無題






宇宙船の調子が悪く偶然不時着した場所では、
生き残りをかけたバトルロイヤルが行われていた。
巻き込まれたくないと思っていたが、現実はそう都合良くはなく、
気がつけば戦いに参加する羽目になった。

持っていたビームガンも取り上げられてしまい、変わりに武器を支給されたが、
あいにくと私は剣を使ったことが無かった。
帰るあてもなく、それどころか生き残れる保証もなく、私は途方にくれていた。
「このまま、故郷に戻ることもできずに私は死ぬのか・・・」

私はとぼとぼと歩いていた。
イロイロな生き物が死んでいた。
何故か満ち足りた顔をしているものもいた。
私は故郷に戻りたかった。

ガサッ

草むらから妙な音がした。
恐怖が体を包み込む中、私は剣を構えた。
「誰だっ!?」
草むらから出てきたのは、私と似たような格好をした男の姿であった。

どうやら、彼も宇宙船が不時着したクチらしい。
私は彼とすっかり意気投合してしまった。
しばらくは彼と共に行動をすることにした。

一旦、宇宙船の不時着した場所へと戻るため、
森の奥深くを歩いていると、ピンク色の物体を発見した。
「ん…どうしたジャーバス?」
「気をつけろ、ガデュリン…こいつはカービィだ!」
「知っているのか、ジャーバス!」
「聞いた事がある。あらゆるものを飲みこみ、能力をコピーする化物…」

勝てやしない。多分、彼も同じことを思っただろう。
幸いなことにカービィは気を失っている。
私たちはカービィが目を覚ます前に、一目散でこの場所から走り去った。




あれから、どれくらい経ったのだろうか。
視界の先に妙なものが見えた。
それは、一見すると鉄の棒だが、一見しなくても鉄の棒だ。
棒の前面には鉄の玉らしきものがくっついている。
「ジャーバス、あれはなんだ?」
「さぁ? あれもこのゲームに参加しているのか?」

カービィを見たときに感じたような恐怖は無い。
今の私たちでも容易に勝てそうな相手だと思った。
「ガデュリン、剣を貸りるぞ。コイツで叩き切ってやる」

彼は私から剣を奪うと、鉄の棒へと向かっていった。

勢い良く彼の体が吹っ飛んでいった。

それは一瞬の出来事だった。
鉄の棒に向かっていったその時、鉄の棒の前にあった玉が、彼目掛けて飛んできたのだ。
彼は何も出来ずに玉の衝撃で吹っ飛ばされた。

彼が生きているのかは解らない。
私はただ、目の前の恐怖に体が固まっていた。

逃げなければ…生きて故郷に戻らなければ…
だが、ふと頭の中に言葉がよぎる。
「逃げ切れるのか? 友は逃げなかったぞ」

友は勇敢に戦った。私だけが逃げるわけにはいかない。
そう思うと私の体に勇気が沸いてきた。
「私は逃げない! お前を倒す!!」

ドンッ!!
!!! 背中に強い衝撃が走る。
鉄の玉が戻って…きた!?
体の自由が効かない。
玉の勢いに押されるがままだった。
目の前には、鉄の棒が待ち構えていた。

故郷には戻れないだろう。
だけど…ジャーバス、最後に君に会えてよかっ……た………

グチャッ

【アルカノイド 自機 生存】
【未来神話ジャーバス 主人公 生死不明】
【ガデュリン 主人公 死亡】



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