無題






煌煌と輝く金色のアーマーは、戦場に不似合いなほどに美しい。
それだけに、彼の接近を察知することは容易だった。リンクとネスは例の廃船の影に身を潜め、
金色の彼の接近を待ち伏せていた。
と、さ迷うように歩いていた少年はぴたりと立ち止まり、穏やかな声をあげた。
「出ておいでよ。それとも出てくるようにしてあげようか?」
「気づかれた!?」
「構うもんか!パラライシス!」
相手の意識を根こそぎ奪うはずの精神派は、不可解にも金色の少年を素通りした。
「効かない?なんで?」
「アハッ、PSIだっけ?効かないよそれ。僕はレプリロイドだから」
少年が右手のバスターを無造作に撃った。それだけで過剰な光の束が、空間を切り裂き、廃船に突き刺さる。

ドガガアアアアァァァァァンンンンン!!!

もうもうと煙と炎と粉塵が立ち上り、巨大な廃船はただ瓦礫の山に変わった。
「さあ、出ておいでよ」
なんの衒いもこだわりもなく微笑みかけてくる。金色の鎧の少年。
ネスとリンクは正面から金色の少年と対峙した。瓦礫で多少の傷は負ったが、十分戦うことはできる。
「いきなり撃って来るってことは、あんたはやる気なんだな?」
「もちろん。自己紹介がまだだったね、僕はエックス」
リンクの戦いのカンは先ほどから最大級の危険のアラームを鳴らしている。
「おいでよ、2対1でも全然構わないからさ」
リンクは躊躇せず叫んだ。
「シェイク!!」
豪雷の蛇がエックスを包む。が、エックスが少しばかり手を払うと雷は吸い込まれるように輝きを失った。
「魔法も、ダメだね。その程度のエネルギーじゃ傷もつかない」
「だったら…」ネスが自慢の脚力でエックスとの間合いを詰める。「殴るまでさ!」
「SMAAAAAAASH!」

バットはエックスの脳天を直撃した、が、エックスは微動だにしない。微笑みも貼り付いたようにそのままだ。
「君たちも、破壊して救ってあげるよ…!」
愕然としたネスに狙いを定めたバスターに凄まじいエネルギーが集中する。
「まずい!かわすんだ!ネス!」

ドシュウウウウウウウウウゥゥゥゥゥ!!!

「っく、なんて奴だよ」
ネスは紙一重でかわしたが、トレードマークの野球帽は一瞬で消し炭に変わった。
間合いを空けたネスとリンクは、エックスを前後から囲むように立った。その上で慎重にたずねる。
「破壊するのが救い?だと」
「君たちも世界を救ったことのある勇者なんだろう?だったらわかるはずさ、
 世界なんて僕らが救っても救っても、また人間のせいでおかしくなっちゃう。
 だったら初めから全部壊した方が効率的で幸せってものだろう?だって不幸にもならないんだから」
「何言ってんだか全然わかんないよ!」
ネスが悲鳴のように叫び、必殺の包丁を投げつける。
「ハハッ!、実は僕も、自分が何を言ってるのかもうあまりよくわからないんだよ!」
包丁は狙い違わずエックスの左腕を抉った。
がエックスはまるで意に介さず右手で、ネスが投げた後の隙を狙い撃った。
「うわわわわわあああああっ!!」
バスターの閃光は一直線にネスの胴体を貫く。
「ネスッ!」
「おっと、回復なんてさせないよ」
エックスがすかさず、駆け寄ろうとしたリンクの眼前に立ちふさがった。
「お前はっ!」
リンクは迷わず全力の回転斬りを繰り出した。小さな緑の旋風はエックスを切り裂かんと襲う。
と、エックスは火花を散らす両手を前に突き出した。リンクはぞわりと全身の毛が逆立つのを感じた。
大気が小刻みに震える感触。
羽虫を千匹集めたような「キィィィィィン」という耳障りな音。
エックスを中心に凄まじいエネルギーが集積する。

「クロスチャージ!!!」
七色の閃光は、大きな球を描くように膨張し、そして弾けた。

光が止んだ後には、二人の体は無残に焼け焦げ砂浜に横たわっていた。もう、指一本動かすことはできない。
「……ママ、ごめん。…ただいまは、言えそうに、、ない、や…」
「ゼルダ…」
リンクは、言葉をそこで切り、消えそうな意識でこの戦いの記憶を探った。
森の中で殺してしまったナイト、カンタロウの顔、強い決意で海に漕ぎ出していったキャプリス。
そして…、一緒に戦おうと誓い合ったネス。
走馬灯も長くは続かなかった。ネスのHPドラムはなすすべなく0になり、リンクの意識も闇の中に落ちた。

「アハッ、アハハ、死んじゃったよ、ハハハ、こんなに簡単に、壊れちゃった。ハハ、アッハハハハ。おかしいや。
 戦い、破壊、キャハハ。b僕は、ハh、何をやって、るんだ?だ、アヒャハハハァ!、は。。ハ…ハハ……」
エックスは満天の夜空を仰いで、くつくつと虚ろに笑った。
「ゼロ…、僕を救ってくれ…」

【「ロックマンXシリーズ」 エックス 生存】
【「ゼルダの伝説」 リンク 死亡】
【「マザー2」 ネス 死亡】




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