エルナーの冒険
エルナーの潜った穴は思いのほか深い穴だった。
これを掘ったと思われる男、ディグダグは何を考えていたのだろうか?
ボンバーマンに首を折られて死んだ今となってはそれを知る術はないのだが。
「しかし、暗いですねぇ。どこまで潜ったんでしょう?」
戻った方がいいのかな、と思い始めた。
いい加減に戻らないとユナとボンバーマンを見失うことになってしまう。
しかし、あの時のボンバーマンの奇行を見逃したら
大変なことになるのではないだろうか。
穴に葬ったディグダグに祈りを捧げる振りをして、
何か丸めた紙くずを落した、あの行為には重大な意味がある気がしてならない。
アンドロイドのエルナーにそんなものがあるのかどうかわからないが、
人間で言うところの勘というものだ。
ザッ・・・ザッ・・・
その時だった。何かの音が穴の奥から聞こえてきたのだ。
「何だぁ?誰かいるのかぁ?」
そして、姿を現した人物は――――――――
死んだはずの男
「ぎぃやああああああ!!」
エルナーは叫んでいた。そこにいたのが、いるはずのない人物だったからだ。
「何だよ、追って来ちゃったのか?ボンちゃん、芝居が下手なんだから・・・」
そう、ボンバーマンに首を折られたはずのディグダグだったのだ。
「あ、あなた・・・死んだはずじゃなかったんですか?」
「あぁ、あれか・・・アンタさ、首の骨の折れた音って今までに聞いたことある?」
「え?いや、ありませんが」
「そういうことさ」
「・・・!あれは芝居ってことですか!でも何でこんなことを」
「ま、話は長くなるんだが・・・で、どう?俺って死んだことになってる?」
「え?」
「定時放送は?」
「そう言えば、名前挙がってましたよ?何で向こうは死んでるって思ってるんでしょう?」
「この首輪で判断してるんだろ。おそらく脈拍を測っていて、計測できてる限り
首輪が電波を発信してるのさ。本部はそれを受信して生死を判断してるんだろう。
ところがどっこい、ここは深い深い地の底だ。電波も送れないってわけよ」
「だから、電波を受信できないから死んだと判断したと・・・」
「そういうこったな・・・ここからが大逆襲さ。死人が何かやるなんて思わないだろ?」
ディグダグはニヤリと笑った。
ディグダグの大作戦
「逆襲って・・・あなたは一体何を?第一、あなたは・・・」
「あのユナってガキを襲ったことか?芝居だって言ったろ」
ディグダグはニヤニヤしたままだ。
「ボンちゃんに感謝しろよ?『後輩を助けたい』って言ったの、あいつなんだから」
「助けるって・・・」
「あぁ、俺達はこの島を脱出するんだよ。ユナも含めてな」
とんでもないことをさらりと言ってのけた。
「本当は、俺が生き残るためにボンちゃんと組んだんだけどさ。
『それならユナを助ける方法を考えてくれ、そうじゃないと解散』なんて言うからさ。
それやると戦略狂っちまうけどボンちゃんがいなくなったら俺、絶対に生き残れないから」
「それなら、なぜあなたは別行動を?」
「理由は二つ。俺しか出来ない仕事があるのが一つ。もう一つは・・・ユナを信用しきれてないだけさ」
「・・・」
「だからユナのことはボンちゃんに任せた。今頃全ての事情を説明してるはずだ」
「そうか、ボンバーマンが落した紙は連絡用のメモだったんですね?」
「何だ、ボンちゃん見られてたのかよ」
「・・・で、具体的にどうするんですか?」
エルナーはついに最大の疑問をぶつけた。
「あぁ、そうだな。アンタも連絡係は出来そうだし、知っておいてもらうか」
そして、ディグダグは数枚の紙を見せた。
【「ディグタグ」 ディグダグ 生存(本部発表では死亡)】
【残り40人】
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