第七回放送
赤みがかった東の空を背景に、学校のチャイムが鳴り響いた。
「おはよう、郡山だ。まずは死亡者から発表する。
女子17番 雪野 美奈
女子20番 塚本 八雲
女子 7番 沢近 愛理
以上3名じゃ。
禁止エリアは7時にF-03、9時にG-02、11時にF-04が対象となる。
これで終わりじゃ……しっかりな!」
先日の放送とはうって変わって、静かな放送はあっという間に終わった。
「お疲れ様でした、郡山先生!」
「は、はい……」
前回郡山が放送を行ったときとは違い、姉ヶ崎は実に満面の笑みを浮かべて彼を出迎えた。
彼は加藤が裏切り者として事実上処刑され、更に笹倉も死んだ事で早くも二回目となる放送を行う事になったのだ。
しかし、その内容は今までのように、あれこれと考えられて作られた物ではなかった。
ただ放送の義務である、死者の名と禁止エリアの名を告げるだけの、本当に最低限の事だけをクリアーしたもの。
それは、このゲームに抵抗したくても何も出来ない男のささやかな足掻きのつもりだった。
「うふふ……それにしても、笹倉先生も可哀想でしたね。結局沢近さんに信用して貰えなくて!」
……今までで一番の笑みを姉ヶ崎が浮かべている理由は、郡山には分かっていた。
笹倉が死んだ……いや、殺された。生徒達の戦いを止めようとしたにも関わらず、彼女はその助けようとした生徒達に殺されたのだ。
笹倉が死んだ直後、姉ヶ崎は腹を抱えて笑っていた。
何せ姉ヶ崎はつい数時間前に刑部達に告げたとおり、彼女達の努力が無駄になる事を望んでいたのだから。
三人だけの管理室は実に寂しいものがあった。
その中でも姉ヶ崎は子供のような笑顔を浮かべ、谷はそれに相槌を打つ。
一方の郡山といえば、やはり同じ笑顔を向けられてもただ頭を下げ、ひたすら相手のご機嫌を伺うばかりだった。
何も出来ない無念。それを郡山は、場所こそ違えど刑部や笹倉のそれと共感できた気がしていた。
最も、実際には自分が彼女達以下……いよいよ何も出来ない真の無力である事も、また感じてはいたのだが。
こうしてこの島は、二度目の朝日を迎え入れようとしていた。
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