝子から創り出された存在だ。周りにいる人間達がどのような力を持っているかは知らないが、負ける気は微塵もしなかった。
そして、気がついたらこの離島にいたというわけだ。ふと見てみると、首に金属質の物が付いていた。
「ちなみに、逃げようとしても無駄だよ?君達には首輪を付けさせてもらうからね。逃げようとするならボン!さ」
――意識を失う前、自らを『視聴者』と名乗る男がそう言っていた記憶がある。
力ずくで外そうとしたが、そこでセルは考えた。
(この首輪を外すのは容易い事だ。万一爆発したところで再生すれば問題は無い。
だが他の連中はともかく、認めたくないが死亡した私までもあの空間に呼び寄せた事を考えると、
あの『視聴者』とかいう奴はかなりの力を持っているはずだ。)
この点でセルは『視聴者』に興味を持ったが、それと共に自身を縛る彼らに怒りを感じえなかった。
「フフ・・・。良いだろう。視聴者とやら、この殺し合いに乗らせてもらうぞ。
だが、勘違いはするなよ。最後は必ずお前の命を貰っていくぞ。」
――自らの強さを証明する為。
――まだ見ぬ戦士と戦う為。
――来るべき『視聴者』との戦いに供え、力をつける為。
――そして何よりも、あの時の敗北が間違いである事を証明する為。セルは離島から飛び立った。
(北と西の方角に気が集まっているな・・・。恐らく私以外の参加者はそちらに固まっているようだ。
ならばそちらに向かうか。それに、パワーはあの時と全く変わっていない。寧ろ、更に強化されたように感じられるぞ。
これもサイヤ人の能力だというのか。私を生み出したドクター・ゲロには感謝せねばならんな。)
「待っていろよ参加者!お前達の力がこの私、セルと戦うに値するか見せてもらうぞ!」
「―っはっはっはっはっはっは!!」
地獄より舞い戻ってきた、究極生命体セル。
この殺し合いで彼は何を得るのだろうか。殺し合いの果てに何があるのだろうか。
それは彼を呼び寄せた『視聴者』にも、セル自身にも分からない。
ただ、彼の目には強大な自信を感じられた。
――地球育ちのサイヤ人孫悟空。サイヤ人の王子べジータ。大魔王の息子ピッコロ。宇宙の帝王フリーザ。
これだけの力を持った自分が、何処の誰とも分からない連中にそう簡単に負けるはずが無い。
そんな絶対的な自信で満ち溢れていた。
【1日目/深夜/G-7】
【セル@若本規夫/ドラゴンボールZ】
【状態】健康
【所持品】基本支給品、ランダム支給品1〜3
【思考】
基本:殺し合いに乗る。いずれは『視聴者』も殺す。
1:ウォーミングアップの相手を探す。
【備考】
※死亡後からの参戦です
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