ドゥームズデイ






真っ暗な森の中で支給されたグッズをリュックに移し変えながら、ネスは涙をぐっとこらえていた。

イーグルランド、オネットの片田舎にある我が家から、
ネスをこの島に連れ込んだのは、あの意地の悪いポーキーだった。
「……ネス、ちょっと面白いゲームがあるんだけど、お前も一口乗らないか?」
そう言いながら深夜に部屋を訪れたポーキーに連れ出され、
気が付くと大勢の兵士に押さえ付けられて、爆弾入りの首輪を嵌められ、
この島の殺し合いゲームに参加することを強いられていた。
幼いネスにとっては、あまりにもひどすぎる運命だった。

ネスは家を出る前に妹のトレーシーの部屋から持ち出したボロのバットを、リュックの脇に並べた。
それは武器と呼ぶには、あまりに弱々しい代物だ。
――ふと思いついて、地面から小石を拾い上げると、精神を集中させる。
ネスの両手のひらの間に浮かんだ小石が、ゆらゆらと空中で踊る。
これはパパとママしか知らない、ネスが赤ん坊の頃から持っている不思議な『力』だった。
しかし、これくらいの『力』では、大人との殺し合いに役に立ちそうにない。
コンセントレーションを解くと、小石は地面に落ちた。
そうなるとネスの身を守ってくれそうな品物は、教室で配られた装備品ぐらいしかない。
ネスはデイパックの一番底から、かさ張った複雑そうな機械を取り出した。
……武器ではなさそうだ。通信機か、それともレーダーかもしれない。
ネスは機械の前面にある起動スイッチをオンにした。
期待を込めて見守るネスの前で、機械から優雅なメロディーが流れ始めた。

ネスに支給された品物は、ツーソンの発明家オレンジキッドによる
グレートオレンジマシーン――略してグレオレマシーン――、
オレンジキッドを褒め称えるためだけに作られた機械だった。
グレオレマシーンはひとしきりオレンジキッドを褒め称える歌を奏でると、
ネスの目の前で壊れて、永久に使い物にならなくなった。

ネスは、ママのハンバーグが食べたくなった。

【「MOTHER2」ネス グレオレマシーン(破壊)/ボロのバット所持 生存(ホームシック)】



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