無題






魔界で生まれた彼にとって、この島の雰囲気は決して悪くない、むしろ心地いいものだった。
彼は武器など必要としない。大きな翼は相手の攻撃など見てからでもかわすことができる。
そして、巨大な赤黒い体、牙、爪から逃れたものはいない…ただ一人を除いて
「奴もこの島にいるはずだ…」
本能的に、彼は宿敵の存在を確信していた。一族の恨み、怒り…
それらを晴らすために、ここほど適した場所があろうか。

その時、彼の前に一人のセイラー服の男が現れた。…水兵だろうか?
「貴様に恨みはないが、消えてもら…なに!?」
あれだけの身軽さを誇った体が、全く動かない。こんなことは初めてだった。
一体なぜ…?
水兵風の男が懐から一振りの剣を取り出し、それを驚くほど緩やかな動きで彼に放った。
剣はゆっくりと、だが一直線に彼の体に向かって突き進む。
…逃れられない…いや、動けないのだ!まさか、あの男に会う前に、こんな男に…
剣がゆっくりと彼の体に突き刺さっていく。痛みもない、熱さもない、
屈辱という感情で神経が麻痺したことは、ある意味幸いなことなのかもしれない。
「…ア    …サ…」
自らの魂が崩壊していく音を、最後に聞いたような気がした。
そして、彼は跡形もなく消滅した。

セイラー服の男は剣を拾い上げ、その場を立ち去った。

【「魔界島」 モモタルー 生存】
【「魔界村」 レッドアリーマ 死亡】



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