強敵(とも)の死、そして…
播磨は走った。
閃光弾のおかげでかなり時間稼ぎができたと思うが油断は出来ない。
何しろ相手は銃を持っているのだ。
とにかく遠くへ、出来るだけ遠くへ。
播磨は走り続けた。
「ゼエッ、ゼエ…。ここまで来れば大丈夫か?」
しばらく走った後、播磨は足を止めてその場に座り込む。疲労はピークに達していた。
空は夕方から夜に変わろうとしている。
「天満ちゃん…どこにいるんだ…」
播磨がそんな事を考えながら空を見上げた時だ。
突然、矢神高校と同じであろう、聞き慣れたチャイム音が鳴り響いた。
「――――こんばんわ、加藤だ。」
聞こえてくるのは、2−Dの担任であり主催者の一人でもある加藤の声。
「お待ちかねの死亡者と禁止エリアの発表だ。一度しか言わないからよく聞いて欲しい。
男子20番 天王寺 昇、男子4番 梅津 茂雄、女子13番 永山 朱鷺、男子18番 飯合 祐次、男子16番 坊乃岬 大和、
女子18番 寄留野 香織、男子19番 吉田山 次郎、男子12番 野呂木 光晴、これで残りは33名だ。
続いて禁止エリアだ。19時に…」
一通り必要事項が述べられた所で、放送は途切れた。
「天満ちゃんは…無事か。良かった…。」
死亡者の中に天満の名前が無かった事に播磨は安堵する。
だがいくらそれ程親しくないとはいえ、既に8名の人物が殺されてしまった事はやはりショックだった。
特に一人の人物の名前が、播磨に少なからず打撃を与えた。
「天王寺…。死んだのかよ、お前…。」
天王寺 昇。
幾度と無く播磨とやり合ってきたライバルだった。
「何やってんだよ…。やられてもやられても食い下がってくるしつこさが、お前の持ち味だったじゃねえか。」
悪態をつくが、彼の死を自分が悲しんでいる事には気付いていた。
「ケッ、天満ちゃんは俺が守ってやるよ。安心してあの世に行くんだな。」
その後、先程呼ばれた人物の中で、もう一人知り合いっぽい名前があった事を思い出す。
「ヨシダヤマ?…いや、あいつは確か吉田だから人違いか…。ややこしい名前だぜ。」
よく自分に絡んでくる金髪トンガリ頭の少年を思い出すが、悲しいかな播磨は吉田山の本名を知らなかった。
しばらくそのまま休憩し、多少足の疲れも取れてきたので再び播磨は行動を開始する事にした。
地図を見ると、東に村が見える。
「村か…。もしかしたら天満ちゃんもそこにいるかもしれねえな。っと、その前に…」
この服についた血を流さなければ。
臭いとかも気になるが、何よりこれじゃあ村で誰かに会えても、殺人鬼を勘違いされる恐れがある。
多少感じてはいたが、自分は少々他人から誤解されやすいような気がするし…。
「逃げてる途中に川があったけど…今戻るのは危険だしな。しゃーねえ、海で流していくか。」
それから、と播磨は自分で付け足す。
「サングラスは外しておくか…」
先程斉藤と鬼怒川に襲われたのは、サングラスのせいで視界が効かずに発見が遅れたためだ。
明るくなるまではサングラスは外しておくことにした。
よっこらせと腰を上げると、播磨は北へ走りだした。
…だが、彼は気付いていなかった。
サングラス無しで彼を播磨だと認識できる人物は、非常に少ないであろうという事を。
【播磨拳児】
【現在位置:C-02】
[状態]:健康、疲労は多少回復
[道具]:支給品一式(水と食料二人分)、アイテム不明×1
[行動方針] :1.天満を捜すために鎌石村へ移動 2.沢近の誤解を解く 3.B-02の海岸で血を落とす
[備考]:サングラスを外しています。吉田山が死んだとは思っていません。
【午後:18〜20時】
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