女の戦い
「やめてくださいっ!本当に!」
「さっきから言ってるでしょう?あなた達が死ねばやめてあげるわ」
「狂ってるよ、アンタは!」
灯台付近の崖で、その三つ巴の戦いは行われていた。
鞭を振り回し、二人の敵を寄せ付けないカチュア。
戦いを臨んでいないサイコソルジャー・麻宮アテナ。
割って入ったアリーナ。
戦いというにはあまりに一方的だった。
武道家のアリーナでも高速の鞭の軌道は見切れないし、
アテナに至ってはアリーナの後で震えるばかりなのだ。
「この武器じゃ時間かかりそうだし、そこから飛んでくれる?その方が手っ取り早いわ」
「・・・アンタは何が面白くて・・・」
「力が要るの。私は勝ち残って、弟を守れる力を手に入れるの」
「そんなの・・・弟さんも喜びません・・・」
「黙れっ!!あなたなんかに何がわかるの!?ふざけるんじゃない!」
アテナの言葉に半狂乱となるカチュア。鞭がより激しくなる。
「わわっ!?このままじゃホントにまずいかも・・・」
「あの・・・私が隙を作りますから、逃げてもらえますか?」
「え?」
「元々、私とあの人の戦いだったんです。あなたには関係ないことですから・・・」
「そっか・・・でもダメだね」
「え・・・」
「アンタを置いてく気にはなれないよ。どうせなら二人でやっつけようじゃん?」
驚くアテナに、アリーナは笑って見せた。
乱入者
「え!?そんな、どうするんですか?」
「質問するのはこっちなんだけどなぁ。どうやってチャンス作るの?」
「えっと・・・あなたの準備がよければすぐにでも出来るんですけど」
「何か切り札あるみたいね。あたしはいつでもいいよ!」
構える二人。
「何をグダグダとっ!そこから落ちるか、この鞭の餌食になる他に道はないのよ!」
鞭を振るうカチュアが迫る。
「よっし、お願い!」
「はいっ!サイコボ・・・」
ドガアァァァァァァァァン!!
アテナが必殺のサイコボールを放とうとした瞬間だった。
何かが上空から落ちてきたのだ。
「な、何!?」
「敵!?何か撃たれた!?」
「こ・・・こんなの聞いてないです・・・」
やがて、土煙が晴れると・・・その落ちてきた何かが、ゆっくりと立ち上がった。
「いかんな、不測の事態のためか燃料切れにまで思考が回らなかった」
嗚呼第三帝国軍人
「何ですか、あの人・・・」
「あ、あれって・・・人って言うの?明らかにおかしいんだけど・・・」
その男は3人をまったく気にせず、身体のあちこちをチェックしているようだった。
「何者よ!」
カチュアが叫ぶ。敵を仕留めそこなったのだから怒って当然だ。
「よくぞ聞いてくれた・・・俺はッッッ!誇り高きドイツ帝国軍人ブロッケンッッッッッッッ!!
世界一のッッッッッッ!ドイツの技術が生んだ最強のサイボーグ戦士ィィィィィッ!!」
ビシッとポーズを決めるブロッケン。
「・・・何かと思えば、変態か・・・」
「確かに変態ね、こりゃ・・・」
「普通は通報しますね、『変態がいる』って・・・」
「き、貴様らァァァァッ!変態とは何だ、変態とはァァァァッ!!」
耳から煙を吹きながら怒るブロッケン。
「ありゃ間違いなく変態だわ。ね、あとはあたしがどうにかするから逃げちゃいな」
アリーナはアテナに囁いた。
ブロッケン、始動!
「え?」
「あっちのお姉さんも変態に気を取られてるみたいだからさ」
「あなたは?」
「大丈夫!これでも結構強いんだから!そうそう、名前だけ教えといてよ。あたしはアリーナ」
「麻宮アテナです。アリーナさん、このご恩は必ず」
アテナはこっそりと走り出した。
「むっ!?」
ブロッケンはそれに気がついたが、特に追いはしなかった。
右腕にカチュアの鞭が巻きついていたからだ。
「敵が減ったか。どちらでも同じことだ。さて・・・」
改めて周囲を見回すブロッケン。
と、突然ブロッケンの動きが止まった。アリーナの顔を見つめている。
「!!」
「!?」
「・・・むぅ・・・これは・・・バカな・・・こんな衝動が俺にも・・・女!名前は!?」
「・・・アリーナだけど・・・何よ?」
「美しい・・・美しい・・・美しいぞォォォォォォォォォッ!!!」
「へっ!?」
「宣言するッッッッ!これより、アリーナ殿を全面的に援護するッッッッッッ!!」
叫ぶと同時に鞭ごとカチュアを放り投げていた。
危機去った後
完全に不意を突かれたカチュアは何メートルも後方に飛ばされていた。
「バカな・・・なんて力なの!?」
危険を感じたカチュアは逃げることにした。
「逃がすかッッッッッッッ!!」
「ちょっと!待ちなさいよ!」
アリーナは追撃しようとするブロッケンの襟首を掴まえた。
「な、何をッッッッッ!?」
「どういうことなのよ?いきなり味方になるなんて?」
「このブロッケン、あなたの美しさに一目惚れしましたッッッッッ!!」
「はぁっ!?」
「御用があれば何なりと!一命を賭けて尽くさせていただきますッッッッッ!」
「・・・言うこと何でも聞いてくれるの?」
「はッ!」
「じゃ、ちょっとそこに後ろ向きで立ってくれる?」
「わかりましたが・・・押さないでくださいよ」
「うん、大丈夫・・・おりゃー!」
「あっ・・・うわああああッッッッッッ!」
「理由はどうあれ、女の子に手を上げるヤツは大っ嫌いなんだよ、あたしはね!」
押したんじゃなくて蹴落としたんだからね――――――海を見下ろすアリーナだった。
【「タクティクスオウガ」 カチュア 鞭所持 生存、「サイコソルジャー」 麻宮アテナ 生存、
「ドラゴンクエスト4」 アリーナ 鉄の爪、ボウガン、探知機(使用方法不明)所持 生存
「ワールドヒーローズ」 ブロッケン 生死不明】
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