無題
「ぅお〜〜〜〜い!だあれかあ〜〜〜!助けてくれ〜〜〜!」
微かに残響を残して、夜の浜辺に人の声がする。
周りはすべて敵のバトルにおいて、自分の位置を教える愚を理解していないのだろうか。
しかし、声はすれども声の主の姿は見えない。
「はあ、どうしてこんなことになっちまったんだ…」
〈回想〉
彼は砂浜にひたすら穴を掘っていた。
まさに一心不乱。彼の攻撃の選択肢はそれしかないのだ。
夜の内にひたすら穴を掘り、昼間は隠れ、敵が埋まるのを待つ。
そうやって掘った穴がスペランカーの命を救ったりもしたのだが(>>149)、
それは彼自身の知るところではない。
常人なら気が狂いそうになるこの作業を彼は頑なに繰り返していた。
「爆弾魔の過去と決別できた俺だ。自分にできるこの作業を繰り返していれば、
またきっと生き延びて、生まれ変わることができるさ」
彼には、鉄の精神力と前へ向かう希望があった。
が、ある夜
「おっと、足がすべった」
当然のように彼、ロードランナーは自分の掘った穴に 嵌 ま っ た。
穴の中でロードランナーは声を嗄らして叫ぶ。
「お〜〜〜い!だあれかあ〜〜〜!」
彼の掘った穴は一定時間後に、自動的に埋まるという恐ろしい仕様である。
このままでは、砂に埋もれて死ぬばかり。彼は一縷の望みをかけて叫びつづけた。
運良くバトルを嫌うお人よしが通りかかってくれれば、生き延びる可能性もゼロではない。
と、さくさくと砂を踏む音が聞こえた。
「!、誰かいるのか?」
確かに誰かが、穴に近づいて来ているようだ。
「主は、たれか?」
丸く切り取られた空から声がする。ロードランナーは狂喜した。
「ありがたい!たのむ!助けてくれ!なんでもするからこの穴から助けてくれ!」
「あなあやし」
「?、なんだ?言葉が通じないのか?ヘルプ!ヘルプ!ゲームでもあんたの仲間になるから!」
「へるぷ?げえむ?」
通りかかった検非違使は思った。珍妙な格好、聞いたことのない言葉。
こいつもあやかし(エイリアン)に違いないと。
ザクザクザクザクザクザク………
ロードランナーは、埋められた。
【「平安京エイリアン」 検非違使 生存】
【「ロードランナー」 ロードランナー 死亡】
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