無題






少年が、二人。

二人はお互い一言も話さず、ただ、じっと黙って向き合っていた。
二人が会ってからどれぐらいの時間が過ぎただろうか。
そこだけ時が止まっているようだった。

次の瞬間。
空が光り、轟音が響いた。
余りに一瞬の出来事で、雷に打たれた少年はあっけに取られてその場に倒れこんだ。
もう一人の少年は少年が死ななかったのを見て不思議に思ってはいたが、
深くは考えずにまたすぐに次の雷を打ち込んだ。
だが、少年にとどめを刺す事はできなかった。
その少年が普通の人間だと思って油断していたもう一人の少年は、うっすらといやな予感を感じていた。
倒れていた少年が赤い髪を揺らしながらゆっくり立ち上がる。
――――反撃開始。

視界が何度も真っ白に染まった。
いくら戦い慣れているとはいえ、
何度も魔法――かどうかは定かではないが――をくらってはさすがに体が持たない。
体力もそろそろ限界だ。
意識が少しづつ薄れていく。
ただ、勝てる可能性はひとつだけあった。
二度もこちらの最強魔法が命中したせいか、相手はかなり疲れている。
視界が元に戻った瞬間、少年は呪文を唱え、もう一度相手の少年に雷を落とした。
……正確には、落とそうとした。

MPがたりない!

最後の一発を打ち込んだ。
放つ直前相手が何か唱えていたような気がするが、気にしないことにした。
もう動かない少年の荷物を袋ごと奪い、中に入っていた薬草で傷を癒した。
そして軽く少年に向かって手を合わせ、静かにその場を去った。

最後まで二人が言葉を交わすことは無かった。

【クロノトリガー クロノ 生存】
【ドラゴンクエストIII 勇者 死亡】



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