ビュウの戸惑い






「何があったっていうんだ・・・」

ビュウは自分のいる場所の状況が掴めなかった。
無数の穴。そして誰かに殺された後に爆弾で頭を飛ばされたのだろう、
見たことのない衣装を着た首のない男の死体。
ここはソニックが検非違使を葬った場所なのだが、
ビュウがそんなことを知るはずもない。

「困ったな・・・」

ジッとしていたらまずいのは判るのだが、
かと言って見も知らぬ相手と戦うのも気が進まない。
戦いになればそれなりに自信はあるが。

「やるしかないのかなぁ・・・やらないとこっちがこの男みたいになるらしいし・・・」

ビュウが覚悟を決めなきゃな、と思ったその時。

「・・・その方・・・」


仇敵を探して



彼にとってこの島がどこかなんてどうでもよかった。
自分はただ、一族を滅ぼした仇を討ちたいだけだ。
だから、謎の兵士たちに囲まれ、
「仇のいる場所に連れて行ってやる」と言われた時は
迷わず付いて行く事を選んだ。
「睡眠ガスを使わなくて済んだな」とか
「第一、あれには効かないんじゃないか?人間じゃないんだろ?」とか
気になる声はあったが。
その後、この島で首輪を付けられ、荷物を渡され、
「この建物の外で遭う相手は全てあの男の一族だ」と
教えられて開放されたのである。
しかし、ずっと探しているのだがなかなか見つからない。
卑怯なあの一族のこと、騙し討ちでも狙っているのだろう。

「・・・ぬ?」

彼は足を止めた。人の気配がする。
どうやら誰かいるようだ。しかし、あの一族と同じ気を感じない。
あの一族なら、気でわかる。
彼は、その人物に声をかけることにした。

「・・・その方・・・」


UNLUCKY?



ビュウは驚いて振り向いた。
その男は何の気配も感じさせずに背後に立っていたのだ。

「その方・・・どこの者か・・・?」
「はっ?」

ビュウはわけが分からず、間の抜けた声を出した。

「・・・!・・・その死体・・・お主が斬ったのか?」
「え?い、いや、俺が来たときは既にこうで・・・」
「この衣装・・・都の者か・・・彼奴らの仕業か・・・」
「えっと、あの、先ほどから一体何を・・・?」
「お主はこの都の者を守ろうとしてくれたのだな・・・」
「え?いや、そうじゃなくて、たまたまここに着いただけで・・・」
「見ればお主も武士のようだの。この者の仇、そして我が一門の仇、共に討とうではないか」

ビュウの話は一切聞かず、その男は喋り続けた。

「拙者の名は平景清。源氏を討つために黄泉から舞い戻りし者」
「え、えーっと、俺はビュウ。何か分からないけど、よろしく???」

おそらく今日は厄日だ、とビュウは思った。

【「バハムートラグーン」 ビュウ 生存、「源平討魔伝」 平景清 生存】


茶飲み話



「そう言えば、今回の参加者に変なのがいましたね」

分校の職員室ではたけしと助手のやすひこの茶飲み話が続いていた。

「あぁん?」
「ほら、抵抗もせずについて来たのが一人いるって」
「あぁ〜、平景清のことか。ありゃ迎えに行った部隊が気を利かせたらしい」
「へぇ?」
「仇に逢わせてやる、と言って連れて来たんだと」
「頭使ったんですね」
「一度死んでるようなやつだからな、ガスで眠るか分からないんで試したそうだ」
「ついでに、こっちに引き込めばよかったんじゃないですか?」
「バカ野郎!」

突然たけしは叫んだ。

「・・・俺はオカルトが苦手なんだよ」

そういうとたけしは茶を啜った。いい加減、飲みすぎだ。

(でも、シザーマンはオカルトじゃないんですか・・・)

やすひこは訊かないでおくことにした。



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