無題






「畜生! 何でオレがこんな目に!」
オレは森の中を必死に走っていた。格闘技も暗殺術も知らない、
武器の扱いなんてまるでド素人のオレ……そんなオレを今、
執拗に追いかけてきているのはどう見ても筋金入りのプロだ。
木から木へと風のように身軽に駆け、跳んで、徐々に迫って
来る。その手には一振りの刀。どうやら忍者らしい。もう既に
勝利を確信して、オレを追い回して楽しんでいるような感じだ。
畜生。今に見てろよ。反撃はムリでも、必ず逃げ切ってやる。
オレは、ポケットに手を入れて支給武器を握り締めた。それは
「鍵」。但し、添付説明書によればどんな鍵穴にもピタリと
はまる万能鍵らしい。これさえあれば、必ず逃げ切れる。
……奴は戦闘のプロだ。おそらく、オレが何をしたって、
奴を殺すことなどできないだろう。
だが、奴とて人間だ。走る速さも跳ぶ高さも、必ず限界が
ある。ならば、逃げ切るチャンスはある!
やがて、オレは森を抜けて住宅街に出た。と、そろそろ遊びは
終わりということか、奴が一直線に走って向かってきた。
オレは運良く、民家のガレージに止まっている車を発見した。
「よし!」
万能鍵でドアを開け、続いてエンジンをかける。奴が、車の
すぐ真後ろに迫る。刀を振り被った。車を丸ごと斬り裂く気か?
オレは必死にアクセルを踏み込んだ。奴が刀を振り下ろす。
「間・に・合・ええええぇぇぇぇっ!」
有名な戦闘機のパイロットや、名だたるライダーたちが
次々と死んでいるこのゲーム。マシンの神よ、もしいるのなら
オレという一人のレーサーを護ってくれっっ!

虚弱人間に興味を覚えたミオは、たまたまその戦い……と言える
のかどうか微妙だが、を参戦せずにじっと見ていた。
そして運良く、虚弱人間を見ることができた。
「人間は、やはり脆い生物であるという証拠を目撃」
紙一重で車が刀をかわして無事に走り去った、この場所に。
今、赤い装束の忍者が倒れている。絶命している。
ミオはその死体に近づき、忍者の武器である刀を拾い上げた。
「戦闘のプロでありながら、爆弾でもない煙幕で死ぬ人間を確認」

【『ラリーX』 主人公 生存 乗用車運転中 万能鍵所持】
【『銀河の三人』 ミオ 生存 刀入手】
【『影の伝説』 影 死亡】



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