風来人、月の下






ロードランナーとの悲しい別れの後、シレンは海岸を歩いていた。
これが旅の神の導きなら、神はあまりに冷酷だ。
青白く光る月の下、シレンは初めて神に対し怒りを覚えていた。

「出会い、別れは旅の常と言っても・・・これはないよ・・・」

それでも歩いていくしかない。風来人であるシレンはそれを知っていた。

「・・・」

ふと、何かが聞こえた気がしてシレンは足を止めた。

「・・・」

やはり気のせいではない。誰かがいる。
周りを見回すと・・・少し先に小さな影が見えた。
目を凝らしてみると、子供がうずくまっているようだ。
こんな場所に子供を放っておいたら大変なことになる。
シレンはその子供の方に走っていった。


風来人と少女



「大丈夫かい?」

シレンはその子供に声をかけた。金髪の女の子だ。
どうやら泣いているようだ。無理もない。

「怖い思いをしたんだね。大丈夫だよ、僕は味方だから」

安心させてあげようとシレンは優しく語り掛けたが、
女の子は全く顔をあげようとしない。
小さな肩を震わせ、すすり泣くばかりだ。
シレンは困ってしまったが、放っておくことも出来ない。
「旅は道連れ、世は情け」の精神である。

「とりあえず、ここから動こう?怖い思いしない場所まで行こう」
「・・・怖くない場所って・・・どこ?」
「え?・・・そうだね・・・どこならいいんだろう・・・」
「なぁんだ、お兄ちゃんはそんなことも知らないんだ」

突然、女の子が大きな声を出した。

「・・・き、君・・・?」
「うん、いいよ。お兄ちゃんは優しいから教えてあげるね」

顔を上げた女の子の顔は―――――――見たこともない残酷な笑みを浮かべていた。


悪魔の子供達



驚いて後ずさりするシレン。と、次の瞬間、何かが頬を掠めた。

「!?」

振り向くと、金髪の少年が立っているのが見えた。年は少女と同じくらいだろう。

「あぁ〜、ダメだよ、お兄ちゃん。せっかくいい所に連れて行ってあげようと思ったのに」

少女が残念そうに言う。少女の手には何時の間にか棍棒が握られていた。
シレンは悟った。この子達の言う「怖くない場所」、「いい所」とはあの世のことだ。
この子達は自分を殺すつもりでここで罠を張っていたのだ。

「ダメだよ、デミ。これじゃあ無理だよ」

突然、少年の方が言った。さも残念そうに、だ。

「ダニー兄ちゃん、ダメ?」
「ゴムが強力すぎて、僕の力じゃこのスリングショットはうまく扱えないよ。
その棍棒はデミには重すぎるし。仕方ないけど出直そう」
「うん!お兄ちゃん、またね!バイバイ」

呆然とするシレンを残し、手を繋いで去っていくダニー&デミ。
殺人を極上の遊戯とする超頭脳の双子。

【「風来のシレン」 シレン 白紙の巻物2枚 所持 生存、
「アウトフォクシーズ」 ダニー&デミ スリングショット(ダニー) 棍棒(デミ) 所持 生存】



前話   目次   次話