無題
やっぱり・・・無いのか?
始末されてしまったのか?
自問自答を繰り返しながらドラえもんは歩いた。
ただひたすらに、海岸沿いを歩いていた。
ドラえもんは、ここに連れて来られる直前、
みんなをタイムマシンに乗せて恐竜時代に行く途中であった。
だが、唐突に時空がゆがみ、タイムマシンはこの島に不時着。
その直後に意識を失った。
気づいた時には、この馬鹿げたゲームが開幕していた。
ドラえもんは当初からこんなゲームに参加するつもりは無かった。
だが、四次元ポケットが奪われ、仲間達もどこにいるのかわからない。
誰かに襲われれば参加せざるを得ないだろう。
なんて馬鹿げたことだろう・・
なんとか脱出する方法は無いかと考えた末に
一つ気が付いた事があった。
・ ・ ・ ・ ・ ・
自分はタイムマシンから放り出されたのではなく
・ ・ ・
不時着したのだ、ということである。
「つまり、タイムマシン自体はこの島まで来ている。」
もし来ていなかったら・・・いや、来ていたとしても
やつらがすでに始末しているかもしれない。
望みは薄い。意識を失う直前に見えた風景だけが頼りだ。
一瞬見えた風景には、海と家が見えた。とにかく、それだけだ。
海沿いの家の近くを徹底的に歩くしかない。
タイムマシンさえあれば、なんとでも対策が取れる。
もう6時間以上歩いていた。
息が荒くなってくる。
「なぜボクを設計した人は、息が荒くなるとか、疲れるなんていう
どうでもいいことをプログラミングしたんだろう・・・」
つい恨み言が出てしまう。体力の限界が近かった。
「1度、休もう。」
そう決めて腰を下ろした瞬間、ドラえもんは妙な違和感を覚えた。
地面が、妙に黒光りしている。
触ってみると、ヌメっと手にまとわりついた。
「油だ。でもなぜこんなところに・・・?」
不審に思って周囲を見ると、油が川状になって流れていた。
そして、その油の川の上流を見上げると、見なれた鉄の塊があった。
「あった!タイムマシンだ!」
木々に覆われて、目を凝らさないと見えないようになっている。
油が流れ出していなければ気が付かなかったところだ。
ドラえもんは嬉々として乗りこみ、スイッチを押した。
・・・しかし、時間転送装置は壊れていてウンともスンともいわない。
「やっぱりダメか・・・。クソッ!
でも、空間転送だけはできるみたいだ。
とりあえず・・・ボクの町へ戻って救援を頼もう。」
願いを込めてスイッチを押す。
しかし、やはり空間転送装置も不安定になっていて
細かい位置の指定ができなくなっていた。
「しょうがないな・・・。大雑把に、ボクらの町の、どこかへ!
・・・待ってて、みんな。必ず助けにくるから。」
ワープした先は、のびた君の友達の家であった。
「あれ、あれ、ここはどこ?あ、キミは」
「うわっ!ドラえもん!
ビックリしちゃったよ。
急にドラえもんが机の中から飛び出してくるんだもの。
一体どうしたの?」
「大変なんだ!じつはかくかくしかじか。
これこれこういうワケで、殺し合いをしてるんだ!
ボクはなんとか帰ってこれたけど・・・
のびた君達は、まだあっちの世界で
殺し合いをさせられているんだ!
みんなを救うために君の力が必要だ!お願い!
一緒に来て!」
「いいえ」
「どうしても、たのむよ」
「いいえ」
「おねがいだから」
「いいえ」
「おねがーい!」
「いいえ」
「クスン・・・」
【「ドラえもんギガゾンビの逆襲」 ドラえもん 一人で戦地へ戻る】
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