月下の決闘
月明かりの下、1人歩いていた少年は意を決したように立ち止まった。
「出て来て下さい。そろそろ始めましょう」
「フン・・・どうやら大分前から気付いていたようだな」
「ごめんなさい。実は確かめたいことがあって貴方に付けさせていたんです」
「構わんさ・・・貴様が死ぬことに変わりはないからな。恨むなよ小僧!」
叫ぶや否や、騎士は手に持っていた斧を投げつけた。
「貴方は二つ間違えています」
斧を軽く避けるとその少年は騎士の方に向き直った。
「僕は死なない。機械に死は存在しないから。そして僕は小僧じゃない、ロックマンだ!」
「機械仕掛けの人形か・・・面白い、俺はカイン、竜騎士カインだ!」
ブーメランのように戻ってきた斧をキャッチするとカインは跳躍する。
呼応するようにジャンプするロックマン。
だが、次の瞬間ロックマンは驚愕した。
カインはロックマンの数倍の高さまで跳んでいたのである。
「竜騎士に空中戦を挑むとは百年早いわ、人形が!」
斧で切りかかるカイン。
だが、ロックマンが右腕のロックバスターを構えるのを見るやすばやく回避に移り、着地した。
「人間が空中でこれほど動ける!?」
「フ・・・機械人形にはわかるまい!」
カインは再び斧を投げた。
どうにか避けるロックマン。
弧を描いて戻ってくる斧をキャッチするとカインは再び飛び上がる。
空中からの斬撃と斧のブーメランの波状攻撃だ。
「く・・・!?」
「あの冒険で俺はほとんどのものを失った。そして唯一残ったのがこの竜騎士の技だ!」
竜騎士というと槍のイメージが強いが決してそんなことはない。
斧を使った戦闘術もかなりのものである。
カインがバロン王国で竜騎士団の隊長をしていた頃は
斧を主武器とする部下が少なくなかった。
「貴様の武器はその右腕か?撃って来い。逃げるだけでは話にならんぞ!」
「挑発には乗りませんよ。ただ、このままではまずいですね」
「ならばどうする?」
ロックマンは何かを左手に握り締めた。
「それが支給武器か?いいだろう、行くぞ!」
またも斧が飛ぶ。
避けながら握り締めた機械のボタンを押すロックマン。
斧に追いついてキャッチしたカインは跳び上がった。
次の瞬間、カインは驚愕した。
同じ高さにロックマンがいたのだ。
「・・・バカな!?」
次の瞬間、ロックバスターが火を吹いた。
草むらにカインの身体を隠すと、ロックマンは呟いた。
「やっぱり、そうなんですねライト博士・・・」
あの時。支給武器であるリモコンでラッシュコイルを呼び出し、
カインに追いついたロックマンはカインを撃とうとした。
ところが突然照準が狂い、弾は外れたのだ。
バランスを崩したカインは着地に失敗し気絶したのである。
「僕は、人を守るために作られた機械。だから人を撃つことは出来ない・・・」
教えられていたわけではない。
ただ、何度も続けてきたワイリーとの戦いで、
目の前にしたワイリーを撃つ気にならなかったことが
ロックマンにそんな疑いを持たせていたのだ。
それを確かめるため、敢えてカインとの戦いに臨んだのであった。
「博士、恨みはしません。ただ、今回は帰れないかもしれません」
草むらに隠したカインが心配だったが、とりあえず1人で行くことにした。
下手に起こして自分が斬られては堪らない。
【「ファイナルファンタジー4」カイン 斧所持。気絶中
「ロックマン」ロックマン ラッシュコイル呼び出しユニット所持、移動中】
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