光を覆うもの






(・・・まずい!)

本能的に危機を感じたスネークはダンボールを被って伏せていた。
距離があったのが幸いしていた。

「・・・で、エルナー」
「何ですか?」
「敵はどっち?」
「えー!?」

そう、意気込んで変身しておきながらユナはスネークを発見できていなかったのだ。
さらに、スネークには幸運な、ユナには不運な事態が迫っていた。

「な、何を言ってるんですか!あっちですよ、あっち・・・って、聞いてますかー!?」
「いたー!あいつねー!」
「・・・え!?そっちじゃ・・・わあああ!?」

ユナとエルナーの視線の先にいたのは―――――――重武装した志村けんだ。

「許さないんだからー!」
「死ぃねやあぁぁぁぁ!!」

戦闘が始まろうとした瞬間。エルナーはユナに起きている異変に気が付いた。

「・・・!?ダメですー!」

志村がトリガーを引いた――――。


光を守る影



「・・・伏せろ!」

その声が響いたのは、エルナーが叫び、志村がトリガーを引くのとほぼ同時だった。

「!?」

次の瞬間、ユナは何かに突き飛ばされ、倒れ伏していた。
その上を無数の弾丸が掠め、後方にグレネード弾が着弾し爆炎を上げた。

「逃げろ!お前達では無理だ!」

謎の声の主がユナ達に叫ぶ。声はするのだが、まったく姿は見えなかった。
四方八方から響いているように聞こえ、大体の位置すらわからない。

「逃げましょう!今のアナタでは無理ですっ!」
「何で!?」
「いいから早く!」

エルナーがユナを走らせる。
当然、志村がそれを放っておくわけがない。
もう一度、狙いを付けようとした。

「止めておけ・・・戦場に咲く可憐な華、手折るには少々早過ぎる・・・貴様は俺が相手しよう」


影に生きる光



未だに姿を見せることなく、声は響いてくる。

「だ、誰だチミはぁぁっ!」
「俺が誰かなど、貴様が知る必要はない・・・退け。今なら、危害は加えん」
「ふざけるなぁぁっ!」
「それが、貴様の意思なのだな?」

声が止んだ。静寂。

グッ!「ひぃぃぃっ!」

志村の情けない悲鳴が響いた。
一瞬だが、首を掴まれたのだ。もちろん、姿は見えなかった。

「この意味が分かるな?俺はいつでも貴様を殺せる。所詮貴様は素人だ」
「・・・ひぃぃぃぃっ!」
「武器があれば強いと思っていたか。最悪の勘違いだ」

喋り終わる前に、志村は走り出していた。
自分が殺される覚悟など出来ていないのだ。
志村が逃げるのを見届けると、闇から忍び装束の男が溶け出してきた。

「あの娘も助かったようだな・・・俺も甘いな、ここは戦場だと言うのに」

次は、こうはいかないだろう。リュウ・ハヤブサはそう思うと再び闇に消えた。


危機去った後



「ねぇ、エルナー!何で戦っちゃダメなのよー!?」

しばらく走った後、ユナは息を落ち着かせながらエルナーを問い詰めていた。

「おかしいんですよ!ライトスーツのエネルギーが明らかに弱いんです!」
「へ?」
「感じないんですか?普段の十分の一も出ていないですよ!」
「そう言えば、先生って人が『防具は程々の力しかありませんから』って言ってたよーな」
「そういう大事なことは忘れちゃダメでしょー!!」

エルナーはあきれ返って叫んでいた。
しかし、エルナーも一つ忘れていることがあった。



「・・・何だったんだ、あれは・・・」

ダンボールに隠れたものの、そのまま放置されていたソリッド・スネーク。
こんな情けない姿は絶対に報告できないな、と思うのだった。

【「銀河お嬢様伝説ユナ」ユナ ライトスーツ装着/エルナー所持 生存、
「メタルギア」ソリッド・スネーク ハンドガン/ダンボール/プラスチック爆弾所持 生存、
「加トちゃんケンちゃん」志村けん 生存、
「忍者龍剣伝」 リュウ・ハヤブサ 生存】



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