無題
私は目覚めた。
あたりを見回す。暗い。誰の気配も無い。
私はいったいこんなところでなにをしているのだろう?
必死に意識を失う前の記憶を思い出そうとした。
「・・・だっせーな、こんなところから落ちて死ぬのかよ・・・」
「・・・プププ!さすが最弱主人公ですね!哀れ・・・」
そうだ、私は死んだのだ。口の端に血がついている。
ではなぜ?なぜ私は生きている?
その時、彼は口元にひとかけらの葉を発見した。
「これは・・・!」
それは噂に名高い『せかいじゅのは』だった。
命を失ったものにもう一度光を与えてくれる葉。
どうやらこれが私の命を救ってくれたらしい。
しかし誰が?いったい何のために?
解らなかった。解る筈もなかった。
そして最大の疑問である。
「私は誰なんだ?」
彼は記憶を失っていた。
「とりあえずここから出ないとな・・・」
彼は重たい足を引きずり動き出した。
部屋は暗く、とてもじゃないが手探りでしか進めそうにない。
その時、彼は自分の頭に被っている物に気がついた。
「懐中電灯を頭に付けていたのか」
思わず彼は声に出してしまった。彼の中で何かが回り始める。
部屋を照らすと、周囲は土砂だらけであった。
その時、彼はひとつのデイバッグを発見する。
ゆっくりとチャックを引く。すると中からビンに入った赤い薬が出てきた。
探るとまだ何か入っている。花火だ。爆弾まである。
そして最後に出てきたもの・・・・マシンガンである。
その瞬間、彼の全身に血液が巡る。すべてが彼に戻ってくる。
「わたしだ、この中には私が入っていたのだ」
彼はすべてを思い出した。自分の過去の壮大な冒険のこと、
自分の弱さのこと、そしてそれを克服すると誓ったこと。
「ここから、出ないとな」
その言葉の響きはもう探検者者のそれであった。
彼は知りたかった。自分を助けてくれたのはいったい誰なのか。
なぜそんなことをしたのか。
扉を開く。光が漏れてくる。光に向かって一歩を踏み出す。
彼は自分に言い聞かせるように、小さい声でつぶやいた。
「私はスペランカー、冒険者だ。」
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