無題
くにおは森の中をさ迷っていた。
授業が終わり、ドッヂボール部の部室に以降とした瞬間、拉致られたのだ。
いくら熱血硬派とはいえ、銃とやりあった経験を持つとはいえ、四方から銃を突きつけられたら打つ手がなかったのだ。
「畜生。来週は花園と練習試合があるっていうのに・・・」
彼は愚痴りながら、支給されたメリケンサックを見つめた。
悪友のりきならともかく、蹴り技が得意な自分には、ちと不要な代物だ。
こんな事ならドッヂボールでも支給してくれれば良かったのに。
そう思っているうちに、彼は森を抜ける事に成功した。
だが、目の前は崖だった。
「ちっ、ついてないぜ」
来た道を引き返そうとしたくにおだが、少し離れた所に一人の男が立っていた。
何やらサッカーのゴールキーパーのユニフォームを着ている。
「おい、そこの奴!お前日本人か!?」
くにおは男に向かって叫んだ。
彼はくにおの声にドキッとし、彼の方を振り向いた。
「あ、あんた誰だ?」
「何ぃ!熱血硬派を知らないのか?」
「し、知らない・・・」
「許さねえ!!」
くにおは持っていたメリケンサックを男に向けて投げた。
友達と遊んでいて、リアルでバトルになりかねない世界で生きてきたくにおにとって、初対面の相手に攻撃を仕掛けるのはおかしな事ではなかった。
突然の出来事に、男はビビった。が、自分は南葛高校の正ゴールキーパーだ。逃げる訳には行かない。
「か、身体の何処かに当たってくれー!!」
メリケンサックは、彼の顔面に当たった。
その勢いで、男は崖下に落ちていった。
メリケンサックは、彼の友達にはなってくれなかった。
「・・・死んでねえよな?」
少し、後味の悪いくにおであった。
【『熱血高校ドッヂボール部』くにお生存】
【『キャプテン翼』森崎生死不明】
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