無題
「私……私、人殺しなんてできないっ」
少女は、恐ろしくて恐ろしくて、ただ、ずっと走っていた。
支給武器は使い慣れたものであったが、しかしそれとて人を
殺す為に使うものではないし、実際そんな経験もない。
「誰か……誰か、お願い……助けて……」
「僕には……人殺しなんてできない……」
少年は、走っていた。生来、どう贔屓目に見ても強い方ではない。
どんな武器を与えられたところで、「敵と戦って勝つ」なんて
考えたことすらない。だが、彼はそれでも警察官である。
その使命感が、彼を走らせていた。
この状況だ。恐怖に怯え、泣いている人たちがいるはず。
その人たちを守り、導き、必ずここから脱出してみせる……と。
「あっ」
遠くから、涙を浮かべた少女が走ってきた。
少年は、敵意のないことを示そうとディパックを捨て、両手を
上げて、ゆっくりと少女に近づいて行った。
「戦う気はないから、話を聞いて。僕は……」
「ネズミは嫌ああああぁぁぁぁっ!」
ちゅどおおおおぉぉん!
「誰か、誰か助けて……明るくて、気は優しいけど負けず嫌いで、
しし座A型で、サイズは上から78−58−80の私を助けて……」
少女は、一瞬たりとも立ち止まらず、駆け抜けていった。
人殺しはできなくても、それ以外殺しならできるらしい……
【『ナゾラーランド 爆風トモちゃん』トモちゃん 生存】
【『マッピー』マッピー 死亡】
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