美酒






「やってられねぇよ・・・何でオレ様がこんな目に・・・」
絶壁の縁に座り、男は溜息混じりに呟くと、震える肩を自分で抱きしめた。
きっと王様などと呼ばれて好い気になっていた天罰なんだろうが、
書き手でもない文句を言うだけの読み専の自分が参加されられたのは納得がいかなかった。

「同感ですね。私もこんな目に遭うのは不本意ですよ」
妙に落ち着き払った男が、王様の後ろから現れる。
「だ、誰だ!」
「私が誰かなんていいじゃないですか。貴方と同じ、今の境遇に腹を立ててる者ですよ」
男は慇懃に言うと王様の隣に座り込んだ。

「いやぁ参りましたねぇ。まさか自分達がロワをやる破目になるとは」
馴れ馴れしい男の態度に王様は気分を害する。
「おい、お前は池沼か?オレ様はお前のような愚民が話しかけていい身分では無いぞ。
 どこの誰だか知らないが、オレ様が本気で怒る前にさっさと失せるんだな」
凄みを利かせて男を睨む。だが、男は平然として王様の視線を流してしまう。
「おやおや、これはご挨拶ですね。せっかく王様に会いに来たというのに」
「な・・・貴様、このオレ様が誰かと知っての狼藉か?!」
「ええ、もちろん。最初に殺すなら貴方と決めていました」
男の不遜な態度に、王様は弾ける様に立ち上がると、持っていた警棒で男の頭をしたたかに殴りつけた。
――――いや、殴りつけたかに見えた。




王様の身体が大きく崩れた。
「き、貴様ァ・・・よくも高貴なこのオレ様の身体に・・・傷を・・・つけ・・・て・・・・・・」
そこまで言うのが精一杯で王様は仰向けに倒れた。
王様の腹には怪しく光る日本刀が突き立っていた。
「私を虚仮にしてくれた罰ですよ。死をもって償うといい。貴方には無様な死がお似合いだ」
男は王様を見下ろして満足そうだった。
「お、お前は一体・・・・・・」
「私ですか?私は貴方が散々粘着してくれたSSの作者ですよ。ルーキーと覚えていただきたい。
 もっとも、もはや貴方が覚えてられることは無いですがね」
ルーキーは王様の腹に突き立った日本刀を抜くと、何度も何度も王様に振り下ろした。

もう二度と動く事の無くなった王様。その亡骸の横に放心して佇むルーキー。
彼は何を想うのだろうか。
その表情からは、恍惚とした笑みがこぼれていた。



【ルーキー/A1/一日目1:00】
【荷物】日本刀
【状態】殺しに酔っている
【思考】1:殺戮の限りを尽くす

【王様@DQN 死亡】
【残り26人】




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