バウンティ・ハンター
先程まで説明を受けていた建造物の屋上に座り込み、この惑星の衛星の光に照らされながら、
サムス・アランは原始的にも紙の上に印刷された地図を、スーツの制御ユニットに手動でインプットした。
これまでの戦歴で数多の凶悪なクリーチャーを屠ってきた右腕のサイコガンも、
このプログラムのルール内では、貧弱な小火器程度に威力に制限されている。
エネルギーの続く限り攻撃を無力化するはずのスーツも、強化プラスチック程度の防御力しか持っていない。
今のサムスにとどめを刺すのなら、ありふれた銃器や刃物でも充分用が足りるだろう。
自分が陥った運命を思いつつも、深緑色のバイザーの奥でサムスは微笑した。
そしてサムスのデイパックの中に入っていたのは、アイスビームやスクリューアタックのような
強力な装備ではなく、ただの「丸まり」――モーフィングボールだったのだ。
丸まりをスーツのシステムにセットし終えると、サムスはヘルメット越しに、
自分の素肌に直接はめられた首輪に手をやった――試してみる価値はあるかもしれない。
モーフィングボールの発動と同時に、鳥人族の秘術により自分の骨格を折り畳む。
次の瞬間、サムスのいた場所にはバスケットボール大の球体が転がっていた。
ニ、三度丸まり状態のままで転がったのち、サムスは再び元の姿に戻った。
……ダメだ。この首輪はどうやっても外せそうにない。
そうなれば生き残る唯一の方法は、他の参加者を全て打ち倒し、勝利者となる事しかなかった。
元の世界では銀河系一のハンターとして、不可能とも思えるミッションをこなしてきた自分だ。
たとえ使い慣れた装備が手元に無かろうとも、寄せ集めの烏合の衆など物の数ではない。
サムスの脳内ではこのミッションを勝ち残るための戦略が、早くも組み立てられつつあった。
バイザーの視界を移動させると、建造物のすぐ下に人影がしゃがみ込んでいるのが見えた。
――“ハンティング”の始まりだ。
【「メトロイド」サムス・アラン 「丸まり」を入手】
前話
目次
次話