紳士の決意
マクシミリアン・ロベスピエールは信じられない気持ちで名簿を眺めていた。
―――なぜあの女がここにいる。
彼の、いや全フランス国民の憎むべき対象の名前がそこにあった。
―――マリー・アントワネット。
国民の血税を浪費し財政を傾け、フランスを亡国に追いやろうとする愚かな美貌の王妃。
……あの女が偉人ということか。
ありえない、と彼は思った。
あの女が歴史に名を残すなど、決してありえない。
―――いや。
有りうるのかもしれない。旧体制を代表する愚かな王妃として名を残すのかもしれない。
だとしたら納得できなくはない。悪名もまた歴史に名を残すのだ。
彼は考えてみる。
あの女は今何をしているのだろう。
めそめそと泣いているのではないだろうか。
それとも早くも何処かの武人にでも殺されたか。
あの女が持っているのは美貌だけなのだからいずれにしても生き残るのは不可能だと思われた。
―――それでは困る。
あの女はこんなところで死んでいい立場ではない。
国民によって裁かれ、国民の前で懺悔し、国民の前で罪人として斬首されねばならない。
こんなところで野たれ死なれてもフランス国民の溜飲は下がらない。
新しい体制を作り上げる礎として国王と王妃の首は必要だ。そのくらいの役割は負ってもらわねば。
王妃としての役割も果たさずにこんなところで、
国民の知らないところで無残に死んでいくなどあってはならないことだった。
放っておけばあの女が死ぬのは時間の問題だった。
どうせ生き残る知恵も度量も有りはしないだろう。
―――死なせない、絶対に。
なんとしてもマリー・アントワネットを見つけ出しフランスへ連れ帰らねば。
あの女が死ぬのはフランスの地でなければいけない。
マクシミリアン・ロベスピエールはマリー・アントワネットを捜索することにした。
【マクシミリアン・ロベスピエール】
[状態]健康
[装備]不明
[道具]支給品一式
[思考]
1 マリー・アントワネットをフランスへ連れ帰る
2 1のためにマリーを探す
3 1のために脱出方法を探る
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