無題






ただ黙々と歩くゼロ達。悲惨な状況にも関わらず、
日の光だけは浮かれてしまいそうなほどに明るい。
そんな中、遠くに見える人。いや、人と言うには、あまりに巨大すぎる。
「何だ、アレは…」
デニムが呟く。人型の何かは、三人に向かって銃を構えた。
「!!!」
あたりが光る。だが、三人は無傷だった。
「どうやら、レーザーらしいな。距離のせいで拡散しちまったんだろう」
「アイツの光に実害は?」
「近くなら一瞬で燃え尽きるぐらいのものはある」
「逃げますか?」
ゼロは首を横に振る。
「あのデカさだ、すぐに追いつかれる」
そんな事を話しているうちにそれは近づいて来ていた。
「やるしか、ないようだ」
デニムがヴォルテールを構える。ミネア、ゼロも構えた。
「はっ!」
デニムが切りかかる。装甲に傷をつけることは出来る。それも、相当に深く。
だが相手の大きさゆえ致命傷につながらない。足にしか攻撃できないのだ。
「幾千の風の刃よ、万物を切り刻め!」
ミネアがその言葉を発すると、無数のかまいたちが人型のものに襲いかかる。
それも装甲に傷を残すだけであった。
(頭を狙うしかないか)
ゼロはそう考えて壁蹴りで人型の頭部へ登っていく。
人型のものも応戦するが、的が小さすぎ、常に動き回るので当てられない。
「このままじゃいずれやられる!」
デニムが叫ぶ。相手がこちらを倒す手段はあるが、こちらが相手を確実にしとめる手段はないのだ。
ゼロも、同じ事を思っていた。頭部へ登ったはいいが、拳だけでは威力が足りない。
その時、ある考えが浮かんだ。
(あいつの真似をしたくはないが、しょうがない)
「ミネア、さっきのを俺の上に向けてやってくれ!
デニム、こいつの注意をひきつけるんだ!」
「何を…?」
「早く!」
デニムはもうすでに向かっている。ミネアは決心した。
「幾千の風の刃よ、万物を切り刻め!」
かまいたちが生まれる。
「うおおぉぉーーー」
ゼロは頭部から、跳んだ。そして、かまいたちを踏みながら上昇していく。
この高さから全体重をかけて拳を叩きつければ、倒す事も可能なはずだ。
(もらった!)
しかしその時、銃口がゼロを狙った。
「しまった!」
「ゼロ!」
デニムとミネアが悲鳴を上げた。
放たれるレーザー。
「危ないところだったな…」
ゼロは、生きていた。ゼロが頭部を潰す方がほんの一瞬早かった。
「良かった…」
三人は安堵の溜息をつく。このゲームの恐ろしさを、改めて実感していた。
「さあ、いこうか」
確かに今は生き残った。しかし、立ち止まる暇はないのだ。

【ゼロ、ミネア、デニム同盟 生存】
【「テグザー」テグザー 機能停止】



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