無題
島の中央部、小高く広い岩盤の上。2台のマシンがそこで闘っていた。
「エネルギーは満タン、誰にも負ける気はしねえ。」
青く光るエナジーシールドに包まれたまま、虹色に光るビームを敵に向けて乱射する。
誰の目にも一方的な虐殺であった。
一方がビーム砲とバリア付き、もう一方が全くの丸腰なのだから。
敵は武器らしい武器を一切持たず、ただ辺りを動き回るだけの存在であった。
「ちっ、チョロチョロと動きの速さだけは一人前だな。」
99回にわたるバトリングを生き残った歴戦の強者である。
瞬間的に砲塔を敵へ向け斉射する。瞬殺は彼の得意とするところであった。
横の動きから縦の動きへ。敵の動きが一瞬変わったのが、決着の合図だった。
「捉えた!!」
レインボービームの熱線が、数瞬前まで敵が居た空間を薙ぎ払う。
異変に気づいた時は、もう手遅れだったのかもしれない。
縦の動きから今度は3次元方向の動きへ。
向かってきた敵がなんと自分の真上に移動していた。
「くっ!!」
すかさずエナジーシールドを全開にする。どんな爆発にも耐えられる無敵のシールドである。
敵がそのまま落ちてきた。これが敵の攻撃方法か。
凄まじい衝撃が、辺りの地面を揺らす。
「危なかった、シールドを全開にしていなければ…」
危なかった、ではなかった。もう既に勝負はついていたのだ。
自分のいる場所の岩盤が音を立てて崩れていく。
「なに?!うわああぁぁぁぁ!」
彼に支給された武器…、それは単なる「重り」だった。
「…ふっ、だが、これがいい…。」
殴るでも蹴るでもなく、ビームでもミサイルでもない。
敵を体当たりで奈落へ突き落とす。
これが彼独特の戦闘方法であり、「自重」というファクターは
この狂ったゲームに生き残るためには重要なものだった。
自機に用意された7つのコンテナ全てに支給武器を装備した。
彼にとって運の良い事は、自機に装備された羽根が没収されることなく
残っていたことである。7つの「重り」以上に心強い「羽根」。
「最強装備だ。これなら確実に生き残れる…。」
今までに死んでいった者たちの多くは、ハンマーや巨大岩石などを使った
轢殺・圧殺によるものが殆どだった。
重さを利用したガチンコなら負けはしない。だからこそこの場所を
バトルフィールドに選んだのだ。
薄い岩盤の下は深い火口に直結している。
「自分に合った得意のバトルフィールドを確保せねば、絶対に生き残ることは出来ない。
死んでいった多くの敗者はそれを怠っていたのだ…。」
【『モトス』 モータースパナ 生存】
【『グロブダー』 グロブダー 火口に落ちて爆発四散】
前話
目次
次話