一つの決意






銃を突きつけ、男は何かにイラついていた。
そして銃を突きつけられた男は、苦悶の表情を浮かべていた。

早速だが、この状態に至るまでに少しばかり激しい殺陣があったので話しておこう。


数分前。
SRSは森の中を歩いていた。まっすぐに、舌打ちをしながら。
彼はラジオのMCだ。エンターテイナーだ。
人を喜ばせる事こそ我が喜び、聞き入る者こそ美しい。

自分は死ぬわけには行かない。
こんなところで死んで、ラジオが出来なくなる事だけは避けたい。
自分の生きがいをつぶされるわけには行かないのだ。

支給品のショットガンを構え、警戒しながら歩く。
その時、ガサガサという音が草むらから聞こえた。まっすぐこちらに向かってくる、速い。
確実にこちらに向かっている。どうするべきか迷っている間に、草むらから男が姿を現した。

「ぅおらぁああぁぁあぁぁあぁ!!」
「くっそッッ!!」

男が持つはナイフ。それがSRSに振り下ろされる。
しかし彼は長いショットガンのボディで、男の頭を反射的に殴って反撃を与えた。
ナイフの攻撃範囲外から、長い銃身があっけなく男を襲う。これは男には予想外。
その行動に対応し切れなかった男は、ナイフを手から落としながらその場に倒れてしまった。

SRSはその好機を逃がさず、彼の右腕を踏みつけ、相手の背にショットガンを突きつけた。
「やられた……ぜ」
「突然だな、アンタ。驚いた」
SRSは持ち前の低音で、脅しをかけるように言う。
「名前は?」
「……」
「名前は!?」
「酢飯……だ」
SRSは酢男に強く名前を問う。すると遂に男―――酢飯は名を名乗った。
酢飯は地団太を踏みたいほどに悔しがっている様だった。
「助けてくれ!俺は死にたくないんだ!」
「俺だってそうだ!だが襲ってきたのはそっちだろうが!」
酢飯を一喝すると、SRSはイライラとした様子でショットガンを持つ手に力を入れた。

そして時は、冒頭に戻る。

「頼む!助けてくれよ!死にたくないんだ!お前を襲ったのだって……」
「………ああ、そうかい!わかった!わかったから!」
SRSはショットガンを相手の背から外すと、ナイフを拾いながら下がった。
相手のその意外な行動に呆然とする酢飯に、SRSは言う。
「望みどおり逃がしてやる。でも、次会ったら遠慮なく殺す……その時まで無様に生きろ!」
SRSのその言葉を聞いた酢飯はそのまま逃げて行き、辺りにはSRSの姿があるだけだった。

「あんな風に無様になるなら、俺はゲームに乗らない」
ポツリと呟き、彼は歩きながら考える。

同じMC、アケまとめとエドを探そう。彼らに会い、このゲームを潰してやる。
その決心がSRSの体を支配した瞬間、舌打ちはいつの間にか消えていた。

【SRS/D4/一日目1:00】
【荷物】ショットガン(残弾数不明) ナイフ
【状態】健康
【思考】1:アケまとめとエドを探す 2:ゲームを潰す 

【酢飯/D4→?/一日目1:00】
【荷物】ザックのみ
【状態】1:移動(逃亡)中 2:苦悶
【思考】1:SRSからの逃亡 2:とにかく死にたくない



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