電子妖精、悩む






「・・・と、いう訳なんですね。」
エルナーは、現在に至るまでの経緯(いきさつ)をやっと理解した
ユナの大ボケ・断片的かつ いい加減な状況説明から、正しい状況を推測するのは
「“英知の”エルナー」であっても困難を極める行為だった。

「これ、ゲームなんだよね て、ゆーと 優勝しちゃったら賞品とか出るのかな」

・・・ダメだ、この娘はほとんど分かっていない・・・
エルナーは もし、自分にできるのなら、
肩をすくめ ため息をついてやりたいところだった。


エルナーには、手も足も元から付いていない
あるのは頭部・ボディ・羽 それだけです


「迷い」



「さてと、次のターゲットは…」
不意に切られた通信に状況はつかみきれていないが、
実戦となれば任務を遂行する以外には道は無い
物陰に身を隠しつつ、確実に一人ずつ暗殺してゆく・・・それが彼のスタイル
正面切って派手にやりあうのは、何処ぞのヒーローさんにでも任せておけばいい
木に登り、視界を確保しつつ自分の身は隠蔽する
・・・見つけた、次なるターゲット
何の警戒も無く、独り言をつぶやきながら歩く金髪の女
あの無防備さと派手な服装からして、ここで生き残るの困難
ならばせめて、苦しむ前に仕留めてやろう・・・
スネークは、自分の葛藤した精神を説得するべく ベレッタの銃口を持ち上げた


「光、堕つ…?」



「・・・ったく、少しは自分の置かれた状況ってモンを理解して欲しいですね」

腹を立てたエルナーは、せわしなくユナの周りを飛び回る

「だいじょーぶだって、出合ったらバトルして先へ進む・・・
 今でだって同じ運びだったじゃない」

「確かに1作目2作目はそうでし・・・って、そういう事を言って・・・あぶないっ!」

 − ターン・・・ −

一発の銃声と共に、一人の少女が地に倒れた・・・


「続く葛藤」



「・・・悪く思わないでくれ」
木の上から降りると一人スネークはつぶやいた
ミッションとはいえ無抵抗の民間人を殺めてしまったのだから心中穏やかなはずもない
いつもなら、すぐにでも移動を開始するのだが 
がらにもなく再度ターゲットを確認しようと近づいていった・・・もちろん隠蔽しつつの移動だ

ターゲットまで、距離およそ100m といった所であろうか
「あたた・・・いきなりなによぉ」
倒れていた少女が、急に身を起こした
ばかな、直撃のはずと驚愕しものの、良く見ると少女には出血の一つも無い
念のため、その位置で観察を続ける、まだ気づかれては無いようだ。

「あたた じゃないでしょ! 狙撃されたのよ ソ・ゲ・キ」
「だからって、いきなりオデコに体当たりする事無いじゃないの」
「だーかーらー、それは緊急措置で・・・ってそれどころじゃないでしょ!」

ぎゃーぎゃーと五月蝿いとは思いつつ、カラクリは読めた
この小さなロボットが とっさに体当たりして少女を銃弾から守ったのだ
少女の…人並みはずれて長く多い頭髪に、シルエットの認識を狂わされのも一因であると見た
理由さえ分かれば恐れるに足りない、再度仕留めれば良いだけの事
スネークは動きを止め、チャンスを待った。


「光、再起動」



「そうだよね、あえてゲームオーバーなってあげる事なんて無いよね」
「だーかーらー、いつまでアナタはそう脳天気なんですかっ」

その時、ユナの目の前に、一房の髪の毛の束が落ちてきた
「…これって、ひょっとして…」
ひょっとしなくても、先ほどの銃弾で断ち切られたユナ本人の髪である
「あぅ・・・オトメの命を〜… チェンジ!!ライトスーツ!!!」
「やっとやる気になってくれた…理由はともあれ…」

次の瞬間、まばゆいばかりの光がユナの体内から迸り、
体の要所要所にプロテクターを形成してゆく
その際、ちょっとだけ媚びたポーズをとるのは、お約束のサービスってやつだ。

光の奔流が収まると、そこには“光の救世主”の証、ライトスーツを身に纏ったユナが立っていた

ライトスーツ…それは“光”の属性を持つ者の心の内の光より形成される服
頭部や上腕部・大腿部に露出こそあるものの 宇宙空間の活動も可能、
単身宇宙戦艦との交戦をも可能にする、究極の鎧

【「銀河お嬢様伝説ユナ」ユナ ライトスーツ装着/エルナー所持 生存】
【「メタルギア」ソリッド・スネーク ハンドガン/ダンボール/プラスチック爆弾所持 今の所生存】



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