無題






二人の剣士が戦った場所に、一、人足を踏み入れる者がいた。
「この空気は…どうやら先程まで戦いが行われていたようだな」
かつての戦いの日々が頭の中をかけめぐる。
そして思い浮かんその先には、かつての仲間たちの姿があった。
「ぐっ、セシル、エッジ…くそっ!この俺を差し置いて!!」
男の胸中は黒く渦巻いていた。

通路には戦いの壮絶さを物語るかのように血が飛び散っていた。
重い足取りの中、男は血の垂れている方向へと足を進めていった。
血の痕が無くなった所…そこには、アドルとの戦いに敗れたギルの姿があった。
(この戦いの敗者か…惨めなものだな)
「うっ……ぐふっ…」(生きていたというのか…!? だが、この傷では長くはもつまい)
「カイ…ッ」(俺の名前を知っているのか!?)

ガタッ

男は動揺からか、殺していた足音を漏らしてしまった。
「誰か…いるのか?」(…………)
「俺の声が聞こえるのなら頼みたいことがある。もし、この戦いでカイという女性にあったら…ギルが…すまなかった、と…」
「女性だと…?貴様も女連れか…しかも、よりによって俺の名前と似ているとはな」
抑えていた殺気が体から溢れだす。
「このまま楽にしてやろうと思ったが気が変わった。そのまま苦しみながら死ぬがいい」

ドスッ! ガスッ!

「ぐぅぅぅぅぅ!!! がぁぁぁぁぁ!!!」
男はギルの傷口を何度も蹴り上げると、無言のままその場を立ち去った。
ギルの悲痛な叫びのみがこの場所に残った。
再び静寂が訪れたのは、ギルが息を引き取った後のことだった…

【ファイナルファンタジー4 カイン 生存】
【ドルアーガの塔 ギル 死亡】



前話   目次   次話