無題
「今助けてやる!」
アーサーはこう叫びながらひたすら武器である短剣を
アンデッドに向けて投げ続けていた。
自分にとっては倒しなれているゾンビだ。
いずれその向こうにいる女性を助けられる。
アーサーはそう確信していた。
対して、その女性、カチュアは何が起きているのか理解に苦しんでいた。
突然後方から助けるなどと叫びながら攻撃を仕掛けてくる髭づらの赤パン一丁の男。
そう、アーサーは誤解していた。
カチュアが襲われているのだと。
アンデッドは短剣を2、3発受けると崩れ落ちていく。
先の戦い(>>524-525)で数が減ったアンデッドがすべて倒れるまでにそう時間はかからなかった。
「大丈夫かね、お嬢さん」
息を切らせながらアーサーはカチュアに手を差し伸べる。
しかしカチュアはその手を無視し、表情を変えることなく答える。
「ありがとう、おじさま」
少し戸惑いつつもアーサーは手を引っ込める。
「何、婦女子を守るのが騎士。気にすることはない。」
ふふっ、とカチュアが笑う。
「…私には守らねばならない姫君がいる。それが私の努め。
この馬鹿げた争いを早く止めさせ、帰らねばなら…」
「おじさま、あなたは誤解しているわ」
「ん?どういう…!!」
言い切らぬうちに自分の武器であった短剣がアーサーの腹部に深々と突き刺さった。
傍のアンデッドからアーサーの知らぬ間にカチュアに抜き取られた短剣だった。
当然、パンツ一枚のアーサーには致命傷だった。
「そんな赤パン一丁で妙な騎士道精神なんか見せるのが間違いだったわね」
「お、お嬢さん…それはちょっと言い過ぎじゃ…」
己の勘違いと油断、そしてカチュアの言葉を呪いながらアーサーは白骨化し絶命した。
カチュアは一言呪文を唱える。
「心配いらないわ。わたしもドルガリアの姫。おじさまの努め、これで永遠に努められるわ…フフフ…」
倒れていたアンデッドが起き上がりだす頃、
アーサーだった白骨がカタカタと動きだし、意志持たぬ兵となった。
カチュアとアンデッド達が去った後、
寂し気な赤いパンツが風に揺らめいていた。
【「タクティクスオウガ」 カチュア 生存】
【「魔界村」 アーサー 死亡】
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