無題






私はウィン。職業は考古学者だ。
私はアトランチスという名の聖地に隠された謎を解明すると同時にアトランチスで行方不明となった私の師匠を探すために気球に乗り込んだはずだった。
しかし途中で気球が不時着し、その際私は気を失い…気づいたらこのような情け無用の糞ゲームに参加させられていた。
いつ、どこで、誰に殺されるか解らない状況に私は気が狂いそうになるほど恐怖していた。
アトランチスに向かう前に護身用として用意しておいたダイナマイトも坂持という男に取り上げられてしまった。
代わりに受け取ったカバンの中に入っていたものは竹を斜めに切って先端を尖らせたもの…俗に言う竹槍というものであった。
私は元々身体が丈夫ではない…コウモリの糞に当たっただけで絶命してしまうくらいだ。
竹槍を見た瞬間、死刑宣告を受けたような気分となった。戦闘力のない私にこの武器…死を表しているようなものだ。
森の中で私は呆然としていた。

ウィン「(…!!誰かいる!!)」

私は木と木の間に人影を見つけた。目を凝らしてよく見てみる。

ウィン「(…あ、あれはまさか…)」

人影はよく見ると農民のような格好をしている。
その姿には見覚えがあった。そう…私の師匠だ!
絶望していた私に希望の光が見えてきた。

ウィン「師匠!」

私が声をかけると同時に目の前に恐ろしい速さで何かが接近してくるのに気づいた。
頭に何かがぶつかったような衝撃を感じたときにそれが何であるのか解った。

ウィン「(…か…カマ…?)」

カマの刃が私の額に食い込んでいた。…あの人影が放ったのだ。

ウィン「し…ししょ…う…」

ウィンはどっと膝をつき、そのまま前のめりになるように倒れた。
額からどくどく血が流れウィンの周りの草は紅く染まった。

遮断物が多い森の中50mは離れている相手の額にカマを命中させるほどのコントロールを持った人間。
彼はウィンの亡骸の傍の竹槍を拾い上げるとそれを前方へ突き出しながらその場から去っていった。
【『アトランチスの謎』ウィン死亡】



「はぁっはぁっ・・・お、おら・・・おら!」
人を殺すつもりなんかなかった。
だが、いきなり声をかけられて驚きのあまりおもわず鎌を投げてしまった。
わけもわからず必死に逃げ続ける。
前へ、前へと・・・

どれぐらい走っただろう?
息があがって立ち止まった。
「はぁ!はぁ!」
その時、後ろに物音が聞こえた。
「ひぃぃっ!」
悲鳴をあげながらすぐさま攻撃しようとした。
が、動けない・・・!?
後ろを向くことができないのだ。
何だ?金縛りか?
「ひっひぃぃ!!」
竹やりを意味もなく前に突き出し続ける。



うすれゆく意識の中、彼は思った
「なんで、おら・・・竹やりなんか拾っちまったんだろう・・・?」

【『いっき』主人公死亡】



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