Solitude
「あーあ、何で誰もいないんだ!?」
小さな川に架かった橋の上で周防美琴は頭を抱えた。
すでにこのゲームが開始されてから数時間あまりが経過していたが、彼女は未だに誰とも会えずにいた。
この島は冬にしては暖かかったようだが、小川には魚や蛙といった生物の気配が微塵も感じられない。
これまで随分とそんな川を眺めていた周防だったが、あまりの寂しさにとうとう限界が来てしまった。
「大体さ、こんなでかい銃を私に配ってどうしろってんだよ…」
120cmはあろうかという銃を抱える周防。数ヶ月前にやったサバイバルゲームと比べ、かなりの重量だ。
とはいえ、普段から武道で鍛えていた彼女なら構える事自体はそう難しい事ではなかった。
「いや、格好だけなら私でもつけられるけどさ、こんなの晶とかじゃないと使えないじゃん!」
普段に比べ明らかに彼女の独り言は増えていた。ゲームに対する不安や恐怖が今まで彼女一人の中で反復した結果だった。
「はあ…天満はきっとこのやばい状況を分かってないんだろうな…沢近は…あいつも結構弱いしなあ…
晶は…逆に危ないな、あいつは。花井はきっと自分がやらなきゃって張り切ってんだろうし、麻生は…」
気付けば、涙が頬を伝っていた。周防は気が強い方だったが、結局は女の子。この異常な状況下で正常でいられる方がおかしい。
会いたい。誰かに会いたい。
他の参加者達は、或いはすでにまともな精神状態ではなくなり、或いは他の級友と再会する事でゲームに立ち向かっていた。
だが周防は、精神が壊れなかったばかりにゲームを受け入れられず、かといって今の孤独にも耐えられなかった。
「…そうだ、もっと南に行ってみよう。さすがに誰かいるよな…」
涙を拭いて、それでも真っ赤に充血した目を潤ませながら周防は歩き始めた。
あまりに大きすぎて、一度出したきりリュックになおせなくなった銃を抱えて。
だが、彼女の孤独はもうしばらく続く事となる…
【周防美琴】
【現在位置:D-03】
[状態]:健康
[道具]:支給品一式、ドラグノフ狙撃銃(残弾10発)
[行動方針] :誰か探す為に南下
【午後:14〜16時】
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