無題
岩場に座り、葉巻を吸っている男がいる。胸につけているバッチの形状からすると、男は保安官のようだ。
男は空を見つめ、時折独り言を呟いていた。
「俺はかつて、とある町で保安官をやっていた者だ。
それがある日、酒場でテキーラを飲んでいたら、突然気を失っちまった。
そして、気がついたらこの島にいたのさ」
「まあ、今頃は副シェリフのヤツが町を取り締まって……
そういえば副シェリフ野郎、むかつくから殺っちまったんだっけな」
「ハァ〜〜〜。さてと、どうするか……」
男の口からため息が漏れた。
特にこれといった考えも持ち合わせていないためか、正直、他人の生き死になど、どうでもよい事だった。
突然見知らぬ土地に飛ばされたことが、彼を半ば自暴自棄にさせていた。
胸についた保安官バッジが輝いている。その輝きこそが、彼の保安官としてのプライドを象徴しているようでもあった。
しげしげとバッジを見つめていると、かつて西部の町を取り締まっていた頃の思い出が、彼の頭の中に甦ってきた。
葉巻の火も消え、しばらくが経った頃、彼の中に答えが見つかった。
「この島は、ステキなゲームのおかげで見事に無法地帯になっちまってるからな。
ここは一丁、保安官である俺が取り締まってやらないといけないな」
男は立ちあがり、再び歩き出す。
「そう、俺が『法律』だ」
【LOW OF THE WEST〜西部の掟〜 保安官 移動中】
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