無題
ヴァレンシュタインは悩んでいた。
「参ったな」
名簿をじっと見つめる。
どれもこれも、名だたる英雄ばかり。
「これだけ綺羅星のごとく並んでいると、果たして誰がいいものか悩む…」
ヴァレンシュタイン―最強の傭兵。
彼は主を求めていた。
彼は知っている。
自分に重大なものが欠けていることを。
それはカリスマか、あるいは人間性か、血筋といった正統性であるかもしれない。
さらに、軍事や政治に対する、自分のあまりにも合理的で繕わない性格が、王に相応しくないことを知っていた。
「私一人では、ダメだ」
まずは誰かに従い、彼と自分が生き残る。
その後主人を裏切って生き残れるか、それとも主人に裏切られて死ぬかは賭けだろう。
それでもこのまま一人でいるよりは勝率が上がる気がする。
ふと、後ろに気配を感じた。
「誰だ!?」
「きゃあ!」
持っていたグラディウスを構えると、悲鳴が上がった。
「王女…?」
(100年後のフランスではあったが)見慣れた王族の服飾と、女王には若すぎる年齢から
彼はそう推測し、剣を下ろした。
「いいえ、私はフランス王妃マリー・アントワネットですわ!」
誇らしげに言ってみせる。
頭の軽そうな女だな、と思う。
こいつよりはフェルディナントニ世の方がマシな気さえする。
「他に誰かに会われましたか?」
ひとまず情報は集めねば。
「人が名乗れば、そちらも名乗るのが貴族の心得でしょう」
「……ヴァレンシュタインと申します」
「まぁ…!三十年戦争でフランスの敵だった方ですね」
マリーもそれぐらいは知っていたらしい。
「でも許して差し上げます。感謝なさい」
なんで感謝しなきゃいけないのだ…。心の中でぼやく。
「マリー、あまり離れないでと言ったでしょう。…その殿方はどなた?」
西太后が現れ、ヴァレンシュタインの姿を確認する。
もちろんマリーとの会話を聞き、どうやら危害を加える気はないと知った上で姿を現したのだ。
「また女性ですか」
しかしマリーと違った、鋭い眼光と警戒を解かない態度に好感を覚える。
「私は西太后。守ってくださる殿方を探しています」
西太后はヴァレンシュタインに殺意がないことを知り、正直に言った。
「私と契約したいのですか?」
ヴァレンシュタインも西太后には興味を持っていた。
自分にないものを持ち、自分が持つものを持たないことに惹かれた。
この女なら、自分を捨て駒にはしないだろう。
武力を必要としているはず。
「ならばこのアルブレヒト・フォン・ヴァレンシュタイン、貴公に仕えましょう」
西太后の手に口付けをする。
「さっそくお風呂を探してちょうだい!」
マリーが気が利かないと言わんばかりに命令した。
この女………。しかしまぁ、害はなさそうだし、最低盾にはなるだろう。
結局ヴァレンシュタインは言いなりになって、水場を探すのだった。
【ヴァレンシュタイン】
[状態]健康
[装備]グラディウス(カエサル時代のもの)
[道具]基本支給品一式
[思考]
1 西太后に仕える。
2 最後の二人になるまで裏切るつもりはない
3 アントワネットuzeeeeeee!
【マリー・アントワネット】
[状態]健康
[装備]不明
[道具]支給品一式
[思考]
1 平民(らしき人)を見たら慰める
2 お風呂に入りたい(最悪水浴びでも可)
【西太后】
[状態]健康
[装備]不明
[道具]支給品一式
[思考]
1 優勝しヒトラーをバトロワに参加させる
2 1のために他人を味方につける
3 マリーとヴァレンシュタインを上手く使いたい
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