無題






暗い林の中、ロボットのSASAでも自分のAIが”高揚“しているのを感じていた。
選んだデイパックには幸運にも彼の主要武器であるビーム砲が入っていた。
林の奥の敵をビーム砲で牽制しながら、一瞬捉えたその敵の姿を思い出す。
林が生み出す闇で、相手の姿はシルエットでしか見えなかった。
だが俊敏な動きで片腕に付いた銃で攻撃してくるその相手は…間違いない。
噂には聞いたことがある、あの伝説のロボット。
様々な武器チップを駆使し、悪の科学者の企みを何度もうち砕いたあのロボット。
SASAのAIが高揚する。まさか奴と闘えるとは。
敵の放ったショットがSASAの近くの地面をえぐる。
(距離を置かなければ) 彼は銃口を地面に向け、ビームを発射する。
自分の体からエネルギーを供給しているビームの爆風で空中に飛び上がるSASA。
飛び上がると同時に闇の中の敵に向けビームを放つ。
−爆発。 −確かな手応え。
(今、俺は伝説のロボットを越える!)
ビームの反動を利用して林の奥へ突入しながら彼は
敵の攻撃をかいくぐってビームを連射する。
(追い詰めている、これなら奴を倒せる!)
そう思った瞬間、彼の機動系に異変が起きた。

『エネルギー切れ』

彼の高ぶるAIは自分の最大の弱点を忘れていたのだ。
反動を殺しきれず、SASAはそのまま地面に激突し転がり込む。
しかし彼は満ち足りていた。あの伝説のロボットに一矢報いることが出来たのだから。
各部の電源が消えていく中、彼のカメラアイは近寄ってくる好敵手を捉える。

そこに映ったのは緑色のスーツを着た、
つい先程自分の右腕のガンに気付いたような間抜けそうな男。

もしもSASAが人間だったら、悔し涙を流していただろう。

【『バイオ戦士DAN』 DAN 生存】
【『アストロロボSASA』 SASA エネルギー切れ】



前話   目次   次話